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ロス・プリベンション教育で経営者も働く人もお客様もハッピーに!

万引きなど小売店舗における犯罪防止に取り組む全国万引犯罪防止機構(万防機構)は、日本の小売業にロス・プリベンション(LP)教育を普及させるため、「ロス対策士検定試験」制度を発足させた。第1回検定試験は7月6日に実施され、175人が合格した。欧米ではすでにLPという言葉は広く認知され、調査・研究活動も進んでいるという。ここでは、同試験制度の立ち上げを主導したエイジスリテイルサポート研究所の近江元顧問に、LP教育とは何か、その必要性について話を聞いた。

欧米には広く普及するLPという考え方

――そもそも、ロス・プリベンション(LP)、LP教育という言葉は、日本ではあまり馴染みがありません。まずはこれらがどういう考え方なのか、教えていただけますか。

LPは直訳すると、ロス予防。私はロス対策と翻訳しましたが、ロスを未然に防ぐという考え方です。このロスには、いわゆる万引きや内引きだけでなく、検品や手続き上のミス、不正で発生する損失も含んでいます。このロスの原因を調査・追究し、それぞれに予防・再発防止のための施策を講じることをLPといいます。

LPを実践するためには、まずは現場の従業員に向けた教育、すなわち人材育成が必要となります。それをLP教育と呼んでいますが、そのために私たちは「ロス対策士検定試験」を発足させ、ロス対策を学べる『ロス対策テキスト』も出版しました。こうした考え方はまだ日本では根付いていませんが、欧米では広く認知されており、大手小売企業では上級経営者がロス対策の責任者に任命されています。

ロス対策士テキストカバー 210716

『ロス対策テキスト 2021』
全国万引犯罪防止機構発行、星雲社発売
本体2,800円・ISBN9784434287336
全国万引犯罪防止機構 ロス対策テキスト・ロス対策士検定試験制度 についてはこちら

――万防機構がこのLPという取り組みに注目されたきっかけは。

以前から、LPという考え方については注目していました。具体的に動き出したのは2015年です。アメリカ・フロリダで開かれた「常習万引・集団窃盗未然防止国際サミット2015」に竹花豊理事長らが参加し、万引きなどの盗難被害による商品ロスを未然に防ぐLPという考え方を直接聞き、重要性を再認識しました。その後、2017年3月に東京・有明の東京ビッグサイトで開催された「セキュリティショー」に、アメリカのウォルマートなどの小売企業やセキュリティの専門家を招聘して、万引対策国際会議を開催。そこでも、アメリカでのLPの取り組みなどについて報告していただきました。このロスという問題は、アメリカの大手企業の経営者は株主から厳しく追及される経営課題の一つですので、非常に重視しています。一介の警備員がロス対策の才能を発揮し、取締役に就任したという話もあるほどです。

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