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日販グループホールディングス および 日本出版販売 2020年度 決算報告

2021年5月26日に発表された、日販グループホールディングス株式会社 および 日本出版販売株式会社の決算報告を掲載します。

※日販 ニュースリリース(2021/05/26)

【日販グループホールディングス 2020年度決算報告】

連結経営成績

日販グループ(連結子会社数34 社)の2020年度の売上高は521,010百万円、前年比 101.0%、前年差+5,087百万円と、2012年度以来8期ぶりの増収となりました。

主な要因は、コミックス売上の大幅な伸長と新型コロナウイルス感染症拡大に伴う巣ごもり需要による、取次事業・小売事業の増収です。

営業利益は4,151百万円(前年比167.8%)と増益、経常利益も4,420百万円(前年比181.0%)と増益となりました。増収による売上総利益の増加に加え、返品率削減による取次事業の販売費比率の改善、固定費の削減が貢献しました。

特別利益74百万円、固定資産除却損、店舗閉鎖損失、減損損失等の特別損失793百万円及び法人税等を加減した親会社株主に帰属する当期純利益は2,439百万円、前年比312.2%と、1,658百万円の増益となりました。

事業別では、取次事業が営業黒字に転換し、小売事業・雑貨事業・コンテンツ事業も増収増益となりました。一方で、コロナ影響を強く受けた海外事業・エンタメ事業は減収減益、不動産事業も減益となりました。

詳細は以下PDFよりご確認ください。
日販グループホールディングス 2020年度 決算報告

【日本出版販売 2020年度 決算報告】

経営成績

日本出版販売㈱は、2019年10月1日に持株会社体制へ移行し、日販グループホールディングス㈱に商号を変更しております。従来の日本出版販売㈱の事業の内、子会社管理および不動産管理以外のすべての事業を、簡易吸収分割により新設した完全子会社である日本出版販売㈱に承継しました。そのため、2019年度は2019年10月1日~2020年3月31日の実績となります。

日販の2020年度の売上高は420,151百万円となりました。日販の2020年度の売上高は420,151百万円となりました。

営業利益は、返品率改善による流通コストの削減に加え、固定費を削減したことで、1,014百万円の黒字となりました。

経常利益は1,155百万円、特別利益51百万円、固定資産除却損などの特別損失303百万円及び法人税等を加減した当期純利益は396百万円となりました。

経営成績比較(管理会計)

〈管理会計での2019年度実績の算出方法〉
・2019年4月1日~2019年9月30日
⇒従来の日本出版販売㈱から取次事業のみを抽出し、現在の形に合わせた実績
・2019年10月1日~2020年3月31日
⇒現在の日本出版販売㈱の実績

売上高は420,151百万円、前年比101.5%と、2012年度以来8年ぶりの増収となりました。増収の主な要因は、「鬼滅の刃」の大ヒットと、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う巣ごもり需要が大きな追い風となったことです。2020年度の書店店頭売上前年比は2020年5月~2021年2月まで10か月連続で前年を超え、累計で104.2%となりました。特にコミックスについては129.8%と大幅に伸長しました。また巣ごもり需要は、EC販売の増加にも寄与しました。

コロナ影響は巣ごもり需要という形でプラスに作用した一方で、書籍・雑誌の発売中止や休業店の発生などマイナスの作用も引き起こしました。

昨今のダウントレンドに加えてお取引先の帳合変更などもあり、送品高は減少となりましたが、上記のような店頭売上の回復と、当社の取り組むマーケット需要に基づいた送品施策や低返品・高利幅スキームなどが複合的に作用したことで、送品高の減少を上回る返品高の減少を実現しました。

その結果として、返品率は33.6%と3.1ptの改善となり、特に書籍返品率については28.7%と29年ぶりに20%台の水準となりました。

営業利益は1,014百万円となり、黒字に転じました。店頭売上の好調によるお取引先へのインセンティブ還元額の増加や帳合変更の影響などにより、増収ながらも売上総利益は前年並みでしたが、上記の返品率改善による流通コストの削減に加え、固定費を削減したことで、営業黒字となりました。

経常利益は1,155百万円、当期純利益は396百万円と、679百万円の増益となりました。

しかしながら、かねてより課題となっている出版流通における運賃問題は現在も継続しております。日本の物流全体に起きている運賃高騰に出版物の物流量減少が組み合わさることで効率が悪化し、運送会社は経営難に見舞われています。それにより、運賃値上げや固定運賃比率の増加が発生し、さらなる効率悪化を引き起こしているという構造です。

また、高騰する労働コストを吸収するため、㈱トーハンとの雑誌返品協業を開始するなど、取次会社としての自助努力によるコスト削減を継続しておりますが、依然として課題解決には至っておりません。

送品高に占める運賃の割合である送品高運賃構成比は、現在も上昇基調が継続している状況です。

施策の概況

市場のダウントレンドが今後も継続することが予測されるなかで、当社は、トップライン維持のための施策や、読者と本のタッチポイントを守り・創るための取り組みに注力しています。

〈トップラインの維持〉

〇店頭活性化施策
「鬼滅の刃」「呪術廻戦」に次ぐコミックスのヒット作を店頭から生み出すべく、レコメンド企画「next move」を推進しています。今まさに読者が増えている作品を、全巻アイライン展開で読者に訴求することで、新規読者を増やし継続購読を促進する企画です。全国約500軒の書店様とともに期待のコミックス作品の展開を強化した結果、売上が約1.5倍に伸びたタイトルをつくることができ、全体としては、コミックスの店頭売上前年比を約2pt押し上げることとなりました。今後も、書店様とともにレコメンドに注力し、次のヒット作を創ってまいります。

読者の巣ごもり需要に応えるべく、おうち時間のさらなる充実を提案する売場企画「おうち時間棚」を、全国300軒の書店様で展開しました。「おうちで楽しむカフェごはん」「今こそじっくりおこもり美容」などの各テーマで商品を面陳列した売場を作成し、おうち時間を充実させるための提案を行いました。その結果、企画実施前後で売上が約4倍に伸びた作品をつくることができ、全体としては、実用書の店頭売上前年比を約3pt押し上げることとなりました。引き続き、読者のニーズをタイムリーに捉えた企画を書店様にご提案いたします。

〇マーケット需要に基づいた送品施策
新刊委託商品の初速売上データから、適正と考えられる仕入部数をアドバンスMD(新刊配本申込サービス)の仕組みを通じて書店様・出版社様それぞれにご提案し、効率販売に努めました。また、初回送品のあり方についてもディスカッションを行い、一部の書店様においては配本の考え方を大きく見直す契機となりました。

コロナ禍により、出版社様・取次ともに書店様への訪問営業が制限されるなかで、リリーフA(自動発注サービス)の営業代行としてのニーズが高まりました。2020年度、店頭売上が好調であった学参・ドリルの専用メニュー登録店の売上前年比は、未登録店との比較で約40ptプラスになりました。引き続き、店頭売上を支える注文送品について、自動発注により拡大してまいります。
 
〈読者と本のタッチポイントを守り・創る〉

〇書店様の収益改善施策
書店様の収益改善のため、低返品・高利幅スキーム「PPIプレミアム」を推進しました。2020年度は、出版社様10社と日販グループ書店約130店舗で取り組みました。アドバンスMD、リリーフA等の発注サービスのフル活用に加え、重点取組銘柄、季節・フェア商品の店頭展開強化に取り組んだ結果、10社平均の売上前年比は全国平均差で約10ptプラス、返品率は全国平均差で約8ptマイナス、マージン改善率は5.6%となりました。今後も書店様の収益改善につながる新たなスキームを追求してまいります。

本との親和性が高く、かつ高粗利商材である文具・雑貨の導入促進を行っております。日販グループの文具卸会社である中三エス・ティ㈱との取引が拡大し、日販の文具常設取引店は417店となりました。日販オリジナル雑貨では、2019年12月に文具シリーズを展開した「Greeful(グリーフル)」を筆頭に、「レトロ文具を日常に」がコンセプトの「文具女子博」プロデュースブランド「Old Resta(オールドリスタ)」、「#はじめての万年筆」として万年筆ライトユーザーや、インク好きからの評価も高い「Fonte(フォンテ)」など、ブランド認知向上に取り組んでおります。また、文学作品をモチーフにしたエコバッグを開発するなど、書店店頭でこそ売る意味のある商材開発に取り組んでおります。

〇新たな顧客体験の創出
新たな顧客体験を生み出し、リアル書店の価値を向上させることを目的として、本との出会いの場の創造に取り組んでいます。本と出会うための本屋「文喫」は、㈱岩田屋三越が運営する岩田屋本店内に、「文喫 福岡天神」を2021年3月31日にオープンしました。「本屋と百貨店の融合による、他のどこにもない『学び』」をテーマとした新業態です。老舗百貨店・岩田屋本店による高感度の学びを提供するカルチャースクール「学 IWATAYA(まなび いわたや)」と同一施設内に展開することで、「知って、深めて、体験する」という学びの経験から、本との出会いによってまた新たな興味・関心を拓くという「学びのサイクル」を提供してまいります。

また、既存の販売ルートに留まらず他業種店舗への本の導入を行うことで、人と本が出会う場を拡大しております。2020年度の新規導入件数は148件となりました。

前述の通り、出版流通の持続性が危機的状況にあることに変わりはありません。今後も、出版物を通じて人々の心に豊かさを届け続けるためには、出版流通の構造的改革が必要不可欠です。

2020年度、コロナ禍での書店店頭動向から見えてきたことは、人々の生活の中で出版物がいかに必要とされているかということです。日本全国に、地域の人々に愛される書店があり、その書店に様々な出版物が並び、すべての人があらゆる出版物に自由に触れることができる環境は、人々の心豊かなくらしのために欠かせないものです。

そのため当社は、「日本全国、誰でも本を手に取ることができる書店が身近にある」といった、読者にとって当たり前のことを守るとともに、 街に書店のある風景を守り続けるため、現状の構造を変える「出版流通改革」に取り組んでまいります。そして100年先も、すべての読者に本が届き続ける未来を創ってまいります。「出版流通改革」の詳細については、5月28日よりオンラインにて開催予定のNIPPAN Conference 2021において発表します。

詳細は以下PDFよりご確認ください。
日本出版販売 2020年度 決算報告



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