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描かない期間をどう過ごす

しばらく漫画作業から離れていました。まる1ヶ月、これ以上は細くなったら消えてしまうほど、ほそぼそ、極細ペースで、描いては立ち止まりつつ、漫画第5話の下書きを終えて、パソコンに取り込み、ペン入れする段階に来たので、スランプ(?)は脱したことにして、記録を残しておきます。

これがスランプというものか

これまで、長期間取り組むとわかっている作品を中断して、また手をつけるということをした経験がありませんでした。制作期間の見当をつけずに手を付けて、飽きたり、行き詰まったり、他のことがしたくなったら自由に切り替えていました。だから、作りかけ、考えかけの制作物はやがて記憶の彼方へ・・・
 仕上げることは決まっているけど、描かないのか、描けないのか、わからない、とにかく気がすすまない、という状態になったのは初めてでした。

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そうこうしているうちに、気がつけば秋も終わりに・・・

描かない理由

 原稿用紙とイメージを、試行錯誤によって汚したくなかった。と言うとすごく美化されているから、ここだけの発言にしておこう。私がディレクター的立場で、こんなことを言い出して手を動かそうともしない作画スタッフがいたら、殴るか、言葉の暴力で「故郷に帰れ」と言うでしょう。私が作画スタッフでも、振り下ろされる拳を甘んじて受け止めるはずです。幸い私は誰からも期待されていない立場であるので、綺麗事が通用する職場環境でよかった、よかった。

描けない理由

 もっと画力があったり、『映像研には手を出すな』の主人公みたいに、緻密で不動の想像世界が、自分の中に鎮座している系の作家だったら、どんどん手を動かして、スケッチブックの上で描いたものを破り捨てたりしながらイメージに肉薄していくのかも知れません。

 私のやりかたは、できる限りいろんなイメージを膨大に見て取り込んで、頭の中の坩堝るつぼでぐるぐるかき混ぜて、そこからヒュっと飛び出した線が原稿用紙に落ちたところを鉛筆でなぞる・・・

 みたいな、ミニマリストというか省エネ作画法。目で見た情報だったら平等に取り込まれて行くので、自分で描いた汚い線も情報のうち・・・。もっと描き慣れたら変わってくるのかな。

 第5話から新しいモチーフを入れていかなくてはいけなくて、許容範囲を超えて情報不足だなと感じていました。それを押し切る程のエネルギーも第4話までで使い切ったと言うか。

 あとはお昼の仕事のほうで異動があって、そちらにエネルギーを多めに振り分けていたり。

 イメージ切れと、エネルギー切れでした。ストーリーは出来上がった、ラフも描けた、コマ割りもした。でも、詳細を詰めようとすると、真っ白な紙に何も浮かんで来ない・・・。

スランプ期間中にしたこと

作品からは一旦離れて、これまでの作品を仕上げる中で課題に感じたこと、モヤモヤした疑問を潰していくことにしました。

✓次の登場人物のイメージをもうちょっと固めてみた・・・ちょっと詰めてみて、思ってたより面白くならなそうな細部のサンプル(画像)を探し直したりしてました。
✓映画、ドラマ、アニメなどの映像作品を観た。
✓人体デッサンや体のパーツの描き方を練習した。
✓ストーリー展開というものに着目しつつ本を読んでみた。
読みたかった漫画作品を一気読みした・・・これがいちばん薬になったと思います。先人の作家たちが「どこまで描き込んでいるか」よりも、「何を描かないで仕上げているか」の方に着目しました。「いっぱい描いてあるように見えるけど、数えてみたら塊で3個だった」とか。緻密なようで同じタッチを効果的に繰り返してるとか。画面内のスクリーントーンの種類はわずかだけど、表現力が高すぎるから色彩豊かに見えているとか・・・そんな・・・実力の差(というか谷?)を見せつけられるような発見を・・・笑。

 でも、実際に自分でも漫画を描いていなければ、気がつけなかった発見がたくさんあって、漫画の力が前よりも好きになっている自分を再発見できました。

スランプ期間中に観た作品リスト

気分転換も兼ねているので、もともと苦手なホラー系とか社会派、シリアス系、こてこてのラブロマンスは避けていました。
全部良かったけれど、特に影響を受けたものに⭐。

【漫画】
⭐約束のネバーランド 原作:白井カイウ 作画:出水ぽすか ・・・アニメ版だと面白いのは脱獄するまで、と言われているらしいが、原作は最後まで語り尽くしていると思う。
⭐ダンジョン飯 九井諒子・・・ファンタジートリビアにおさまらない構成力。
・猫のお寺の知恩さん オジロマコト
・葬送のフリーレン 山田鐘人/アベツカサ
⭐子供はわかってあげない 田島列島
・大きい犬 スケラッコ

【アニメ】・・・アマプラで観られるもの中心。やはりファンタジー系が優勢。
⭐シャドーハウス・・・主要キャラの表情を描かず、それを物語のキーに使っているところがすごい。
⭐王様ランキング・・・ほのぼのした画風と裏腹に、ストーリーは一筋縄ではない。
・ハクメイとミコチ
・王と鳥
・思い出のマーニー

【本/教本】
・モルフォ人体デッサン・・・文字通り真面目な人体デッサンの本。
・ややこしくない絵の描き方(松村上久郎)・・・モルフォ人体デッサンと組み合わせて読むことで、思いつめ過ぎないできれいで楽しげな人体が描けるようになることを期待。
・モモ(エンデ)・・・オーディブルで聴いています。有名どころのストーリーを知りたいけど、読む時間がないものはオーディオで聴けばいいと割り切る。
⭐ストーリー/ロバート・マッキーが教える物語の基本と原則・・・これを読むに前後して、映画ももう一歩踏み込んだ視点で観ようと思っている。

スランプから立ち直った瞬間

スランプときいて、すぐに思い出すのは『魔女の宅急便(宮崎駿監督)』のセリフです。

「そういうときはジタバタするしかない。描いて、描いて、描きまくる。それでも描けなかったら、描くのをやめる。散歩したり、昼寝したり、何もしない。そのうちに描きたくなる。」

描かないまま、作品とは違うことをしているうちに、目の前に、手を付けてないこと、他にもやってみたいこと、やらなきゃいけないような気がすることがどんどん降り積もってきました。がんじがらめになって、次に何をしたらいいのかわからず、ふと気がつくと、身動きが取れない、「これがパニックというやつか」という状態にまでなっています。

しょうがないので、ノートに、やることリストみたいなものを書き出しました。並べると、大小10個以上ある。中には「運動」とか、毎日こつこつやるしかないことまで・・・。そうやって優先順位を振り返っているうちに

「漫画を仕上げる」というタスクが、仕事のためにやらなければいけない読書と同率1位に浮上している・・・。仕事のための読書は平日に時間を作るとして、もはや、わたしの余暇にするべきことは漫画を完成させることだなと納得した時点で、自然と机に向かって、下書きを仕上げることができました。

結果として1ヶ月で作業に戻ってこられたから、思い切って脇道にそれてみてよかったのかも知れません。

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散歩の途中でみつけた、やたらデカいイチョウの葉のボス。

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