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「白い鳥」

響の仔猫 「おはよー、今日はお仕事お休みの日なんでちょっと寝坊しちゃった、夜は待 ちに待った推しのライブ。半年ぶりだーーー。楽しみ過ぎ」

天使ママ 「眠い、眠い、眠い、眠い、何曜日だ今日」

響 「昨日も遅くまでリハだったけど、やっと今日俺のかわいこちゃん達に会える と思ったら、こんな早くに目が覚めてしまった。久しぶりの早起き。久しぶり にワイドショー見る。国分君ってこんな歳とってたっけ。びっくり」

偉くない店長 「今日の占いは十位。もういっそ最下位の方が清々しい。ラッキーパーソンが 父親って、意味分からんし。あーーー、今日も今日とて仕事辞めたい」

響の仔猫 「おはよう響、それは国分君じゃなくて志らくだよ。そんなことよりも今晩の ライブ、半年ぶりのライブ、頭を長くして待ってまーす。あ、首を長くしてだ った」

天使のママ 「眠い、しんどい、眠い、しんどい、眠い、しんどい」

響 「気持ちが高ぶったままなんで、ちょっと近くの公園にジョギング行く。朝の 光の中でジョギングって、どんだけ健康的なアーティストだよって突っ込みが 聞こえてきそう。ちょっといってきまーす」

偉くない店長 「満員電車は外国の人から見たらただの拷問らしい。拷問を受けながら労働し に行くって、俺たちは誰の奴隷なんだ。と言いながら逆方面の電車に乗る勇気 もなく今日も今日とて粛々と通勤」

響の仔猫 「どんだけ健康的なアーティストだよ。あちゃ、まんまと言っちゃった。でも そんな常識にとらわれない響だから、私は好きなんだと思う。響の歌に出会え てから優しくなれた気がする。世界中の人が響の歌聞いたら、世界平和確実だ と思うんだけどな」

天使ママ 「息子君よ。いなりずしのアゲは皮ではない。めくるのはやめなさい。仮に皮 だとしても立ち飲み屋じゃないんだから、足元に落とすのはやめろ。はい。一 個ちゃんと食べました。えらいえらい。あーー誰か誉めて、私も誉めて、そし て頭を一度なでて」

響 「近所の公園にジョギング向かう途中、小さな子を抱いたお母さんが子供をあ やしている姿に胸うたれまくり。母性、神。とっさにメロディーが浮かんでき たからいつもの癖でスマホに録音、全ての母親にリスペクト」

偉くない店長 「ロン毛君から連絡。また遅刻。ラインで報告はもう慣れた、遅れるっすって、 ちっちゃい「っ」が入っているのももう慣れた。いや、こういうのは慣れては だめだ。店長の威厳を示さないとな」

響の仔猫 「道行くお母さんにちゃんと母性を感じる響こそ神。曲が楽しみ。今日は今か らママと待ち合わせてショッピング。そのあとパパも合流してファミリーでラ ンチ。家族そろってランチなんていつぶりだろう。食べたいもの決めとけって 言われたけどなんにしよう。延々と迷う優柔不断な私」

天使ママ 「今起きた恐怖体験。息子君抱っこしてゴミ捨て行ったら、息子君が暴れ泣く んでほんと捨ててやろうかと思ってたら、ロン毛男がスマホで明らかにこっち 撮影してる。それもなんか歌いながら。ほんと妖怪あらわると思って、小走り で逃げた。お母さんたち気をつけて。あれ絶対変態」

響「今日のチェキは終演後、会場内で準備出来しだいなんで、みんなよろしく ね。今までで最高のおしゃれしてきてくれたら嬉しいな」

偉くない店長 「今日こそはロン毛君にバシッという為に、トイレの鏡前で少し練習。しかし いつまでたっても怒るのは苦手だ」

響の仔猫 「今日のライブはてっぺんからつま先まで黒一色です。前のライブで響が着て たのとお揃いの奴。響色に染まってます」

天使ママ 「息子よ。なぜ立ったままゲロを吐く。そしてゲロまみれのまま高速移動しな いでくれ」

響 「今日のライブを頭の中でシュミレーション。盛り上がることは間違いない、 みんなを裏切り続けられる男でいるのが俺のポリシー。」

偉くない店長 「いつものコンビニでいつものカニぱんと缶コーヒー。もうそろそろレジの彼 女も僕の事を認識してくれているだろう。彼女のいってらしゃいのトーンが最 近親し気になった感じ。よし気合いが入った」

響の仔猫 「さっき、駅のいつも空いてる方の穴場トイレに入ったんだけど、男子トイレ の方からずっと男がコラッて言っててすんごい恐怖。バリエーションの違うコ ラッを言い続けてるのみだったから多分一人。人って壊れるー。私に響がいて 良かった。あーライブが待ち遠しすぎる」

天使ママ 「息子くんがいつもうっすらくさい。お出かけ前に風呂突っ込むか」

響 「俺は誰からも何からも常に自由でいる。そう生きるんじゃない。そうしか生 きられないから」

偉くない店長 「ロン毛君、オープン時間に間に合わず」

響の仔猫 「私も自由になりたいよ」

天使ママ 「今日は奈央ちゃんママとランチの約束がある。奈央ちゃんママはいつも小ぎ れいだ。女の子と男の子の違いだろうか。とりあえず息子くん綺麗にしたら、 私も今日は多少小ぎれいにしよう」

響 「今日も俺はじっと考える。人は何のために生きてるのか。自由ってなんなの か、本当の事ってなんなのか。俺は死ぬまで問い続ける」

偉くない店長 「ロン毛君、まだ来ない」

響の仔猫 「そんな響を応援する。私は響のために働いてるんだもん」

天使ママ 「息子君、お風呂から上がって綺麗になったんだ。なぜこのタイミングで自ら 口に手を突っ込み、残りゲロを吐くんだ。新手のテロなのか」

響 「いつだって考える。俺の言葉は伝わっているのか、俺の思いは誰かに踏みに じられたりしていないかって」

偉くない店長 「ロン毛君、堂々と出社。遅刻理由を聞いたら、自由を探してたって言われた。 怒るタイミングを逃した。どう指導するべきか分からない」

響の仔猫 「母の買い物お付き合い。友達みたいな私たちはきゃきゃ言ってばかりでなか なか買うものが決まらない」

天使ママ 「また気が付けば時間が経っている。もう髪も顔もズタボロだけど構わない。 眉毛だけ書く。私の中の女は長い間行方不明」

響「羽をもがれた天使が歌う、子守歌だよライラライ。思い出忘れた大人たち が悲しく笑うよしゅらしゅしゅ。あ、間違えてこっちにメモしちゃった」

偉くない店長 「ロン毛君は客前でスマホをいじる。注意したら店長だってて言われた。そう なんだけど、いじるならもっと分からないようにやって欲しい。本部の人がい つ来るか分からないし」

響の仔猫 「ちょう良き歌詞なんですけど。創作現場を垣間見たようで得した気分。母の買い物まだ迷走中」

天使ママ 「待ち合わせのとんかつ屋。結局奈央ちゃんママも少し遅れるとの事。慌てな くても良かったな。ここ来るバスの中で息子君がぐずりだしたら、近くのおば はん、こっち睨みながらすごい咳払い。ああ消耗するなー、ああなんか傷つく なー」

響 「いつも誰かに監視されているような気がする。きっと気のせいなんだろう。 少しナイーブになっているのか」
偉くない店長 「ロン毛君、すぐ売り物のマッサージチェアーに座ったりするから、目が離せ ない。客前ではもう少し愛想良くしてほしい」

響の仔猫 「え、待って、待ってすごく響に似てる店員さんいるんですけど。目とかは確 かに違うんだけど、すごく似てる。メイクしたらかなり良い線いく気がする。 近づきがたいオーラバンバン出してんのが響とは正反対だけど、かなり似てる。 無意味にドキドキ」

天使ママ 「今、この瞬間だけを生きるのが子育てのコツ。嫌な事はすぐ忘れる。メニュ ー見たら、結構な高級とんかつ屋。まあ座敷の個室だから、それぐらいするか。 畳効果か息子君突然のお休みタイム突入。お茶を飲みながら降ってわいたよう なゴールデンタイムを満喫中。細かい幸せをむさぼるのが子育てのコツ」

響「あーーー足が疲れたな。今夜のライブのためにもケアしないとな」

偉くない店長 「さっき接客した親子なんかすごかった。お母さんと娘なんだけど。娘黒づく めだし。お母さんが慰謝料使い切るからとか言ってバンバン決めてくし、なん かほとんど会話ないし。娘スマホしか見てないし。なんか闇しかなかった」

響の仔猫 「ママのショッピングやっと終了。まだまだ心が乙女のママは買い物熱に火が つくと止まらない」

天使ママ 「もう一層奈央ちゃんママ来なくていいよってぐらいの極楽空間。息子君も起 きそうにないし。静かだし。お茶もおいしい。ほんと夢のようなひと時。横に なって眠りたい」

響 「コミュニケーションって難しい。別に理解されようと思わないけど。これが 天才の孤独なのかな」

偉くない店長 「ロン毛君、今日は夕方で早引きさせてもらうって。いや、前から言ってたし、 了解したけどさ。遅刻してんだから、ちょっと遠慮とかしない? 堂々と前か ら言ってたんでって言われちゃうとさ。あーーー。今から昼休憩。もう今日の 昼は奮発してやる。いいもの食ってやる」

響の仔猫 「天才の響の考えは普通の人に理解できなくて当然だよね。そんな響が大好き。 私たちは買い物欲を満たした後はもちろん食欲。パパが待ってるお店に向かう。 ちょっと高級そうな店らしくて楽しみ。食べまくる」

天使ママ 「奈央ちゃんが急に発熱で急遽欠席。子供はこういうタイミングで熱だすよね。 まあこのまま出るわけも行かないから、一番安いレディースセットを頼む。贅 沢な一人飯になったけど、たまにはいいか。息子君が少しでも寝続けてくれる 事を切に願う」

響「今のうちに、今夜に備えて少し早いアップでも始めよう」

偉くない店長 「勢いで近くにある高級とんかつ屋に来た。こんな時はうまいものを食べるに 限る。噂には聞いていたけど、めちゃ高。でもいいんだ特上を頼んでやる。ロ ースかつ定食特上 5800 円。注文を受けてくれた女の子の目が少し輝いた気がし た」

響の仔猫 「すんごい高級料亭だと思ったらまさかのとんかつ屋さん。とんかつ屋さんと しては高級だけど、少し思っていたのと違うな。ま、今夜のライブに備えてス タミナつけよ。なんか久しぶりに会うパパは前よりもダンディーになった気が する」

天使ママ 「じゃーん。これがレディースセット。写真の右上のやつは湯葉みたい。この 店、最安値のレディースセットとは言え、サイゼなら余裕で7,8人ランチで きるぐらいの値段。いいもん、私いつも頑張ってるもん。とりあえず息子君が 目を覚まさないうちに堪能してやる」

響 「とりあえずマシンを使って3セット。だいぶん筋肉が喜び始めた」

偉くない店長 「見てこれ。何、これ。値段だけある。右上のやつ食べても何か分からん。と ろろかな。肉とかもうすごい。うまい肉は脳がしびれるな。え、個室になって る座敷席の方から悲鳴聞こえた。大丈夫かな」

響の仔猫 「内装もすごく高級感あるお店。パパもママも嬉しそう。いつまでも恋人同士 みたいな二人見てると、私も早く結婚したいなと思っちゃう。響のお嫁さんに なんて贅沢な事言わないけど」

天使のママ 「息子よ、突然起きたと思ったら障子にダイブする意図はなんだ。母ちゃんは 天国から地獄」

響 「指慣らしに鍵盤をたたく。楽器やっている時が本当の俺」

偉くない店長 「隣の家族さっき店来てた家族だ。気づかれてないけど。父親みたいなのも追 加されたけど、会話が怖い。権利書とか、財産分与とか、やっぱり明らかに離 婚話。何もこんなところで。黒ずくめの娘は下向いてスマホいじったままだし。 地獄だな。俺はこんな家庭は作らない」

響の仔猫 「おいしいものって無条件に幸せになるよね。家族でおいしいもの食べて夜は 響のライブ。幸せ過ぎて罰当たりそう」

天使ママ 「お店の人がいい人で助かった。必死に謝ってたら、子供はそういうもんだっ て笑ってくれた。感謝」

響 「いったん、休憩。最新のマッサージチェアーで瞑想タイム」

偉くない店長 「店員の女の子は、もしかしたら僕の事が少し気になってるのかもしれない。 こっちが言う前にご飯やキャベツのお替わりを聞いてきてくれる。ちらちらこ っち見てるし。小食だけどここは男らしく行こう」

響の仔猫 「どんだけ響はリッチなんだろう。定期的に、トレーニングの機械もマッサー ジチェアーも変えてるし。もしかしたらどこかの御曹司だったりするのかな」

天使ママ 「息子君を育てはじめてから、ありがたみと怒りが交互に来る。基本が疲れ切 ってるからどっちも心をえぐる。周りから見れば、私は幸せなお母さんに映っ てるのかな。なんて少し弱気な事を脂身食べながら考える」

響 「瞑想に邪魔が入った。けどこの世の中生きてる限りノイズから逃れられない。 ノイズさえも愛せたならと俺は思う」

偉くない店長 「隣の家族、静かだけど確実にヒートアップしてきてるし。あ、あ、今、母親 が父親に水かけた。修羅場。黒づくめスマホいじってないで止めろ。なんか鼻 歌歌ってるし。こえーー」

響の仔猫 「私が響の好きなところは、かっこよくて、楽器がうまくて、歌声が素敵で、 全部素敵で、どんなにつらい事があっても響の歌、口ずさめば生きようと思え るし、どんなに泣きそうになっても響の歌聞けば、涙こらえられるし。私に響 がいて良かった。ほんと私に響がいて良かった」

天使ママ 「なんか、店の中で誰かケンカしてるみたい。こんなおいしいもの食べながら ケンカって切ないな。大人の言い争いって、なんか胸がざわざわする。息子君 の耳をふさぐ」

響 「実は今日のライブで重大発表をする」

偉くない店長 「結局修羅場家族は食事もそこそこに店を出た。怖い怖い。しかしお腹がはち きれそうだ。結局ご飯もキャベツも 7 回おかわりした。彼女も微笑んで俺を見 ていた。結構いい感じかもしれない。少しお高いが定期的に通おう」

響の仔猫 「え、待って待って待って、何、重大発表って。え、メジャーデビューとか? 新曲。え、何、いい事だよね?いい事だよね?やばい、なんか頭が止まる。少 し怖い」

天使ママ 「何だろう、なんか涙が出てきた。別に何が悲しいとかじゃないのに。疲れて るのかな。泣きながらとんかつ食べてるってもう妖怪だよ。あ、息子君が私の 頭を撫でてくれてる。息子君。君はお父さんに似てモテ男になるのか。君はど んな大人になるんだろう。母ちゃんそれは絶対見たい」

響 「みんなを混乱させてるみたいだね。ごめんよ僕のかわいこちゃんたち。でも きっと君たちなら分かってくれると思うから。とりあえず今晩のライブを楽し みにしておいて」

偉くない店長 「店戻ったら、他のバイトからクレームの嵐。ロン毛君がスポーツ器具売り場 でトレーニングマシーンで遊んでたとか、売り物のマッサージチェアー座って さぼってたとか。楽器コーナーでピアノ弾いてたとか、お客さんに声かけられ ても態度悪かったとか。ロン毛君、勘弁してくれ」

響の仔猫 「分かった。とりあえず響の言う通り、ライブまで考えないようにする。私は ランチも終わって、今家族は解散した。ライブまで一人でまだ時間あるな。ど うしよう」

天使ママ 「今、公園。昼下がりの公園は眠気が・・」

響 「最高のライブにしてみせる」

偉くない店長 「ちゃんと怒らないと。けどロン毛君なんか憎めないんだよな。なんなんだろ うあの変な魅力。とりあえず自分を高ぶらせるために一曲聞く。友達に教えて もらったインディーズのミュージシャンなんだけど。彼の曲を聞くと力が湧い てくるから。いつかライブ行ってみたい。この響っていう人の」

響の仔猫 「時間があるんで近くの公園でひなたぼっこ、響の音楽を聴きながら夜のライ ブに向けて高めていく」

天使ママ寝息。

響 「ある決意をある人に伝えた。俺にとっては大きな決断」

偉くない店長 「いやいやいや、突然どうしたロン毛君」

響の仔猫 「どんな決断なんだろう。って言うかあの子供大丈夫かな。お母さんはどこ だ?」

天使ママ、寝息。

響 「やる時はやる男だ」

偉くない店長 「ロン毛君を怒ろうとしたら、突然の社員にしてください宣言。いや、え、希 望と勤務態度が一致しない。なんか突然の事でまた怒れなかった。ロン毛君は 色々調子が狂う。とりあえず休憩に行かせた。うーーーん」

響の仔猫 「・・少し心がしんどかったな。ちょっと泣きそう。まあ怪しい格好だもんね」

天使ママ 「うっかり公園でうつらうつらしてしまったら、黒ずくめの女が道路のそばで 息子君を抱えてた。必死に取り返したが、そのままその黒づくめ女逃げってた。 息子君をどうするつもりだったんだろう。まだ怖くて震えてる。今、警察呼ん で待ってるとこ。怖いよー」

響「今からあるとこに行って少しイメチェンしてきます。新しくなった僕の姿 を今晩来る人は楽しみにしていてね」

偉くない店長 「普通に考えてロン毛君なんか社員に推薦できない。でもな・・。なんだろう、 この気持ち」

響の仔猫 「さっきのは間違い。私も歌詞書いてみたくて間違えてこっちに書いちゃった。 ひゃーー恥ずかしいなあ。もし見ちゃった人は忘れてね。キャラにもない歌詞 書いちゃった。やっぱり響みたいな歌書けないな」

天使ママ 「激しく自己嫌悪。どうすればいいんだろう」

響 「世界が変わって見える」

偉くない店長 「ロン毛君が、ロン毛君が、ロン毛君のロン毛が」

響の仔猫 「とりあえずまだ時間はあるけど、もうライブハウスへ向かう。一刻も早く響 に会いたいし」

天使ママ 「警察が来たら目撃者の人が現れて。私誤解してた。・・どうしよう」

響 「俺の思いは伝わっただろうか。俺の願いは叶えられるだろうか。覚悟を決め た俺のスタイル。これから始まる新しいスタイル。」

偉くない店長 「昼休憩に髪の毛切って戻ってきた子初めてだ。ほぼ7:3.どうしたんだロ ン毛君。いや 7:3 君。君なりの社員になりたいアピールなのか」

響の仔猫 「ちらほらと会場周辺には響のファンらしき子たちが集まっている。タピオカ 飲みながら待ってよ」

天使ママ
「#拡散希望 さっき 14 時頃、中央区の亀の子公園にいた黒づくめの女の人。道 路に飛び出しそうになった息子を助けていただいた方。探してます。失礼な態 度を取ってしまい後悔してます、申し訳ありません。会って謝罪したいです」

響 「今からライブハウス入り。なんか色々感慨深い。俺ほんと音楽好きなんだよ ね。音楽に惚れこんでる。ずっと片思いだったけど」

偉くない店長
「7:3 君、言ってた時間通りに早あがり。ほんとに社員になりたいのか」

響の仔猫
「なんか胸騒ぎがする」

天使ママ 「まだ黒づくめの人からは連絡ありません。今日はなんか疲れたな。いつも疲 れてるけど。息子君は花かっぱに夢中。今日は晩御飯作れる気がしない。ピザ でもとろうかな」

響 「もうすぐかわいこちゃん達に会える。おもいっきり歌うから、全身全霊で楽 しんで」

偉くない店長 「あーー今日も終わる。また無駄に死に一日近づいた」

音楽

響の仔猫
「ウソだよね。ねえ、ウソだよね。私どうすればいいの? どうやって生きて いけばいいの?音楽やめるとか言わないでよ響」

天使ママ 「家出してしまった。旦那が帰ってきてピザ見た瞬間。ピザかって。言葉はピ ザか、だけだったけど。言葉の裏にすげー感じた。働いて疲れて帰ってきたの に、お前は一日家いただけだろう、それなのにって言葉が、ピザかの前に込め られていた。思わずピザ投げて家を出た。今日はなんかずっと泣いてる」

響 「今日のステージには音楽の神様がいた気がする。遅いよ、神様」

偉くない店長 「仕事終わった。今日もぐったりだ。昼間贅沢したから夜はコンビニにする。 いつもの癖でカニぱん買ってた。あの子夜はいないのについ目で探してしまっ た。10 年後もこうやってカニパン買ってたりするのかな。未来の事考えて怖く なる。いつから未来が怖くなったんだろう」

響の仔猫 「寂しい。寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい。寂し いよ。黒いコートは捨てた」

天使ママ 「とりあえず着の身着のまま出てきたから寒くてコンビニでコーヒー買った。 店員さんがストーカーカニぱんマンが夜も店に来たとか喋ってる。そんな妖怪 いるんだろうか」

響 「本日のステージを持ちまして響の音楽活動は全て終了します。今まで支えて きてくれたファンの方々には感謝しかありません。素敵な夢をありがとう」

偉くない店長 「明日、急遽実家に帰らなきゃいけなくなった。なんかまっすぐ家に帰るのが やだな」

響の仔猫 「寂しいよー、家に帰ったら今日が終わりそうで嫌だ」

天使ママ 「携帯も鳴らさないってなんだよ旦那。帰らねえぞ」

偉くない店長
「公園で缶ビール。親父が今の俺の年の時、もう俺は 10 歳だった。俺何やって んだろうな。親父ってすんごい大人だったんだなー。親父って頑張って親父や ってくれてたんだなあ」

響の仔猫 「このままどんどん薄くなってフッて消えないかなー。向こうのベンチに座っ てるおっさんが殺人鬼だったとしても今は怖くない」

天使ママ 「昼間の公園に来てしまった。夜の公園って結構人がいるんだ。初めて知った。 みんな帰るとこないのかな。私もだけど。黒づくめの人、どこにいるの」

偉くない店長 「今すっげえデカい流れ星見たんだけど。すんごいおっきい奴」

響の仔猫 「空が明るくなるぐらいの流れ星今流れた」

天使ママ 「今、一瞬空明るくなった気したんだけど」

店長「流れ星」
ママ「え?」
店長「凄かったですよね、今の」 ママ「今、明るくなったの」
店長「ええ」
ママ「見たかった」
店長「見てなかったですか」
ママ「はい」 
店長「何とか流星群とかだったらまた飛ぶかもですよ」
ママ「え、飛んでほしい」
仔猫「今のすごかったですよね」
店長「見ました?」
仔猫「はい」
店長「なんか赤かったですよね」

仔猫「え、なんか私紫に見えた」

 店長「え、」
響「黄色でしょ」
店長「うわ」
響「うわって」
店長「7:3 君」
響「え?」
店長「あ、いや、なんでここに?」
響「休憩室の鍵持って帰えっちゃてて」
店長「君か、っていうかなんで僕がここだって」 響「ツイッター見て。偉くない店長の」
店長「え、見てんの」
響「はい」
店長「・・・」
仔猫「あの」
響「え」
仔猫「いや、なんでもないです。ちょっと知ってるミュージシャンに似てたも んで」
響「しがない電気屋の社員です」
店長「いや、まだ社員じゃないから」
響「明日から?」
店長「いや、そういうわけでも」
ママ「あ、」
店長「え、」
ママ「カニぱん」
店長「あ、晩御飯で」
仔猫「あ、光った」
ママ「ウソ」
店長「確かに光った」
ママ「ずっと上見とこう」
響「じゃあ帰ります」
店長「流れ星見ないの?」
響「・・もう星に願わないんで。じゃあ、おやすみなさい」
仔猫「・・・」
店長「たまに言う事がキザなんだよな」

音楽

響の仔猫 「おはよう。なんかきのうは夢みたいな夜だった。色々な事が終わった一日だ った。結局一個しか流れ星は見れなかったけど、私ももう何も願わなくても大 丈夫な気がする。あれは響だったんだろうか。でももう関係ない。響、今まで ありがとう。これからも響の歌口ずさみながらだけどなんとか生きていく」

天使ママ 「眠い、眠い、眠い。流れ星一個も見れず。夕べ旦那は迎えに来て謝ってくれ た。旦那はちゃんと謝ってくれるから大好きだ。そして、今盛大に母ちゃんの 膝にゲロをぶちまけた息子君。しゃもじをかじるのはいいけど突っ込みすぎだ。 けどそんな馬鹿な君を世界一愛してる。黒づくめの人はまだ見つからない」

偉くない店長 「今、新幹線なう。親父の好きだったスーパードライを飲んでいる。朝ビール 最高。車内販売の女の子が妙に目線を飛ばしてくる。今日のラッキー行動はワ イルドなふるまいだったから、固いアイスをあっという間に食べてアピールし ようかなって思ってます」

響「最後の曲です。 泣いても笑ってもラララララ、辛くても悲しくてもオウオウオウ。しんどくて しんどくてしんどくても。日はまた昇る残酷に。 神様、神様オーマイゴッド。あなたがもしいるのなら、世界中のかわいこちゃんたちに涙少なき未来をお願い。・・・・サンキュ」

                  了

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