今日から始まったインボイス制度! 勘違いに気をつけよう!
いよいよ今日10月1日から『インボイス制度』が始まりました。
事業者にとっては仕入税額控除の方式が変更し、場合によっては消費税納付額が増加することから、心配の声もあります。
また免税事業者は取引量の減少や課税事業者からの取引停止の心配があることから導入反対の声が上がっています。一方で、消費税は間接税であり、税の公平負担の観点から一部からは容認する声も上がっています。
いずれにしろ、制度変更に伴う混乱はしばらく続きそうです。
今回はインボイス制度を正しく理解するために、皆さんが思っているかもしれない勘違いと合わせて説明したいと思います。
【勘違い①】登録番号さえあれば問題ない
今回のインボイス制度でこれまでの領収書と一番の変更点は「(事業者)登録番号」と呼ばれるT+13桁の数字が追加されたものです。この登録番号は、事業者がインボイス制度登録事業者(正式名称は「適格請求書発行事業者」)であることを示しており、受け取った側がインボイス対応かどうかを確認する際の一つのポイントとなります。
しかし、受け取った領収書がインボイス制度を満たしているかを確認するポイントは登録番号だけではありません。
上の図は領収書のインボイス制度を満たすための記載要件を表したものです。登録番号だけではなく、事業者名や適用税率を記載しなければなりません。そのため記載内容によっては、領収書だけではなくそれに付随する納品書などと合わせて保存する必要があります。
例えば関西にある定食屋「宮本むなし」では以下のような領収証と半券が発行されますが、この場合上の領収証はインボイスの記載要件を満たしていません(食券は適格簡易請求書に該当)。上の領収証には「適用税率」「取引先名(ここでは品名)」の記載がないためです。一方で下の領収書はすべての記載要件を満たしているため半券をもって仕入税額控除が可能となります。
会社の経費で物品を購入したりする際は、受け取った領収証がインボイス制度の記載要件を満たしているかを逐一確認する必要があります。
この作業を経理部だけが行うと経理部の業務が膨大になってしまうので、会社全体でインボイス制度を学び、領収証を受け取った会社員一人ひとりが確認することで一部の人への業務負担が増大しないようにするといった工夫が必要だと思います。
【勘違い②】すべての消費行動に対してインボイスが必要
連日インボイス制度についてのニュースが出ている中で、会社の経理の方からすれば『何百円の少額のものを買ったものにもインボイスが必要なのか?』と思い、先が思いやられているかもしれません。
しかしすべての消費行動に対してインボイスの保存が必要というわけではありません。以下の9つの取引パターンにおいては、すべての事業者においてインボイスの保存義務はなく、必要事項を記載した帳簿の保存のみで仕入れ税額控除が認められます。
例えば従業員が出張で大阪から東京に行く場合、新大阪・東京間の新幹線代について、料金は指定席で14,720円であり3万円に満たさないため、インボイスの保存は不要です。ここで大切なのが「1度の取引金額が税込3万円未満」であるかです。上記の①と⑦においては1度の取引金額が税込3万円未満で特例が適用されます。そのため同じ新幹線代でも、3人が出張に行き3人分をまとめて支払った場合、合計金額は44,160円と3万円を超えるため、この場合は券売機から領収証を発行しインボイスとして保存しなければなりません。
経理部への事務負担の軽減のためにこのような特例が設けられていますが、どの取引が特例の対象であるかは確認しなければならないので、注意が必要です。
その他にも様々な特例が設けられていますが今回はここまでとします。
国税庁のHPでリーフレットや詳細なQ&Aが掲載されているので、疑問があればそちらからご覧ください。