無知よりも先入観が_

無知よりも先入観が。

著書『FACTFULNESS』が売れに売れているハンス・ロスリングさんのTED トークを観た。

きれいだった。
かつて会社員をしていた頃、エクセルでグラフをつくりながら「これ、アニメになって動いたりしたら楽しいのにな」と思った夢が実現されていた。乳幼児死亡率、平均余命、所得の分布といった統計についての話が、こんなふうにうっとりと観られるなんて驚きだった。

そして、彼の話の中で一番印象に残ったのは、実は冒頭。
5組の国の組み合わせのうち、乳幼児死亡率が高い方を当てるクイズで、スウェーデンの最も成績の優秀な学生の正答率がチンパンジー(ランダムに答えても半分は当たると想定)よりも低かったという話。

「問題は無知ではなく先入観です」とロスリングさんは言った。
例えば、乳幼児死亡率が高い国を支援する場合、まったく知識のない人より、知識があって偏っている人の方が的外れなことをしやすいということ。

同じことは、日常においても起こりうる。
というか、僕らが人間関係で抱えるトラブルの大半に、この先入観が関わってくるような気がする。

「相手はこう思っているに違いない」
そう思ってした言動が、思わぬ衝突を呼ぶ。

「相手はこういう人に違いない」
そう思って接した結果、お互いがしんどくなる結果を生む。こういうことは日常茶飯事だ。

無知よりも先入観の方が始末に追えないのは、それが変わりにくいからだと思う。正しい知識を得るのに、無知の人は「ただ知れば」いいけれど、先入観のある人は「こうだ」と決めつけたイメージを一度、無知まで戻して、そこから新しい知識を入れなければならない。ちょうど、車のギアを一度ニュートラルに戻すみたいに。

この「自分が無知だ」と知ることがいかに難しいか。
それなりに年齢を重ねた人には、わかってもらえると思う。

「世界中のデータを公開して検索可能にしてほしい」と動画の中でロスリングさんは訴える。データをみることで、僕たちの知識をニュートラルに戻せるからだ。彼がやってみせたように、いまは視覚的に美しくそれを伝えることもできる。そうして得た正しい世界の認識に基づいて、自らの行動が決められるようになっているのだ。

あいにくまだ『FACTFULNESS』の方は読んでいないのだけれど、この動画を観てにわかに興味が湧いた。彼がこの本を遺作にしたということも「FACTFUL」な感じがして、いいなと思う。


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