出版に関して

これまでも何冊も本を書いてきた。
実務に関するものを、アンチョコ本的にではなく、実務ノウハウを体系化、理論化して、暗黙知を形式知として、広く標準化して、本にしてきた。

これまでは、出版社にもそのコンセプトは受け入れられ、アンチョコ本的な本でも、大衆向けの本でもない中で、重刷、改訂版も出されている。

今、別のテーマで書いているが、出版社のコンセプトはやはり承服しがたい。もちろん売れなければ出す意味はないのは、わかるが、アンチョコ本的に、タイトルとコンセプトだけで売るような本は書かないし、書くべきではない。名前を出す以上、絶対に譲れないクオリティがある。そこは絶対に譲らない。

ベンチャー企業の社長がとりあえず売り込んだり、ブランドづくりのために書くような売名行為的な本は書く気はないし、そんな中身のない自己満足の本を書くことに、時間を割く気はない。

類書との比較を見ても、そんな本を書いても屋上屋を重ねるだけだ。

一つのテーマで本を書くということは、その内容を紙上で教えることにほかならない。分冊で書くならいざ知らず、一冊にまとめるなら、木を見て森を見ずにならないように、全体的に概要は書かなければならない。
 書き手としては、できるだけわかりやすく書きたいし、躓きの石なる部分は、そこで躓かないように誤解を説いたり、十分な説明をしながら、書いていく義務があると思っている。

それなりの分量は必然的に必要だし、あれもこれもなの各論アラカルト的な内容は、かえって読者の混乱を招く。もちろん、冗長なものは嫌いなので、簡にして要を得た記述をこころがけているが、「難しいことを易しく、易しいことを深く、深いことを面白く」という井上ひさしさんの言葉が信条でもあり、具体例や補足説明は必須と考えている。

既刊本は出版社が変わったから、今回、1から原稿を書くのは、この出版社では初めてだが、今までも再三、出版社のコンセプトは、実務ニーズに合わないことは、伝えてきた。出版業界の事情は出版社が詳しいだろうが、こちらのビジネスの領域は、我々の方が事情は詳しいし、そこで求められるレベル感を踏まえて、提案している。

かなりの分量の原稿を書くには、それなりの時間もかかる。きちんと伝えなければいけないことは伝えるように、書くべきだし、かけた時間に見合う宣伝効果がなければ、書く意味もない。アンチョコ本的な内容とすれば、かえって業界での格式は落ちるだけで、そもそも本を出すメリットは、全くない。みすみす、無駄になることに時間をかけているほど、暇でもない。

書くことの大変さや、クオリティが軽視され、出版社の事情優先で原稿を好きに削除、編集されては、全くもってたまったものではない。こう言うところで、出版社としての力量も分かるし、改めてそのことを認識した。

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