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なんてったってアイドル

 以前友人と見に行った、SKE48のドキュメンタリー映画『アイドル』。上映館が少なく、足をのばして府中かどこかの映画館に行った。

 SKE48のメンバーである高柳さんが、かつての同期の元アイドルと再会するところから映画は始まる。同期の子の手には小さな赤ちゃん。その同期の子が、赤ちゃんに対して諭すように、「このお姉さんはね、アイドルなんだよ。」という。そこから物語が進んでいって、SKE48は総選挙でワンツーフィニッシュを決めても、ナゴヤドームを埋められない、という話が、ただただ淡々と語られる。最後のシーン、高柳さんが、涙ながらに言うのが、「アイドルって、何なんでしょうね…」という言葉なのだ。

 アイドル。映画の名前にもなっているのに、アイドル自身も、アイドルが何かわからず、日々もがきながら、生きている。

 アイドル自身もわからないのに、ファンが「アイドルって何か」なんて考えても終わりがないんじゃないか、と思う。でも、「アイドル」という言葉が好きだ。その言葉自身がもつパワーがある気がする。そして、それだからこそ、「アイドルって何だろう」と考えるのが好きだ。

 担当の一人である横尾渉さんも、以前雑誌で「アイドル」について、このように話している。とても素敵な回答だと思っているので、結構長くなってしまうが引用する。

アイドルも時代が変わっていけば、全然違いますよね…じゃあ、今はどんな時代なんだろう、って。だから、"アイドルって何だろう"って本当に思いますね。これ、ずーっと思っていることなんです。できるならファンの方全員に聞いてみたい。答えは十人十色だと思うから難しいですけど。…いろんな線引きが分からない。"アイドルだから"とか"アイドルなのに"って言われることもあるし…。一体、何なんだろうな、って。なので、じゃあ自分で作ればいいんだ、って思ってはいます。横尾渉っていうアイドルは、俺が決めればいいって。

 アイドルが何かわからないながらも、「横尾渉というアイドルは俺が決めればいい」と言い切る彼に、とてつもない頼もしさを覚えている。

さて、私のなかのアイドル像については、つい先日更新したこのnoteで触れている。


 私の中でアイドルは、あらゆる人の叡智と時間と愛が詰まったステージの上に存在する(そしてそのステージ上にしか存在しえない)、実在する「普通の人間」である彼らに、スポットライトで「アイドル」をプロジェクションマッピングをしたものなのだ。
アイドルはまだか。アイドルにあえる現場はまだか。


 まさかこの6日後に、もう一人の担当である今江くんがアイドルではなくなることも知らずに、こんなことを書いていた。

…うん、まだわからないけれど、彼はいわゆる「アイドル」ではなくなってしまう、と思う。

 彼が役者になること、それ自体はとんでもなく素晴らしいことだと思っている。「役者になること」それ自体が嬉しいというよりも、あの文面から、彼が現在与えられた選択肢の中から考えて、自主的に選択したことがしっかりと伝わってくるから、そして、その結論に対して彼が自信を持っていることが分かるから、こちらがそれを疑う方がおかしな話なのだ。

 ただ、「彼がアイドルではなくなること」と「彼が役者になること」に対する感情は隔離して考えるべきで、前者に対する寂しさがないといったらウソになってしまう。

 あの発表があった日の夜、ベッドの中で考えた。私は何かできることがあったか?と。できることなんて何もない、というか、出来ることをすべてやった結果が今である。さあこの発表を受けて、これから何ができるか、引き続き全力でサポートしないと…と考えながら眠ったら、1時過ぎに寝たのに2時半に目が覚めてしまった。興奮していて、体が疲れているのに脳が覚醒しきっている。

 眠るのを諦めて、台所で洗い物を始めたのが朝5時頃。朝日を浴びて寝ぼけ眼、何気なく「君からのYELL」を口ずさんでいた。

高く飛べるはずさ、君がいるから
ありがとう君だけが気づいてくれたよ、大きな宝物僕だけの羽

 ヲタ芸、もっと見たかったな。…いや、きっとみられるな。ああそうだ、ヲタクだったってIt's Alright!、カバーしてほしかったな。…いや、別に、みられないわけじゃないかも。

 大地くんはアイドルなのに、アイドルじゃなくなる。

 木曜日、仕事中にPerfumeの"Challenger"という曲を聴いて、気がついたら泣いていた。Perfumeは、10代から30代になった今でも、変わること・変わらないことを全力で日々実践している、私にとってかけがえのないアイドルである。

 

 結局、大好きな彼のことを、「アイドル」という言葉で表現できないことがもどかしいのだ。「アイドル」という言葉のもつ煌めき、すばらしさ。そしてそれだけではない、後には引けない覚悟のようなもの。

 ステージがあれば、きっと同じだ。彼がいれば、きっと同じだ。でも、この慣れ親しんだ、そしてあまりにも彼にぴったりだと思う「アイドル」というフレーズが使えなくなってしまうこと、やっぱり寂しさがある。

 ブンブンとしか言い表しようのないような手の振り方、どこかのオタクを喜ばせる敬礼やにこにーポーズ。ステージ上の彼と目が合って、こちらに投げかけてくれる視線の温かさ。胃痛を起こしながら買い続けたアクスタとうちわ。立ち位置が下がったかと思えば突如いなくなって、涙した日々。ステージ上にそのまあるいフォルムを見つけては、一瞬で双眼鏡のピントを合わせるあの瞬間。

 思い出せば苦い記憶だって掃いて捨てるほどあるのに、いざ解放されてみるとそれがにわかには信じがたくて、戦争の終わりに取り残された兵士みたいな気持ちで、今は日々を過ごしている。

 開演5分前のブザーと共に駆け込む松竹座、幕間の友人との雑談、間に合わないと叫びながら書いたファンレター…いや、いい。この辺は思い出にしようとしたけど、今からだってできる。

 きっとこれからも、ふとした言葉が、空間が、胸をしめつけて、じわりじわりと寂しさは募っていくのだろうと思う。でも、その寂しさをカラッと吹き飛ばすような未来しか待っていないから、楽しみでしかない。

 まだしばらくは…というか、肩書アイドルじゃなくなっても、私の気が済むまで呼ばせてよ。だって君は間違いなく、私にとってのアイドルだからさ。

 湿っぽいことしか書けない癖があるんですけどとりあえず早くコロナは終わって新しい現場をください(多分全人類こうおもっていると思う)!!!あとこれを見てください これが…アイドル…じゃなくて…なんなんだよぉ…


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