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夜間操業

 東日本大震災後の日記を続けます。
 
 当社の工場は震度6弱だったが、幸い人的被害はなかった。
設備も、定期修理中で溶解炉を休止していたこともあり、
目立った設備被害はなく、支障なく稼働できる。
 
 ところが、日曜日に東電から計画停電が発表された。
毎日昼間に一定時間停電する、
停電の時刻は地域により異なるが、事前にお知らせするとのこと。
溶解炉の操業には、準備や後始末などに数時間かかるので、
昼間の計画停電時間を避けると、殆ど稼働できない。
当社の商品は、被災地の復興に必須だし、
在庫は限られているから、早急に製造しなければならない。
 
 月曜の朝、工場の主だった人を集めて、
計画停電を避けるためには夜間操業しかできないので、
夜の22時から早朝の6時20分までの操業とする、
と説明し、準備の出来る水曜日から夜間操業をすると伝えた。
昼過ぎに事務所の管理者、現場の監督者、
更に請負会社の実務責任者を集め、直接説明する。
 
 その後、組合役員を呼んで正式な申し入れを行うと、
事情が事情だから基本的には了解だが・・・
 
組合:いつまでか?
回答:わからない、計画停電が続くかぎりは夜間操業をする。
組合:計画停電が終了すれば、直ぐ昼間に戻すのか?
回答:それもわからない、当社のような電力多消費工場が
全部昼稼働すれば、計画停電に戻ってしまうかもしれず、
東電と相談することになる。
組合:人は、朝起きて夜寝るように出来ている、
回答:(そんなことは分かっている、当たり前なことを言うな、)
・・・とは言わなかった。
 
 結局、急な夜間操業だから、物心の準備が必要だろうと、
全員にいくらかのお金を出し、組合の手柄を演出するとにした。
 
 兎も角、水曜日から夜間操業に入った。
今のところ、無事に操業しているが、長期戦になるだろうから、
最初の緊張感が薄れる頃の体調不良や事故が心配だ。
自ら背中を見せようと、来週から適宜夜中の巡視をする予定だ。
 
 
 追:2週間後、昼間の電力供給に見通しがつき、夜間操業は終了、
   兎も角、被災地への資材供給を間断なく続けることができた。

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