会いたいから

「会いたいから。」

「会いたいから。」

と、うちの奥さんが言ったとき、
時間が止まるかってくらい、驚いた。

たしか、
まだうだるように暑かった
先月のことだ。

「くにちゃんを名古屋に呼んで
 ワークショップを開きたい

彼女は突然、そう言い出した。

以前にも書いたけれど、僕自身は
くにちゃんこと橋本久仁彦さんと、
わりと長いつきあいがある。

2013年に出会って、まる5年。
その間、いろんな場を共にして、
言葉にできないほど
多くのことを教わった。

一方、奥さんと
くにちゃんとの接点は
そんなにない。

二回、いや、三回かな。
とにかく、そんなもんだ。

だからてっきり、
僕に場を開いてほしい、
というのかと思ったら、
どうも自分でやりたいご様子。

彼女が場をひらくのは、
僕の知る限り
はじめてのことだから、
なにかよほどのことが
あったに違いない。

「どうして、いきなり
 くにちゃんの場を
 開きたいと思ったの?」

と尋ねたところ、

「会いたいから。」

の一言が矢のように返ってきた。

それだけ?

「それだけ。」

びっくり。

でも、
なるほどなあと思った。

僕は場をひらくなら、
「円坐」とか「ミニカン」とか
あるいは「聞くこと」とか、

自分とくにちゃんの間に
なにかコンテンツや目的を挟んで
企画にしようとするけれど、

彼女にはまったく
そんな気はないらしい。

会いたいから。それだけ。

用はないけど、
会いたいから、きてね。

そういうことができる人なのだ。

そして、そういうのって、
きっと呼ばれた方も
うれしいんじゃないかと思う。

そんなふうにまっすぐ
「会いたい」って
言われることって、
大人同士の関係には
なかなかないことだから。

その後、
「円坐」も「ミニカン」も
経験していない奥さんは、
案の定、案内文を書くのに
苦労していたけれど、
だからこそ、これは
すごくいい場になると思う。

くにちゃんは、
あらかじめプログラムや
ファシリテートを用意しない
「非構成」を好む人だけれど、
これほどなにをするか、
誰が来るかわからない場も
ないと思うから。

なにしろ、呼んだ本人も
「会いたい」以外に
なんで場をひらいたのか
わからないのだ。

とはいえ、僕自身は、
この場はどうしても
成立させたいと思っている。

そして、たぶん
くにちゃんも
そうなんじゃないかと
思っている。

そういう力が
「会いたいから。」
には、あるのだ。

それ以外なにもない
ということが
最高に魅力的なのだ。

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