短歌習作 《創造主》

友もなく親も亡くしたこの身には春の嵐がじつに目障り
絶望に挨拶をして今日もまた希望と言う名の暴力を憎む
暖かな毛布に包まり暗闇をぎゅうと抱きしめ明日を夢見る
猫を見て猫の真似して横になる八月半ばの不戦の誓い
ひかり射す窓辺に横たう猫を見て今日もなんとか生きようかなと
pcの画面をなぞり問いかける「わたしのわたしである意味なぁに」
丸くなる、四角くなって、また丸に。棒状になってわたしの完成
石を破る草木もあれば枯れ行かん草木もありて我は後者と
はっはっと息を弾ませる吾が犬に命もろとも吸われるようで
わかば切らしマッチも切らし銭はなしわたしの動く力はゼロ
寝て過ごす月日の中に見出した四畳半の神話体系
真夜中のラジオから聞こえるあのうたは僕に向けてのメッセージだよね
挨拶をオカメインコに一つして今日はそれきりただの人形
見えるもの見えざるものの両方を備わるものこそ本質と知れ
ただ単に乾燥わかめをふやかせる増えるその様に命感じて
東京の季節外れの雪化粧首都を麻痺させぢつと手を見る
夢を見るそんな些細な行為さえ叱りを受ける東京砂漠
ラムコーク飲む度ひとつ考える共産主義の成果は如何
「あなたには僕の気持ちはわからない」「君の声聞く僕の気持ちは?」
じっとして寒さに耐えども春きたりても咲かぬ花あり吾と言う花
君が刺す言葉の刃が痛すぎてちみどろの吾一人ぽつねん
善意という名の横暴な君の手は僕を張り手で死ぬまで叩く
ペンを取りこの一日を書き記す今日も無事に生きましたとだけ
豊潤なワインのように布団にて熟成させる吾の魂
意味の無いことはないと力説す君の声こそ意味は無いのだ
天井に宇宙を見たり吾はただ夢にまで見た創造主となる

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