なぜ10年後、介護施設は激減するのか?
ドラッカー学会糸島大会のテーマは「未来予測」である。
この「未来予測」が、なかなか興味を持たれづらいというところがある。だから今回は、「未来予測に興味を持ってもらうためにはどうすればいいか」ということについて考えてみたい。
未来予測について、興味を持ちやすいのは「10年後、なくなる会社、残る会社」などだろう。「10年後、なくなる業界、伸びる業界」でもいい。こういう投げかけ方だったら、興味を持つ人も多いはずだ。特に、学生で興味を持つ人は多いだろう。
そこでここからは、「10年後、伸びる会社、沈む会社」というテーマで考えてみたい。多くの人は、伸びる会社はどこ? 沈む会社はどこ? と具体的に聞きたいと思っているはずだ。あるいは、自分なりに予測を立てる人もいるだろう。
ここに、少しハードルがある。というのも、具体的に教えてもいいのだが、それでは肝心の「未来予測」について教えたことにはならないからだ。
そのため、逆算して考えた方がいい。例えば「10年後、なぜ書店業界は消滅するのか?」などというタイトルだと、その消滅の仕方について述べる中で、未来予測について語ることができる。
ただし「なぜ書店業界は消滅するか?」という例だと、多くの人が興味を持たない可能性が大きい。なぜなら、意外性がないからだ。書店業界は今でさえ、数が激減し、存続の危機に瀕している。だから消滅すると言っても、驚きは少ない。
そこで、こんな例だとどうだろう。
「なぜ10年後、介護施設は激減するのか?」
これだったら、多くの人に興味を持ってもらえそうだ。なぜなら、今は高齢化社会で、多くの人々が「これからますます介護施設が必要になる」と考えているからだ。
しかし、それは大きな誤りだ。実は、日本の人口統計を見れば、老人が最も多いのが今であり、その数はこれから純減していくということが分かる。なぜかというと、人口のボリュームゾーンである団塊の世代が死んでいくので、老人の絶対数がじわじわと減っていくからだ。そのため、介護施設を使用する人の絶対数も減らざるをえない。これから老人の数を増やすことは不可能なのだ。
そのため、およそ10年後を境に、介護施設はバタバタと潰れていくだろう。これはドラッカーが言うところの「すでに起こった未来」なのである。
こんなふうに考えると、10年後、20年後の見通しというものもつきやすい。見通しがつくと、人生設計もおのずから変わってくるだろう。特にこれから何十年と生きる予定の若い人にとっては、大いに参考になるのではないだろうか。
ドラッカー学会糸島大会は、そんな10年後、20年後のさまざまな見通しが良くなる「未来予測」が学べるシンポジウムである。ぜひ、お越しいただき、大いなる学びの機会としていただけたら幸いだ。
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