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十七年物のウイスキー

 2019年3月の日記です。
 
 以前、黒木亮の経済小説にはまったことがあった。
最初に読んだのは、2008年出版の「エネルギー」、
日本の商社がサハリンガス田の開発に絡むなど、
経済小説のリアル感があり、新鮮味もあって一気に引き込まれた。
なるほど、と納得し、何冊か続けて読んだ。
 
 2012年の「鉄のあけぼの」出版後、
某鉄鋼会社(物語の舞台の会社)で彼の講演があり、
半分義務で聞きに行き、その後軽い立食のパーティーがあった。
彼が会場の中心から外れて一見つまらなそうだったので、
声をかけて少し話した。
 
 彼は「鉄のあけぼの」の印象を聞きたかったようだが、
正直、内容が個人の神格化でリアル感がもう一つだったので、
話題を変えて、「冬の喝采」を持ち出して暫し歓談した。
「冬の喝采」は彼が早稲田大学時代に箱根駅伝で走った
自らのノンフィクションで、一連の経済小説とは全く異なる。
 
 昨今読んだなかでは、「巨大投資銀行」が面白かった。
日本人とアメリカ人、イギリス人の3人が
ウイスキーの蒸留所で
十年物と十七年物を飲み比べる一コマ・・・
 
「十七年物はずいぶん円やかだな」とアメリカ人。
「うむ。ウイスキーというより、ブランデーに近い」
 
「十年物の方がスモーキーだ」とイギリス人。
「円やかさはないが」
 
「熟成するにつれ、味も香りも
ピュア(純粋)になって行くということか」
「歳月と共に得るものと失うものがある。
・・・・人生そのものだな」
藤崎の哲学者のような言葉に、残りの二人が頷いた。
 
 今、自分は人生の終盤にさしかかり、
17年物どころではない、云十年物だ。
長年、得たものも失ったものも多々あるが、
残念ながらピュアになったとは思えない。
いまだに心を満たす何かが足りない気がするが、
そんなことではまだまだか・・・
 
 でもまあ、今日昼に食べた寿司は美味かったし、
夜は赤ワイン(フランスシャトーフィネ)を呑む。
明日の夜は東京に出張、人形町で和食だ。

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