物忘れ日記 ときどき猫とか本とか映画とか:Vol. 20 明日の老人力
つい、2、3日前まで、口を開けば「暑い、暑い」と言っていたのがウソのような涼しさ。あぁ、この涼風があの酷暑の日に吹いていたらと思ってしまう。さんざんエアコンの恩恵にあずかっておきながら、天然の涼風の心地よさは別格なんだな。
そんな涼風を感じていたら、くしゃみをしてしまった。はっくしょーん、と我ながら感心するくらいの見事に豪快なくしゃみだったと思った直後から、左脇腹にかすかな痛みを感じた。痛みは少しずつ強くなり、布団に入ってやすむころには、寝返りをうつたびに痛みで目が覚めた。
気のせいと思うには鋭い痛み。くしゃみで肋骨にヒビが入ったとか聞いたことあるような。でも、まさかねと思いつつ、夜明けを迎えた。「くしゃみ、脇腹、痛み」で検索してみると、「肋間神経痛」という言葉が現れた。
「肋間神経痛」を抱えていらっしゃる方には、甚だ失礼な言い方になって申し訳ないが、「肋間神経痛」という言葉にしのびよる年齢の影を感じてしまった。これが加齢ということか。まったくもって個人の感想にすぎないが、「肋間神経痛」と元気ハツラツな若者はあまり結びつかない。そこはかとない、湿布の匂いを感じてしまう。
こんな変化を「老人力」というのだろうか。
「老人力」とは、1997年に赤瀬川源平氏が提唱した概念。それまで、「ボケ」とか「ヨイヨイ」とか散々な呼び方をされていた加齢によるさまざまな現象を「老人力」という未知の力としてとらえた画期的な言葉である。たしかに、「あー、こんな簡単なこともできなくなって、ボケてきたなー」と思うより、「おっ、こんなことしでかして、これが老人力がついてきたってことか」と思うほうが、なんだか足取りが軽くなる気がする。「老人力」についてもっと知りたい方には、ちくま書房から出ている赤瀬川源平氏の『老人力』をおすすめしたい。
おかげさまで脇腹の痛みは、病院へ行くこともなく、湿布のお世話になることもなく、いつの間にか去っていった。まだまだ「老人力がついてきた」とはいえないようである。明日の自分にどんな老人力がついていくのか。楽しみに日々を過ごしていきたいと思う。
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