いろんなことがありすぎた金曜

オープンからクローズ(12−21時)までの長い「通し」と呼ばれてるシフトの金曜日。
今日の夕方までのシフトは俺、オーナー、日本人女子2人、日本と英語も話せる台湾人の無口な兄ちゃん(ここの勤務歴長め)の5人だった。
調理が手間なオーダーが殺到してキッチンの作業がかなりバタバタしてる中、台湾人の兄ちゃんがオーナーに何やら小言言われてた。
兄ちゃんは歴が長いから効率よくテキパキ働けるが、無口なせいで共同作業中に良くコミュニケーションエラーを起こしてオーナーに怒られた。
今日もいくつかオーナーの指示をすっ飛ばして彼なりのやり方で作業を進めてキッチン内の進行状況がよくわからなくなってオーナーが「何回も言わせんな。指示受け取ったら返事しろ。進行中のことと済ませたことは共有しろ」と詰めてた。毎度のことでオーナーもかなり頭にきたのかかなりしつこくいろんなことを責めてた。やがて兄ちゃんも限界がきたのか口答えし始めて、ついには大喧嘩になった。
うちの店は入ってすぐ目の前にカウンター席があり、そこからキッチンの様子は丸見えである。なので、二人の喧嘩の様子もお客に丸見えだし、声も丸聞こえだ。
サーバースタッフの日本人お姉ちゃんたちは必死に客を捌き、オーダー受け取り、出来上がったもん提供して、とバタバタ走り回ってる中、キッチン内で大の大人二人が大げんかしてる。俺は必死に調理してる。
もう良い加減にしないと回らないので、僕が「一旦落ち着け」と二人と止める。
二人は一旦口論をやめて作業を再開するが、ここで兄ちゃんがかなりデカいミスをやらかし、オーナーがマジギレしてしまう。
兄ちゃんもこれは何も言い返せず、オーナーは「もう休憩行け」と店から追い出してしまう。ぶっちゃけキッチン二人だけで捌くのはしんどすぎる量のオーダーだったし、腹いせなのかなんなのか兄ちゃんは休憩時間オーバーして戻ってくる(これは流石に俺も恨んだw)。これがかなり響いて、夕方から夜に向けての補充作業が進まなくて夜ピーク時も地獄だった。
時間を戻して、15時に夕方から閉店にかけてのシフトのスタッフがやってきて僕と交代し、僕は休憩に行った。
Tim(カナダにある庶民の味方の激安コーヒーショップTim Hortonsのこと)で小腹満たしにドーナツと飲み物買いに行った際、ふと思い立ってオーナーと兄ちゃんの分も買う。オーナーの機嫌が悪いままなのはだるいし、兄ちゃんには落ちこまないで欲しかったから。つか、明日もシフト一緒だから気まずいのがだるい。

店に戻る。オーナーはいつもほぼ休憩なしで働くから隙を見てはなんかつまんで栄養補給してる程度だ。「お土産」とドーナツを渡すと、機嫌直して「さっきは悪かった」と俺に謝る。「兄ちゃんのことも許せよ」と言うと「それは無理。特に今日は」とキッパリ。まあ、許す許さないに外野の俺は関係ないわな。せめて人前で怒るのだけはやめな、とだけ言っておいた。英語だとなんかあんま遠慮なく? ビビらず? 物が言える。なんでだろ。
兄ちゃんは今日は夕方までのシフトなので、昼にどん詰まった分残業して上がった。帰り際にドーナツ渡して、「また明日な」と言って見送る。
仕事のポジション一緒で、英語で話し合えるからいなくなってほしくないねん。

夕方からメンバーが変わり、日本人の兄ちゃん(大卒らしい)がキッチンに就く。
18時ちょっと前にオーナーの嫁さんが赤ちゃんと共にやってくる。
オーナーにベイビー渡して交代。オーナーは倅を抱っこした瞬間上機嫌になって、ルンルンで散歩に行った。
こっからは嫁さんの指揮の元、夜ピークを捌く。
日本人の兄ちゃんはめちゃくちゃ要領が良くテキパキ働く横で、もう疲れちまってチンタラ働く僕は、ちょいちょい小言を言われる。もう無理っす今日は。
でも、「嫁さんの耳に入ったら、二人とも殺されるから」と昼ピーク時の話は極秘になったので、言い訳もできず。。。w
「あー、すんません」と謝ってばっかだったな今日。
日本語喋るとヘタレ化するのなんでや。

閉店作業中、機嫌直したオーナーとアニメの話になる。「Fateはめっちゃクールなアニメのひとつだ」と俺に言ってくるから「Type-moon好きなんか」と聞いてみると、月姫も空の境界も好きだと言う。「月姫の原作やったことあるか?」って聞かれて「あれは今はもうプレミアついてて手に入らない。最近リメイクされたけどやってないんだ」と答えると、「空の境界はどのストーリーが好き?」って聞かれて「タイトル英語でなんて言うかわかんないけど、3話目(痛覚残留)のやつ」って言うと「spiralのやつ?」「そうそれ!!」ってなってオーナーも「俺もだ!! あのチャプターはストーリーがクールだ!!」って大興奮してガッチリ握手。なんだこれ。昼との温度差。

いつも通り閉店後に賄い食って、歩いてすぐの学校前で夜景眺めながら食後の一服して帰宅。
汗でデロデロの体なのでシャワー直行。
サッパリ感最高の状態で夜散歩。というか近所のバーへ向かう。今日は金曜だから人も多いだろうと期待する。
店に入る前に、タバコを吸う。バイトもシャワーも全て終えて完全フリーの状態での一服が最近のナイトルーティンみたいになってる。店を覗き込むと昨日友達になったジャマイカンのアントワがビリヤードして遊んでた。目が合う手を挙げて挨拶してくる。昨日会った人の顔でさえ忘れる人もいるが、彼はそうではなかった。
タバコを吸い終えて店内に入って、オーナーのジェイに話しかけてコーラを頼む。
ジェイは中国人のおばちゃんで、基本無口だが話しかけられれば淡々とした口調で話す。無愛想なわけでもなく俺みたいな先週謎の出来事で突然やってきた日本人も歓迎してくれた。日本人がどうとかどうでも良いんだろうけど。
コーラ飲みながらアントワのビリヤードを眺める。傍のテーブル席でハットをかぶり、缶バッチをたくさんつけたスーツを着てる激シブな黒人の爺さんが一人で飲んでたので、挨拶する。この人と挨拶するときは常に握手だ。退役軍人らしく、横浜に居たこともあると言ってた。
先週ここに初めてきた時にも会った爺さんで、その身なりのシブさに一目惚れして、尊敬も込めてMr.つけて呼んでる。

アントワはビリヤードを終えるとタバコ吸おうぜ、と僕を誘って外に出る。
世間話して、彼はタバコを吸い終えると、対面にある黒人たちが多く集まるちょっと胡散臭めのバーを指差して「あっちの連中に顔見せてくる。またなBro」って言って別れた。
その後、この店の店員のフランス人のおっちゃんもタバコ休憩にやってきて雑談。すると、僕がここにくる事になった出来事の発端となったメキシカンのおっさん(聞いたところによるとメキシカンらしい)がコソコソと現れて、店内をチラチラと覗いてる。僕に気づくと「Hey」って笑顔で近寄ってきて、慣れ慣れしく背中にタッチしてきた。正直印象が悪く相手にしたくなかったので「You don’t have to worry. Bridgit isn’t here tonight.」って嫌味言ったら、バツが悪そうな顔して店内に逃げていった。しばらく店内をうろうろして誰にも相手してもらえなかったのか、パティオにきて椅子に座り、僕がフランス人のおっちゃんや他の黒人のおっちゃんたちと話してるのを遠巻きに見てくる。視線が鬱陶しく、そいつに目を向けると目が合ってしまい、すると、なんか飲もうよと言ってきたが無視した。無視を続けてると、しばらくして何も言わずに去っていった。
なんで英語だとこんな強気に出れる(こいつがブリジットに追い出されてるところ見てたのもあるけど

そうこうしてると向こうから見覚えのあるシルエットがゆっくりと歩いてくる。
毛糸で編んだ大きな帽子をかぶった小柄な黒人のおばあちゃんで、当然その帽子がトレードマークだ。ここに初めて来た先週に会った人の1人で、自己紹介したらすっかり仲良くしてくれた。ホリーにはローレンスって呼ばれてた。
駆け寄って、1週間ぶりに会うので「Hey nanny! Long time no see!」と挨拶してハグする。
「you are going to the bar, aren’t you ?」と聞くと「of course」と言って、バーまでエスコートする。飲み物を受け取って、パティオ(店の外側の仕切り)の席に座ってタバコを吸い出す。椅子にちょこーんと座ってタバコを吸う姿がシブ可愛い。ちなみにパティオの仕切りの中は禁煙なので、タバコ吸ってるとジェイに怒られる。
ちょうどバティオのパラソル片付けにきたジェイがタバコ吸ってるNannyを発見して「Hey “Sister”. Don’t smoke under the patio」と言うと、Nannyの座ってる席はパティオの仕切りの入り口付近で、タバコ持ってる手はその境界線の外だったから「タバコはパティオの外だよ」と屁理屈を言うw それにパティオに居た他の客たちも笑う。
ジェイがNannyをSisterって呼んだのが気になって「教会のシスターなの?」って聞くと、Nannyは首を横に振り、Nannyの知り合いの黒人が話に入ってきてなんか話してきたが訛りキツすぎて何言ってるかわからんかった。。。
冗談で「俺もSisterって呼んでいい?」って聞くと「ここではジェイだけ」と拒否された。「じゃあ、今まで通りNanny(ばあや)って呼ぶ.」というと満足そうに頷いた。

Nannyと今日起きた話なんかをして、20分くらい談笑してからそろそろ帰るか、とみんなにお別れ言って帰宅。

明日も通しのシフトで、日曜は休みだから、明日の業後もまた来よう。

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