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作家になれる(具体的で簡単な)方法

こんなTweetが話題になっていた。

ぼくは、こんな抽象的なアドバイスをしても作家にはなれないと思う。そこで、今回はぼくが作家になった実体験を踏まえた上で、作家になれる簡単な方法を、具体的に考えてみたい。

「作家」の中でも、今回はTweetを元に、特に「ラノベ作家」のなり方について考えてみる。

まず、考えるべきは「何を『お土産』にするか」ということだ。ラノベに限らず作家は、100%読者にお土産を残す必要がある。

では、お土産とは何か?
それは、読者の心の読後にモヤモヤとした思いを残すことである。これができると、作家になれる。逆に、できないと作家になれない。そう考えると、実に簡単なことだ。

では、お土産はどうやったら残せるか?
どうやったら、読者の心にモヤモヤとした思いを残すことができるか?

ここからは、実際の作品を例に考えてみたい。
例えば、大ヒットした『涼宮ハルヒの憂鬱』という小説がある。あるいは『化物語』という小説がある。この2つには、お土産がある。作者(谷川流・西尾維新)は、それぞれ読者の心にお土産を残した。だから、作家になれた。読者の心にモヤモヤとした思いを残したからこそ、彼らは作家になれたのだ。

では、2人はどんなお土産を残したか?

まず『涼宮ハルヒの憂鬱』は、「この主人公の女の子、この後どうなっちゃうんだろう?」と読者にモヤモヤさせた。心配させた。この小説の読後、涼宮ハルヒの今後に思いを馳せなかった読者は、ほとんどいなかったんじゃないだろうか。

それと、多くの読者が「自分もこんな学校に行ってみたい」と思わされた。長戸をはじめとし、こんな人たちと一緒に遊んでみたいと思った。
でも、現実にはそんな学校はない。ハルヒもキョンも長戸もいない。だから、そこのところにもモヤモヤした。

こうしてみると、「お土産」というのが何か、見えてくるのではないだろうか? ここからは、もっと概念化して考えてみる。

涼宮ハルヒの今後が心配になったり、キョンや長戸と話しをしてみたいと思うのは、キャラクターに愛情を感じているからである。ここで、多くの人が勘違いしがちなのは、愛情を感じたのは「彼らが魅力的だから」ではない。性格が顔がいいから好きになるのではない。

それよりも、彼らが心配なのだ。何かの欠落があるから心配になるのである。彼らに何か決定的なものが欠けていて、そこに自分も共鳴する。なぜなら、自分も何かが決定的に欠けていると思うからだ。だから、欠けている者同士、わかり合えるのではないかと感じる。欠けている自分を、ハルヒやキョンや長戸なら分かってくれるのではないかと感じる。

そこが、魅力なのである。それがモヤモヤの正体——すなわりお土産なのだ。

だから、作家になるには「欠落のある人間を描くこと」が重要なのだ。ただし、欠落とは欠点ではない。頭が悪いとか、正確が悪いとか、そういうことではない。

「欠落」とは、「避けられなかった、できれば避けたかった運命」のことだ。一番分かりやすいのは、「親がいない」というようなものである。

実際、世の中の大杙の名作の登場人物は、親がいない。だから、最初は親がいない登場人物の小説を書いてみるのもいい。他ならぬ『涼宮ハルヒの憂鬱』の登場人物も、「親の不在感」が半端ない。特に、長戸の親はいないことがはっきりしている。

不可避的な運命によってもたらされた「心の欠落」を抱えた登場人物たちが、困難な状況に直面したとき、それでも立ち向かっていく物語——それを書くことこそ、作家のすることである。そして、それをすれば、作家になれる。これが作家になる最も簡単な方法だ。

あとは、ディテールを考えるだけでいい。

まず、籠城人物の「心の欠損」は何か?
次に、困難な状況は何か?
最後に、そこでどう立ち向かっていったのか?(克服したのか?)

小説は(ラノベは)、主にこの3つの要素で成り立っている。だから、この3つさえ考えられれば、作家になれる……というわけだ。

ところで、ぼくは現在、「第8回岩崎夏海クリエイター塾」という私塾を開講中である。こちらでは、「作家のなり方」についても、より詳しく講義している。途中からでもご参加いただけるので、ご興味のある方は、よろしければこちらの記事をご覧ください。

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