見出し画像

『ドラえもん』に学ぶ企画がヒットするときの3つの隠し要因

売れない放送作家だった頃、友人と「勝手に企画会議」というものをときどしていた。誰も企画を発注してくれないので、こちらが勝手に考える、という趣旨だ。

そこで、同時に「企画とは何か?」ということを徹底的に研究していた。今現在売れているものを分析し、そこから「ヒット」に結びつく要因を探ろうとしたのだ。

その中で、ケーススタディとして『ドラえもん』を取り上げたことがあった。『ドラえもん』がヒットし、国民的コンテンツとして定着したことの理由をできうる限り分析しようと試みた。

すると、そこで『ドラえもん』の作品成立の来歴を調べたり分析したりする中で、さまざまな「ヒットの隠し要因」というものが分見えてきた。そこで今回は、そのことについて書いてみたい。

そこで分析した『ドラえもん』ヒットの隠し要因は、大きく3つあった。

第一は、「こする」である。

「こする」とは、「一つのテーマでくり返し作る」ということだ。「しつこくくり返す」ということである。

実は、藤子・F・不二雄は同じ企画を何度もこすっていた。彼がそれをこすり始めたのは、仲間と共同で描いた『オバケのQ太郎』が、ヒットしながらも諸般の事情で終了になってしまったときからだった。彼は、その面白さが忘れられず、似たような企画を次々とくり返していたのである。

それらの企画は、『21エモン』『ウメ星デンカ』『ベラボー』といった作品となって発表された。これら作品の構造は、どれも『オバケのQ太郎』と一緒なのである。すなわち、平凡な家庭の息子のところに不可思議な生物が来て、さまざまなドタバタ劇をくり広げる——というものだ。藤子・F・不二雄は、『オバケのQ太郎』がヒットしたときからこの構造がとても気に入っていて、なんとかもう一度成功できないかとくり返しこすっていたのである。

しかし、思惑に反してなかなかヒットは生まれなかった。そこで普通なら諦めそうなものだが、しかし彼は最後まで諦めなかった。『ベラボー』がまたもや不発に終わって新たに連載を始める際、ここまで幾度となく不発が続いたにもかかわらず、また同じ構造で始めるのである。

そうして始まったのが『ドラえもん』だった。『ドラえもん』は、ご承知のように国民的ヒットとなる。ここから分かるのは、自分が面白いと思ったのはたとえすぐには受け入れられなくてもけっして諦めることはないということだ。何度でも「こする」ことが重要なのだ。

第二は、「やけくそ」である。

これもあまり知られていないことだが、当時の藤子・F・不二雄は不人気のどん底に喘いでいた。前述したように、出すマンガはどれもヒットせず、しかも子供っぽい絵柄は時代遅れとされ、ほとんどの編集者から見放されていた。

ここから先は

2,061字

¥ 110

期間限定 PayPay支払いすると抽選でお得に!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?