私はPdMとしてCEOを目指すべきだ

PdMとしてCEOを目指すべきだと再認識した。
(※「一般的にPdMはミニCEOであるべき」という強い思想は持っていません。あしからず。)

私はSansan株式会社でVPoP/CPO補佐としてプロダクトに責任を持っている。この夏休みに(実は7週間くらい休んでいる)、久しぶりにマーティ・ケイガンの『Inspired』を読み返した。この本から学ぶことは多く、特にプロダクトマネジメントの今後の方向性について考えさせられた。改めてSansanのシニアPdMはCEOを目指すべきだ、CEOになる必要はないが、CEOのような責任と実行を持つべきだ、と思った。

今回、Inspiredを読み返そうと思ったのは、CPO協会主催の Product Leaders Week 2024にマーティ・ケイガンが登壇することを知ったことがきっかけでもある。
(※実は少し前からCPO協会の理事を務めています。)

https://japancpo.org/lp/product-leaders-week-2024

現在、SansanのCPOはCEOの寺田が担っている。そのためPdM、特にシニアのPdMはCPOとしての寺田とプロダクトやその関連領域に関して議論することが増えた。その環境で私が学んできたことと『Inspired』に書かれていることは類似することが多い。そのため前述のように「CEOを目指すべきだ」という結論に至った。寺田との議論で「プロダクトとして元の方針ではなく、そうしたほうがより良いな」と思うことが多々ある。その背景には私のVPoPやVPoEの経験や知識等にはない別の観点がある。そういった私にない観点がプロダクトに関わる意思決定をより良くしているからだ。

もともと『Inspired』は5年くらい前に初めてプロダクトマネジメントを業務で意識したときに読んだ本である。そのときは次の記載に単純に驚いたことを覚えている。

プロダクトマネジャーは、通常、文字どおりフルタイムの仕事である。私が知る限り、自分がすべき仕事を週60時間未満でこなしているプロダクトマネジャーは、ほとんどいない

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確かに、ちゃんとやろうと思ったら非常に大変だった。プロダクトマネジャーの影響力は非常に大きい。プロダクトマネジャーが数時間、数日で考えたものをエンジニアが数ヶ月かけて開発する。プロダクトマネジャーが雑な仕事をするとエンジニアの数カ月が無駄になる可能性が十分にある。さらに複数人に分担すれば良い企画ができるかというとそうでもない。良い企画のためにはものごとを深く理解する必要があり、浅い理解の人が10人集まっても理解が深くなるわけではない。(もちろんチームで企画を検討する価値はあるが。) 真面目にやると大変な役割だなと今でも思う。

Sansan株式会社は、Sansan、Bill One、Contract OneなどのtoBのSaaSを複数開発している。弊社のCPOはそれらすべてのプロダクトに対して責任を持つ立場である。現在はCEOの寺田がCPOを兼務している。CPOの下には各プロダクトのVPoP等があり、各プロダクトは各VPoPが責任を持っている。週次でCPOとVPoP等が議論する場があり、短期から中長期、具体から抽象の様々な粒度感の議論を行っている。

Sansan株式会社はプロダクトが中心にある会社であるため、プロダクトに関わる意思決定が他の部署に波及する。CPOとの議論は、単純なプロダクトの仕様だけではなく、どの市場を狙うのか、その市場にどの角度から入っていくのか、どのようなメッセージを打ち出すのか、ビジネスモデルはどうするのか、どのように営業するのか、それを担う組織はどうするのか、といったことを議論している。プロダクトが中心にあり、すべてが相互に依存するからこそ、それらすべてに責任を持つ必要がある。これらの責任を分割し複数人で担うことになったとしても、その複数人が互いに領域を重ねる必要があるし、その複数人の上に立つ人が必要なため、弊社にはすべてに責任を持っている人が必要である。
「難易度が高すぎる。寺田と違うスタイルのCPOもあるのでは?」と反射的に思ってしまいそうだが、本当にできないのか?何か方法があるのではないだろうか。

私はSansanに入社して3年のため過去の経緯を全ては知らないが、想像するにおそらく寺田も最初からすべての領域に詳しかったわけではない。そもそも最初から広範囲に対して詳しい人間なんか存在しない。CEOとしての責任があり、試行錯誤する中で身につけた知識やスキルであろう。それであれば私にもできるはずであり、やる前から諦めるのはおかしい。どんどん新しいこともやっていきながら、自分の知識や経験を広げていくしかない。寺田というロールモデル・師匠がいるなかで、寺田が17年かけて培ってきたものを数年かけてキャッチアップすることを目指すのはどうか。

そういうことをぼんやりと考えていたなかで、『Inspired』を読み返し、次の文章が心に響いた。最も才能のある人材なら実現できるはずだ。

本当のことを言うと、プロダクトマネジャーは会社の中で、最も才能のある人材の1人であるべきだ。もしプロダクトマネジャーに、技術に関する高度な知識やビジネスの手腕、主要な幹部との信頼関係、顧客に関する深い知識、製品に対する情熱、製品開発チームへの敬意がなかったりすれば、間違いなく失敗する。

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覚悟を決めて、CEOの寺田以上に何でもやる。私の人生の主役は私だから。

エピローグ
書籍「UX実践者のためのプロダクトマネジメント入門」の及川卓也さんの監訳者まえがきが素晴らしかった。勇気づけられた。


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