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日記 2024.5.18(土) 静かな田舎の山の上。

土曜日。いつもよりもさらに静かな田舎の朝がある。昨日は少し眠るのが遅くなったのだけれど、早起きの方が気持ちがいいからだらりとせずに起き上がってみる。目を覚ますために外に出て洗濯物を干していく。

朝ごはんはお味噌汁と寝かせ玄米。ご飯の上には納豆、なめこ、ミョウガダケの酢味噌和え、梅干しをのせてボリュームを出す。お味噌汁は酒かす入りで、昨日買った白菜とねぎ、お揚げを入れて作った。

今日も食後にお父さんがコーヒーを淹れてくれる。たとえインスタントコーヒーマシーンが淹れた簡易的なコーヒーだとしても、お父さんの気持ちがのっかっているならちゃんと美味しいしうれしい。今日は毎日コーヒーをご馳走してもらっているのでお礼にコーヒーマシーンの掃除をすることにした。こういう小さなやり取りは家族でも、いや家族だからこそすごく大事にしている。恩着せがましく言うつもりはないけれど、さりげなく言葉だけじゃなくお返しをしてみたい。いつもありがとうと言いながらコーヒーマシーンの細かいパーツをぜんぶ取り外して洗い、外に干しておいた。

午前中、お母さんが珍しく朝から畑に出る意欲がありそうなのでわたしも水やりをしに畑に行く。野菜に水をあげてお母さんと一緒にトマトの脇目を取り、芍薬の散った花を落としてからゴールドキウイの木に肥料をあげにいく。ゴールドキウイの木は家の敷地からすこし離れた場所にあるのでお水を大きなペットボトルに入れて持っていく。普段通らない場所を通るから草が腰の高さまで伸びている。お母さんは器用に、いつもそうしているように雑草を踏み倒して道を作って進んでいく。友だちの家に行く近道として昔はよく使っていた道の途中にゴールドキウイの木はあった。押し車とスコップが置きっぱなしになっていて、水の入ったペットボトルも4本草むらに置き去りになっていた。お母さんはいろんなところに道具を置きっぱなしにするのが得意なのだ。
木の周りの草を取っていく。どんなに草が生い茂っていても、少しずつむしっていくとちゃんと地面は見えてくる。家の南側にあるこの場所は草の生育がものすごい。カラスノエンドウもたくさん絡んで伸び放題で種がもう黒くなっているものもあった。
ゴールドキウイの蔓の這う棚がうまい具合に日陰を作ってくれて快適。途中来客があってお母さんが離脱したあともわたしは黙々と草取りを続けた。気持ちよくて汗もそんなにかかない。ちょうどお昼時までで作業は終わった。ゴールドキウイは昨年はたくさん実をつけたらしいのだが何者かに全部食べられてしまったのだそう。去年悔しそうにお母さんが言っていたことを覚えている。キウイの木って田舎ではよく見かけるし小さな頃からうちでもたくさん採れていたからあんまり特別な感じはないけれど、ゴールドキウイとなるとちょっとわたしも放ってはおけないぞ。動物たちもきっとゴールドキウイのほうが好きなのではないかな。

お昼ご飯はそばにする。朝圧力鍋でちゃちゃっと煮た黒豆と、玉ねぎとベーコンのスパイス炒めも作る。そばはゴマだれにつけて食べたら美味しかった。食後に水に浸しておいた玄米を圧力鍋で炊いておく。しゅるしゅると音を立てる圧力鍋の前でうとうとするお母さん。昨日は寝るのが遅かったし畑仕事で疲れたのだろう。縁側の特等席に案内してお昼寝してもらうことにした。静かでおだやかな時間。すやすやと眠るお母さんの横でわたしはお母さんのバンダナの穴あきをダーニングで縫っておくことにした。お父さんに頼んだらフレーベルの星に忙しいからと断られたのだった。久しぶりのダーニング。ぴったりの色の糸がなくて手縫糸を使ってやってみる。糸が細いからなかなかやりにくいけれど、仕上がりはなかなかよかった。むかし高円寺のサントラップという古着屋さんで買ったネイビーのバンダナ。買った時からもう端っこがすこし破れていた。隠すようにして首に巻いたりしていたけれどダーニングで直す手があったか。旅行先でお母さんに貸してからすっかり気に入ってしまったようで、わたしよりも似合っていたしあげたのだった。何かあげてもすぐに使わなくなってどこかにやってしまうお母さんがあのバンダナどこにやったっけなと探していたのだから、結構気に入ってくれているということだろう。補修できてよかった。

お母さんは1時間の昼寝から起き上がり出かけると言って準備を始めた。外から何やら声がする。幼なじみの隣の家の一家がやってきてくれた。どうやら近くのキャンプ場でイベントが行われているらしく行ってきたのだそうだ。お裾分けをいただいた。年長さんの時に奈良から引っ越してきて高校三年生までずっと一緒に過ごした大切な親友。彼女の3人の子どもたちとおばちゃんと、お姉ちゃんも来てくれてにぎやかにイベントの話を聞く。田舎の町の静かなキャンプ場がキャンパーの間で密かに人気になっているらしい。今日はキッチンカーなどが来てにぎやかにイベントが開催されていたらしく盛り上がる様子を写真で見せてくれた。
親友の子どもたちもいつの間にかみんな大きくなっていてびっくりする。誰にでも分け隔てなく接する彼女はいつでもどこでも人気者だった。最近は一年に一度こうして会いにきてくれたりして話すだけになってしまったけれど、彼女の顔を見るとやっぱり安心する。

お父さんが帰ってきてキャンプ場でイベントが開催されているらしいと伝えてみる。それは気になるとのことで3人でパトロールに出かけることにした。
うちから車で10分くらいのところにあるキャンプ場。にぎやかな音楽とたくさんのテントでいつもとまったく違った景色が広がる。すごいねと言いながらキャンプ場を通り過ぎ、展望台へ行ってみることにした。
夕日の展望台はすごくきれい。町内や瀬戸内海、遠く四国の方まで見渡すことができる。近所のおじいちゃんもここへいつも来ているらしいけれど毎日のように来たい気持ちは分かるな。
下に見えるキャンプ場の盛り上がりが展望台の方まで聞こえてくる。静かな田舎の山の中でこんなにたくさんの人の声や音楽が聞こえてくるなんてなんだか信じられない。でもわたしは静かな山の中の方がやっぱり好きだなと思ってしまった。

いつもと違った景色を見ながらの夕方のドライブ、思いがけず楽しかった。帰ってきて夕飯にする。いつもの玄米ご飯にお味噌汁を食べながら、実家の背後に広がる山でキャンプをしている人たちを思った。

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