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大径管工場の建設 12.新設備稼働

 新設備のホットランが成功し、更に諸々の準備を終えて、計画通りに現設備を休止して2週間程の工事で新設備に切り替えた。休止期間は最短の2週間、コンクリートの打設をする余裕はないから、事前に様々な工夫をして全て機械と電気で工事を行い、配管、配線、試運転調整を終えて、新ラインでの生産を開始、晴れて新大径管工場が稼働開始した。
 
 当然のことながら、立ち上がり時はトラブルの連続だった。細かいトラブルは保全マンが対処してくれるが、大きなトラブルには建設チーム(つまり私)が主体になり、場合によってはⅠ社などメーカーの協力も仰いで対応した。
 
 稼動して2週間程経過したころ、チーム長の山上課長が、熱海一泊の懇親旅行を発案し、全員で行くことになった。会費は5千円と格安、山上課長がⅠ社と交渉した・・・・らしい。ところが、旅行前日の夜、工場の機械保全の責任者から私に電話があり、プラグミルのロールの昇降装置が動かずに、すでに10時間程ラインが止まっている、ついては今から出社して対応して欲しい、とのこと。
 
 それは大変だと直ちに車を運転して出社した。現場に行くと昇降装置が取り外されていて、分解整備中だった。一度同じことしたが、動かないので、再度整備しているとのこと。そんなことを繰り返しても解決するとは思えず、直ぐに組み立てて本体に組み入るよう依頼し、並行して電機保全にシーケンス変更を依頼した。油圧シリンダーの動きを変更して機械抵抗を減らせば楽に動くはずだ。
 
 機械の組み立てを待つ間にシーケンス変更を終えて、組み入れて試運転すると順調に動く。それに応じて私自身が油圧回路を調整して、無事に稼働を再開したのは翌日の昼過ぎだった。土曜日だったが、設備工事全体の責任者、つまり山上課長の上司、小山室長が朝から会社に来て、現場で私が油圧調整しているのをじっと見ていて、最後に私に保全マンに調整方法を教えるよう、指示した。
 
 話しは少々脱線するが・・・・稼動再開を確認して夕方帰宅した。朝から何も食べていないが、その日は我チームの熱海懇親旅行の日、山上課長以下全員が熱海に行っているはずだ。夜は豪華食事と美酒が待っているから、行かねばならないと直ぐに車を運転して出かけた。後から思えば前夜寝ていないから危険極まりない。当然行くべきではないのだが、豪華食事と美酒が頭から離れない。
 
 道が混んで時間がかかり、宿に着いた時は夜の8時過ぎ、勇んで宴会の場に行くと・・・・とっくに宴会は終わり、誰もおらず、食べるものは何もない。全員で2次会場に行きバカ騒ぎしている。時間が時間であり冷静に考えれば当たり前と言えば当たり前だ。私が来るとは誰も思ってもいないし、期待してもいなかったようだ。寝室に行くと夜食用のおにぎりが置いてあったので2,3個食べた。誰も悪くはないが、何故か悔しくて涙が浮かんできた。

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