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コロナ禍で若者の読書量が増加 支持を得る作者と作品の傾向

2020年の店頭売上が集計以来初の前年超えを記録した中、「18歳意識調査 第30回―読む・書く―」(日本財団調べ、2020年9月29日~10月5日実施、インターネット調査)によると、コロナ禍の影響で4人に1人が「読書量が増えた」と回答しました。また、よく読むジャンルについては、小説が62.6%、漫画49.9%、ライトノベルが26.0%と続きます(複数回答可)。巣ごもり需要の拡大とともに、若者の目が読書に向き始めているといえます。

そうした今こそ、10~20代の読者に向けて、著者別やテーマ別などに切り口を変えた売場展開をしてみてはいかがでしょうか。その売場づくりのヒントとして、今回は2020年にブレイクし、10~20代の支持を得ている作家2人と作品のほか、若い世代から人気を得ている作品の傾向についてお伝えします。

2020年10~20代の支持を得た凪良ゆう・汐見夏衛

1人目は、2020年本屋大賞を受賞した『流浪の月』(東京創元社)で知られる凪良ゆう氏。ボーイズラブ小説で人気を博し、今や『わたしの美しい庭』(ポプラ社)、『滅びの前のシャングリラ』(中央公論新社)と文芸ジャンルで活躍する作家です。

日販WIN+の購入者の年代比較(図表1)をみても、同年の本屋大賞2位の作品と比べ、10~20代のシェアが3倍以上と、若い世代の読者、とりわけ女性に支持されています。

図表1

2人目は、動画共有アプリ「TikTok」での一般読者の投稿がきっかけで話題となった『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』(スターツ出版)の汐見夏衛氏です。スターツ出版から刊行されている同著者の文庫5作品は、累計発行部数が36万部を突破しています。作品が「TikTok」で紹介される度に販売部数を伸ばすなど、特に10代から人気を集める著者です。

あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。

若い世代への訴求は“共感”がカギ

続いて若い世代は、いったいどのような作品を求める傾向にあるのでしょうか。その問いのヒントになるのが、「LINEリサーチ」による日本全国の高校生を対象にした「読書」に関するアンケートです。それによると、「読書する」と回答した人の5割強が、2016~2020年の本屋大賞上位5作品いずれかの小説を読んでいることがわかりました。

中でも、47.6%の人が読了した『君の膵臓をたべたい』(双葉社)をはじめ、『羊と鋼の森』『かがみの孤城』など10代が主人公の作品が、ランキングTOP10のうち8作品を占めています。自分たちと同年代である主人公が登場する作品は、共感を得られやすいようです。

今回のノミネート10作では、前述の『滅びの前のシャングリラ』のほか、芥川賞受賞作の『推し、燃ゆ』(宇佐見りん、河出書房新社)、直木賞ノミネート作の『オルタネート』(加藤シゲアキ、新潮社)などが高校生が主人公の物語です。この3作品も、前述の『流浪の月』同様、従来の小説作品に比べて10~20代の読者が多い傾向が見受けられます。

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こうした若い世代に人気の作家を軸に、高校生が主人公の恋愛作品や学校が舞台の青春小説、ミステリーや家族小説など、共感を呼びやすい作品はたくさんあります。それらを手掛かりとして、次の一冊へと読者を誘うような仕掛けを施した売場展開を考えてみてはいかがでしょうか。

■本件に関するお問い合わせ
日販 マーケティング部MD課 担当:梅川
TEL 03(3233)4854
E-mail: nippan_md@nippan.co.jp

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