離陸のとき。
きのう、福岡空港から離陸する時の天気は、雨。
なので機体は、厚い雨雲をつんざくように飛んだ。
飛行機に乗ったときに、一番興奮し、不安と緊張が高まるのは離陸だ。
それまでの速度から一気にギアが上がり、後ろから激しく圧される。と同時に身体が座席に引きつけられ、なにかが破裂しそうな感じがしたかと思うと、お尻の下がぐっと持ち上げられ、機体が空に浮かぶ。
雨雲を貫いた昨日は、飛んだ後、気流が荒く、機体は激しく揺れた。
飛行機の照明が反射したのか、雷だったのかわからないが、真っ暗な窓の外が時々妖しく光り、窓ガラスには斜めになった雨の筋が高速で流れていった。
そのとき、人が離陸するときもこんな感じなのかもしれない、と思った。
あるところまでは普通に歩いていたが、ここぞという局面になると、人は全速力で走り、不安も緊張も希望も引っくるめて飛ぶ。飛んでからも、心や身体はグラグラに揺れ、不安定な飛行になるが、やがて風をとらえて安定する。それは激しいエネルギーの爆発のように感じられる。
僕らが離陸する時につんざく暗雲は、自らの不安や悲しみのなのかもしれない。斜めに入る雨の筋は、こわすぎて流す涙なのかもしれない。
人にはそんなふうに離陸する時がある。離陸とは、いままで歩いていた地面から足を離し、違う空間へ飛翔することだ。
そこにはいつだって激しい揺れがつきまとう。でも、そんな離陸を繰り返すことで、人は真の自分に近づいていけるのだと思う。
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