兼題は、「座る・座す」
日曜日の早朝に、NHK俳句が放映される。俳句はたったの17音で、読み手の想像力を掻き立てる深みのある表現を求められる。江戸時代の松尾芭蕉以来、約350年の歴史だが、未だに新たな言葉の組み合わせで新鮮な俳句が作られっているのには驚くばかりだ。
先日のNHK俳句の司会はいつもの柴田英嗣さん、選者はお馴染みの高野ムツオさん、見かけはさえない(?)普通のオジサンだが、話しは分かりやすく、なかなか面白い。兼題「座る・座す」で句会が行われた。メンバーは、高野ムツオさん以外に、成田一子・福田若之(以上俳人)・中西アルノ(仁木坂46のメンバー、21歳)・伊集院光、の5名が自作の句を発表し、作者名を隠して各人が自分以外の人の句を評価する。
評価の結果ベストは、なんと、21歳の中西アルノさんの、
「泣かないでと隣に座る櫟(くぬぎ)の実」 中西アルノ
中野アルノさんいわく、「ベンチで泣いていたら上から櫟の実がおちてきて泣いている私を慰めてくれるとの情景だけれど、子供のころお家で1人鳴いていた時、人形がこちらを見ている気がしていたこともある。」とのこと。
人により色々な解釈あり、俳人の成田一子さんは、泣いているのはお母さんで、子供が自分の宝物の櫟の実をお母さんに渡して泣かないで言う場面を想像したとのこと。
僅差の次点は、選者の高野ムツオさんの
「名月を待つ虫籠の中に座し」 高野ムツオ
高野ムツオさんいわく、「最初は自分が虫籠の中に座っているつもりだったが、詠むうちに虫籠の中の虫と自分が一体になっていった。想像が多様に広がり過ぎるのがこの句のむずかしいところ」だそうだ。
参加各人の言は・・・
秋の月がすごく美しい時は虫がよく鳴くイメージ
虫籠という閉鎖的な空間で今か今かと名月を待って
いつ鳴いてやろうかと企んでいる虫が面白い
虫籠の中に座って早く月が出てこないかな、いい夜に鳴きたい
虫籠の虫は今のところ静かにまっている
私なら、この句が特選。虫籠の中で彼女と二人で月が出るのを待っている、本音はずっとこのまま月は出なくてもいい・・・・のです。
次の句が同点で3位
「秋灯に坐しゴリラめく父の影」 成田一子
「雨を聴くふたり鬼灯(ほおずき)のなかに座り」 福田若之
ゴリラめくとの表現が面白いが、自分はもっと優しい(はずだ)。ほおずきの中に座る二人は幼い姉妹だろうか。それぞれ味があるし、想像が膨らむ。
句会とは別に、同じ兼題で全国から応募された作品から選ばれた、ベスト3が以下の3句です。
一席 ガザの子の 瓦礫の上に 座す真夏 石井茶爺
二席 今日も君の 後ろに座る 夜学かな 前田恵美
自分でも彼女の後ろ(横ではない)に座りそうだ。
三席 座すままに 車椅子より 踊りの手 犬山裕之
数年後の自分かもしれない、その時躍る気分になれるか、自信はない。