尾道の料理旅館「竹村屋」
2016年11月、引続き尾道旅行の日記です。
尾道の料理旅館竹村屋本館は、主屋、家門、塀が国の登録有形文化財。
ネットで調べると・・・
主屋:大正9年竣工、建築面積481m2、
東西南北を軸にT字型で棟を形成している、竹材を多用した書院造。
門:北道路に面し、やや西よりに設けられた門、切妻造、銅板葺。
塀:北道路に面する塀、真壁造、瓦葺で、黒漆喰に横長の小窓が付く。
・・・とのこと。
『東京物語』のロケ中に、小津安二郎以下が逗留したことも知られている。
2階は大広間になっており、宿泊客は1階の3室3組だけ。
女将と思しき人に、奥まった玄関付きの部屋に案内される。
因みに原節子が宿泊した部屋とか。
部屋は二間続きの和室、
手前が控えの間で、バス、トイレ、押し入れが付き、
奥が海に面した主室、海側に板の間の廊下があり、
藤の椅子と机が置かれている。
大きな掃き出しのガラス戸の直ぐ外が瀬戸内海、尾道水道だ。
藤の椅子に座り、暫し瀬戸内海を眺める。
窓の外2メートル程が岸壁ですぐ下が海、
間に低木の植え込みがあるものの、
眼下に瀬戸内海の控えめな波が寄せで音を立て、
大きな船に乗っているが如くだ。
正面数十メートル先に向島、左方に尾道大橋、
やや開けた右方の海は夕日が小さな波に反射して白くキラキラと光る。
大型フェリーや観光船が左右に行き交い、
それをぬうように、小型フェリーが尾道と向島を往復する。
広めの部屋は竹を編んだ天井、黒光りする床柱等、
大正9年築をほぼそのまま維持している。
部屋付の中居さんの物腰、丁寧な言葉つきも併せて、
大正時代にタイムスリップした気分。
案内されたお風呂は檜の風呂桶、
2人で入るのにちょうどいい大きさだが、
我々はそんな歳ではなく、一人ずつ交互に入る。
湯上りに浴衣を着て文庫を片手に、再び籐椅子に座って海を眺める。
海に飽きたら文庫、文庫に疲れたら海、を繰り返す。
夕食は懐石料理のフルコース、
二人の中居さんが適度に時間差を置いて運んでくれる。
流石に瀬戸内海の料亭旅館、前菜に続く、鯛、太刀魚、海老のおつくりの
コリコリした触感は、新鮮そのもの、
多すぎるかなとも思いつつも冷酒も手伝って、ついつい食が進む。
最後の揚げ物には手が出ずにスキップする。
食事が終わった時はすっかり日が暮れて、
波の音だけがかすかに聞こえる。
暫し文庫を読んで過ごすが、他にやることもなく、
9時過ぎには良い子の早寝だ。