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海老坂武氏は90歳

 先日の従弟会で姉と会った際、読売新聞7月11日の記事「90歳のシングルライフ」を手渡された。90歳になるフランス文学者、海老坂武さんを訪問して、近況を紹介している。ご自宅は兵庫県芦屋市だ。
 
 当家は海老坂武さんと少なからずの縁があった。昭和30年代、中学生の姉の家庭教師として、現役の東大生だった海老坂氏が来ていた。英語や数学を週に3回教えてもらうのだが、一緒に食事をし、私も諸々の相談ができる、頼れるお兄さんだった。
 
 彼は典型的な文武両道で、東大野球部の中心選手、一貫して1番ショートでそれなりの成績を残している。当時の六大学リーグは立教に長島がいたりして人気だったから、テレビ中継にも時々登場していた。
 
 体型は、特別に大きくはなく、どちらかと言うと細身、感情を露にするような事はなく、淡々として気負いも衒いもない。母はそのへんが気に入っていたようで、姉が無事に入試を終えた後も時々家に招き、彼も気軽に訪れて食事し、たまには私のキャッチボールの相手もしてくれた。
 
 中学生のときに、彼に駒場祭(東大の学園祭)に連れて行ってもらったがある。中学生の男の子の案内など、さぞつまらないだろうとは思うが、そんなそぶりも見せず、丁寧に案内してくれた。当家とのお付き合いは仏文科の大学院時代まで続いたが、その後フランスに留学し、帰国後は大学教授となり、今は長く文筆業をしている。ずっと独身を通している。
  
 海老坂武氏は私より13年上だから、現在90歳。フランス文学、特にサルトルの研究者として知られている。翻訳が多いが、著書も多い。「戦後が若かった頃」「かくも激しき希望の歳月」「祖国より一人の友を」など真面目なものが大半だが、50代で出した軽いエッセイ風の「シングルライフ」が当たり、ベストセラーになった。
 
 記事を読むと、驚く程元気だ。すこし抜粋すると・・・・
 
 ・最近変わったことはありますか
 「身体が変わってきますよ。走ってても足が上手く上がんないとか、・・」
 ・走るんですか!
 「走りますよ。でないとダメになる、と信じて昔は1時間くらいやっていましたが、最近は20分くらい。」
 ・今年出版した「生きるということ」(みすず書房)でモンテーニュの{自分以外とは結婚してはいけないのである}という言葉を紹介していました。
 「自分のことを第一に考え、自分以外の人の意見にたやすく従っちゃいけないと言うことじゃないですか。」
 ・海老坂さんもですか?
 「僕もエゴイストですからね(笑)」
 ・本の最後に紹介していたのが{時間を大切に使おうではないか}でした。
 「僕は歳を取るほど、物を書くのが楽しみになってきたんです。昔は苦痛だったんだけれど。ほかに楽しみがなくなってきたということかもしれない。」

どう見ても私よりお若い!

 歩くのも怪しげな我が身からすれば、20分走るなど、夢のまた夢。記事に載っている写真は、豊かな白髪で屈託のない笑い顔、癪だがどうみても私よりお若い!

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