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御嶽の料理旅館

 2013年9月の日記です。
 
 3連休の初日、いつもの奥多摩の某日本旅館へ向かう途上、
ついで・・・ではあるが、途中下車して、墓参りをした。
花を供えて墓石に水をかけ、
よくぞ便利なところに墓地を確保したくれたと、
父に心を込めて感謝した。
○○家7代目としての一応の義務は果たしているつもりだが、
孫の代に女の子しかいないのが若干気になる。
 
 御嶽の河鹿園は何時もの如く期待に違わず、すばらしい。
多摩川上流の清流に臨む急傾斜に建てられた
10メートルほどの高低差のある3件の離れ家が
主たる客室になっている。
昭和初期の純和風の建物は建具、取手に至るまで、
そのまま丁寧に維持し、レトロ感たっぷり。
 
 窓から眼下30メートルほどを流れる多摩川の急流が、
あちこちで、巨石に当たってザーザーと音をたて、
砕けて白い泡となり、
藍色の清流と際立った表情を見せている。
20メートルほどの川幅の向こう側には、
薄緑の葉に覆われた銀杏の巨木が
白壁、大屋根の玉堂美術館を半分ほど隠し、
上方は深緑の山並みが幾重にも重なっている。
 
 夕闇迫るころ、ガラス戸に面した食卓で
ゆったりとした食事が始まる。
やや薄味、量も控えめで(初老の?)我々にちょうどいい。
ご主人が薬膳だと説明してくれるが、
確かにそれらしい食材で構成されている。
彩りも鮮やかで、目と舌の両方で楽しめる。
冷酒は氷水に冷やされ、最初はおしろい花が、
二本目は海棠が添えられている。
 
 翌朝、朝食後、暫し中庭を望む廊下の椅子に腰掛け、
前回来たシングル目白を待ったが、姿を現さなかった。
婿養子にでも行き、テリトリーを変えたのであろうか。
当家の孫娘にも・・・と思わぬでもない小旅行だった。

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