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オジサンが喜んでいる。

先日、お店にてトラブル発生。

よく頑張っていた後輩ちゃんの彼氏が
閉店間際に突入してくるという。。
よくあること、ではないような
冷や冷やしてしまう出来事だった。

彼氏ができると、
そりゃあ仕事に身が入らなくなる。
うん。よくあるよね。
わかるわ~、というのがわたしの正直な感想。

それらは総称して【男惚け】と呼ばれる。

若いときにはわたしも男惚けし、
お客様に愛想をつかされた。
夜の女の子たちみんなが通る道。

だけど、そんなときでも、
彼氏がお店まで乗り込んできたことはなかった。

嫉妬、やきもち
それらはときに可愛く、愛おしい。

もう、そんなにわたしのこと好きなのね。
まったくもう。。わたしもよ。
といったようなことがスパイスでもある。

が、しかし、
他人様に迷惑をかけるとなると話は別だ。

その子とは、個人的に遊びにいった飲み屋で、
「綺麗なおねぇさん。だいすき~」
と、酔っぱらった彼女に
突然抱き着かれたのがはじまり。

わたしは可愛い女の子に
可愛くお姉さん扱いされるのが
たまらなく好きなのである。

中にオジサンが住んでいる疑惑。
その子とお店で再会したときには嬉しかった。

そんな経緯もあるもんだから
個人的にもとても可愛がっていて
さらにその子が自分のいないところで
わたしのことを好きだと慕ってくれているのを
人づてに耳にするので、またまたこれが堪らない。

今回は、
そんな可愛がっている子に
起こったトラブルだった。
男にぼけるのは静観していたが、
ほかにも諸々、
彼氏だけでなく当人の問題もあったりして
ここまでくるとなんとかしなければならない。
黙って閉店作業をしながらも深く思案してしまう。

そんなとき、わたしとは今日はじめましての
これまた若くてかわいい新人ちゃんが
訊ねてくる。

「どうしたんですか?」
「教えてください」

だめ。あなたが首を突っ込むところじゃない。

「首を突っ込んでるわけじゃないです」
「ただ知りたいだけです」

それを、首を突っ込むと言うの。
日本のことわざに、
見ざる聞かざる言わざるというのがあるよね。
あなた自身のトラブルを避けるために、
今は言うことを聞いて。

初対面だというのに、
少しキツイ言葉で新人ちゃんを制した。

自分に関係のないトラブルに
ワイドショーを見るように
首を突っ込むのはよくない。
いらぬトラブルに巻き込まれることしかない。
得なんてひとつもないのだ。

新人ちゃんを帰して、わたしはママと話す。
可愛がっている子だから
わたしから叱らせてもらうことにした。

その日のうちに電話で話し、
ママにも連絡を入れて
ちゃんと謝りなさいと言った。

夜の世界の暗黙の了解。
ここで起こったことから逃れたら
また同じことで今後も躓くこと。
自分の失敗と向き合い
ちゃんと反省すれば
みんな許してくれること。
大好きだからこそ、怒ってること。

可愛い後輩ちゃんは、わたしのお叱りを受け止め
しっかり反省したはずだ。
娘の方が歳の近い、子どものような感覚。
まだ経験も浅い。
未熟で当たり前なのだ。
大丈夫、失敗しても、成長できる。

クビを切って終わりなんてさみしい。
このようなことは何度だって起こる。
それも含めわたし達は経験を積むと良い。

なんとかトラブルは無事に収まった。

きっと大丈夫と信じるしかない。

キツく制した新人ちゃんと後輩ちゃんと
昨日は久しぶりのお仕事だった。

後輩ちゃんは
<報連相>を意識した働きになっていて
よくよく気を付けているように見えた。
よかった、と安堵。

新人ちゃんはもういらぬことを聞いてこない。
この子は別のお店に移ることが決まっているから
会うのはもうあと数回だ。

新人ちゃんが帰るときにわたしに話しかけてきた。

「今日、いつもより喋れてませんでしたか?」
「わたし頑張ったんですけど、どうでしたか?」

確かに、初心者で、はじめは
お客様と沈黙が続くこともあったけど
今日はよく話せていたので感心していた。

よくできていたよ。
今日は頑張ったね。

そう声をかけると
とろけるような笑顔で言った。

「やったあ。嬉しい。」
「わたし、まゆかさん好きです」

か、可愛い。。。。。
なんてことだ、、、
わかっているのかい?
わたしの中身がオジサンだってことを。

その可愛さはお客様に発揮してくれよ。

そう思っているのに自然と両手を広げていた。
ちょろい。
ちょろすぎるよ、わたしの中のオジサン。

「可愛いね。わたしも好きだよ。」

見た目はお姉さんでよかった。
きっとわたしは得をしている。
明らかに得しかしていない。

そんな可愛い新人ちゃんと抱き合って
もうすぐ迎えるお別れを惜しんでいる。

可愛い女の子が
だいすきと言ってくれる幸せは
何物にも例えがたい。
もはや反射のように抱きしめてしまう。

そして当たり前のように言ってしまう。

「わたしも好きだよ。」

すぐ別の子にも可愛いだの好きだのと言い
抱きしめてしまうわたしに
後輩ちゃんは嫉妬するだろうか。

嫉妬されてもきっと可愛いだろうなあ。
そんな顔も見せてもらいたいもんだ。

だけどそんなことはきっと起きない。
彼女は男に惚けている。


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