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作家になれる(具体的で簡単な)方法
こんなTweetが話題になっていた。
とあるラノベ作家さんが嘆いていた話を思い出す。
— アキヅキ/望月陽光 (@AkimitsuMoc) June 1, 2022
曰く、「ラノベ作家のなり方を教えてほしい」と相談されたときに1ヶ月の間に最低50冊、望ましくは100冊読んでどういう作品に自身の感性が琴線に触れたかまとめてくるよう伝えると、十中八九何もしないでドロンしてしまうという。
ぼくは、こんな抽象的なアドバイスをしても作家にはなれないと思う。そこで、今回はぼくが作家になった実体験を踏まえた上で、作家になれる簡単な方法を、具体的に考えてみたい。
「作家」の中でも、今回はTweetを元に、特に「ラノベ作家」のなり方について考えてみる。
まず、考えるべきは「何を『お土産』にするか」ということだ。ラノベに限らず作家は、100%読者にお土産を残す必要がある。
では、お土産とは何か?
それは、読者の心の読後にモヤモヤとした思いを残すことである。これができると、作家になれる。逆に、できないと作家になれない。そう考えると、実に簡単なことだ。
では、お土産はどうやったら残せるか?
どうやったら、読者の心にモヤモヤとした思いを残すことができるか?
ここからは、実際の作品を例に考えてみたい。
例えば、大ヒットした『涼宮ハルヒの憂鬱』という小説がある。あるいは『化物語』という小説がある。この2つには、お土産がある。作者(谷川流・西尾維新)は、それぞれ読者の心にお土産を残した。だから、作家になれた。読者の心にモヤモヤとした思いを残したからこそ、彼らは作家になれたのだ。
では、2人はどんなお土産を残したか?
まず『涼宮ハルヒの憂鬱』は、「この主人公の女の子、この後どうなっちゃうんだろう?」と読者にモヤモヤさせた。心配させた。この小説の読後、涼宮ハルヒの今後に思いを馳せなかった読者は、ほとんどいなかったんじゃないだろうか。
それと、多くの読者が「自分もこんな学校に行ってみたい」と思わされた。長戸をはじめとし、こんな人たちと一緒に遊んでみたいと思った。
でも、現実にはそんな学校はない。ハルヒもキョンも長戸もいない。だから、そこのところにもモヤモヤした。
こうしてみると、「お土産」というのが何か、見えてくるのではないだろうか? ここからは、もっと概念化して考えてみる。
涼宮ハルヒの今後が心配になったり、キョンや長戸と話しをしてみたいと思うのは、キャラクターに愛情を感じているからである。ここで、多くの人が勘違いしがちなのは、愛情を感じたのは「彼らが魅力的だから」ではない。性格が顔がいいから好きになるのではない。
それよりも、彼らが心配なのだ。何かの欠落があるから心配になるのである。彼らに何か決定的なものが欠けていて、そこに自分も共鳴する。なぜなら、自分も何かが決定的に欠けていると思うからだ。だから、欠けている者同士、わかり合えるのではないかと感じる。欠けている自分を、ハルヒやキョンや長戸なら分かってくれるのではないかと感じる。
そこが、魅力なのである。それがモヤモヤの正体——すなわりお土産なのだ。
だから、作家になるには「欠落のある人間を描くこと」が重要なのだ。ただし、欠落とは欠点ではない。頭が悪いとか、正確が悪いとか、そういうことではない。
「欠落」とは、「避けられなかった、できれば避けたかった運命」のことだ。一番分かりやすいのは、「親がいない」というようなものである。
実際、世の中の大杙の名作の登場人物は、親がいない。だから、最初は親がいない登場人物の小説を書いてみるのもいい。他ならぬ『涼宮ハルヒの憂鬱』の登場人物も、「親の不在感」が半端ない。特に、長戸の親はいないことがはっきりしている。
不可避的な運命によってもたらされた「心の欠落」を抱えた登場人物たちが、困難な状況に直面したとき、それでも立ち向かっていく物語——それを書くことこそ、作家のすることである。そして、それをすれば、作家になれる。これが作家になる最も簡単な方法だ。
あとは、ディテールを考えるだけでいい。
まず、籠城人物の「心の欠損」は何か?
次に、困難な状況は何か?
最後に、そこでどう立ち向かっていったのか?(克服したのか?)
小説は(ラノベは)、主にこの3つの要素で成り立っている。だから、この3つさえ考えられれば、作家になれる……というわけだ。
ところで、ぼくは現在、「第8回岩崎夏海クリエイター塾」という私塾を開講中である。こちらでは、「作家のなり方」についても、より詳しく講義している。途中からでもご参加いただけるので、ご興味のある方は、よろしければこちらの記事をご覧ください。
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