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草食ふ人びと。
昨日、僕と奥さんと友達は林にいた。
そこは川の脇にできた雑木林が人の手によって保護された場所だった。うちのそばには公園があって、そこもずいぶん自然ゆたかなのだけれど、やっぱり天然の林は生え方が違う。整理されていない雑然とした繁り方が「生きてるぜ、生えてるぜ」という感じがしてよかった。
道中、奥さんと友達は土に生えている草のことを話題にしていた。その名を呼び、食べられるとか食べられないとか言って、持参していたビニル袋にいくつか入れたりしている。
僕はといえば、草は「草」としか思えないので、代わりに関心のある空や雲や鳥を見ていた。ツバメがたくさん飛んでいて、うちの周りにいる鳥たちより断然速くてカッコ良かった。
奥さんは採ってきた草を写真に撮り、フェイスブックに投稿した。
すると、別の友達が「わたしも好きです!」と返事をしている。草好きはこんなところにもいたのか、と驚いた。
僕はたぶん奥さんと結婚しなければ、そのへんに生えている草を採って、煮たり炒めたり食べようなんて思いもしなかったと思う。でも、味わってみるとこれがうまいのだ。
別々の人生を生きてきた誰かと出会うことは、違う文化のうまさを味わえることだ。時々妥協できなくてケンカになることもあるけれど、今のところ利点のほうがすこし、いやだいぶ優っているように思われる。
それにしても、すごいですよね、草食ふ人びとって。僕は一生かけてもあんなまなざしで草のことは見られないんじゃないかと思います。
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