あれはいつのことだったか

いつのことだったか。
父が私に遠慮するようになった。
「遠慮します」と宣言したわけじゃないけれど、あからさまに私の機嫌を伺うようになった。
そのことに気づいた瞬間はなんだか居心地が悪いと思ったものだが
考えて見ればもう三年以上も一緒に住んでいないのだ。
娘を持つ父親としたら当たり前の変化なのかもしれない。

厳格な人だったわけではない。でも、頑固なところがあったのは確かだ。
一人暮らしを半ば勝手に決めたときも電話越しに淡々と叱られた。
叱る、というより体感的には諌める、といった口語ではないような言葉を
選ぶ方が幾分しっくりくる。

年頃の娘だった私は「カタブツ!」と内心叫んでいたが、何より気に食わなかったのは、正論でしかないからだ。
決して間違ったことをいう人ではなかった。
しかし、好奇心旺盛な私には、そんな性格に面白みを全く感じられなかった。

大人気なかったな、と時々思う。
でもまだ、時々でしかない。

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