海:2021/02/22

どこかに。進んでいく。海。朝に、音楽を聴く。匂い。潮の、匂い。鳥が飛んでいる。色はいつも、違う。空の雲と、光。混ざり合うところに。受け止めるところに海がある。言葉。あなたの言葉。自分のことを、本当に理解する時。私はいつも寂しい。言葉。あなたの言葉。私のことを。私が本当に理解する時。私はいつも寂しい。いつだってそうだ。風が背中を押す。波が立つ。揃う。そろい揃って、南へ向かう。小さな海。波。編み込まれた模様。光の模様。波の模様。いつも違う。時間が流れていることを。知る。そしてゆっくりと歩く。木が風を受け止める。呼吸が香る。線香の匂い。ここには誰かが眠っている。空を見て眠っている。夜はいつの間にかどこかへいく。通り過ぎて行く自転車。空を見て歩く。私のように誰かが、歩いている。じっと見る。海の模様が見え始めたのは。歩き始めてしばらくした頃だった。私は思い出す。開いていた。開いてゆく。空の広さが懐かしい。懐かしさとは、色褪せた思い出。私のものではなくても、色褪せていればいい。黒く、灰色に色褪せていればいい。堤防に座る人。空を背にして座る人。海を背にして座る人。この先まで行けたらいいのに。紫色に滑らかに彩られる海。海。人肌のように滑らかにたゆたう海。ここは原初の記憶を持っている。同時に今に染まっている。私は海を見る。どこまでも海を見る。どこまでも見た気でいるけれども実は水平線というある限界を見る。限界。私が私である範囲。について思い悩んでみる。お腹が空いた。朝ごはんの匂いを思い出してみる。起きてしまった。朝。コーヒーか、牛乳か。キャップをひたすら集めていた昔。私は思う。手紙を誰にも書かなかった。言い残した言葉ばかり覚えている。聞き逃した音楽ばかり覚えている。書きながら聞いているのは、懐かしい歌で。書いているのに夢中になっている時は覚えていない。あなた。と一度も口に出したことがない。あなた。書くことの中にしかいない人よ。夜。私は自転車を漕ぐ。ゆっくり行くのは寂しすぎるから。早く行くもの寂しすぎるから。私は自転車を漕ぐ。遠くの明かりが冷たく夜の海に。反射していた。私は静かに自転車を漕ぐ。ゆっくり行くのは寂しすぎるから。早く行くのも寂しすぎるから。私は静かに自転車を漕ぐ。

透明。昼の海。鳥がいる。空が映る。緑色。
昼の海。鳥がいる。鳥が飛ぶ。空が映る。緑色。透明。
青い。空。鳥がいる。昼の海。遠くを見る人。空が映る。緑色。鮮やかな。
昼の海。鳥がいる。水を飲む。空が映る。コンクリート。奥の砂。緑色。透明。
昼の海。水を思い出す。どこかの海。夏だった。青い。白い雲。それ以外はない。
鳥がいる。水を飲む。空が映る。コンクリート。砂。緑色。透明。言葉。考える。
鳥がいる。青い。緑色。白い。遠い。空。息をする。足が痛い。それでも、歩く。
昼の海。鳥がいる。鳥が飛ぶ。空が青い。雲が広がる。遠い。広い。透明。緑色。
歩く。昼の海。鳥がいる。鳥が飛ぶ。空が。緑色。奥の砂。松。広い。透明。目。
鳥がいる。砂が見える。透明な色。緑色。コンクリート。言葉。考える。
私は思いつく。私の中の海。

砂浜は遠い遠い砂浜でした。私を遠く遠くまで運んで。海は静かにたゆたっていました。世間を深く深く忘れて。私は懐かしく懐かしく歩いていました。あなたを淡く淡く思い出して。いつもはこんなことにならないのでした。私はくるくるくるくると波を見て。砂浜は遠い遠い砂浜でした。私は遠く遠くを見て。海は静かにたゆたっていました。波を波を風と呼んで。世界をただただ見守っていました。丸い目にそのまま光を写して。私は懐かしく懐かしく歩いていました。あなたを淡く淡く思い出して。いつもはこんなことにならないのでした。私はうろうろと知らないふりをして。どうしてもどうしても逃れられないのでした。私は言葉を言葉を探して。いつもの海で、言葉を探して。砂浜は遠くまで砂浜でした。一度も踏んだことのない。誰も踏んだことのない。風と時間にならされた綺麗な柔らかい砂でした。


海。海。海。海。あなたは、見る。海海海。いつも見る。海海海海。うみ。うみ。生み。生み。あなたは見る。海海海海。泳ぐことができなくて。広がるうみ。海。
海海海海。海。海。海。海。壊れるまで見る。意味が。海海海海。海海海海。壊れるまで見る。形が。海海。うみ。うみ。生み。産み。産み壊れるまで見る。私が。海海海海。あなたは、見る。海海海海。壊れるまで繰り返す。何が。私とあなたと意味と言葉が。

最後までお読みくださりありがとうございます。書くことについて書くこと、とても楽しいので毎日続けていきたいと思います!