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【オープンレター】署名者を雑に分析する【#againstc】

 オープンレターの署名者を検索するツールをつくったのだが、いまいちうまく活用されている感じがしない……というのもおそらく、ADVANCED 検索の具体的な使い方がわからないのかもしれない。
 よって、具体的な検索事例を紹介しつつ、ざざっと分析っぽいことをしてみる。

前提情報

 2種類の検索手段が実装されている:①キーワード検索 と ②正規表現による高度な検索 である。キーワード検索については、特に述べることはない。入力された文字列と一致する文字を名前か肩書きに持つ署名者をピックアップして表示するだけである。

検索方法の切り替え方
KEYWORD と ADVANCED をタップして切り替える

 正規表現による高度な検索とは、フォームに「文字列リテラル」を入力することで正規表現をクエリに渡して検索することものである。正規表現については、こちらのページが詳しい:

検索の具体例

1.教授・准教授・助教授・その他

 /[^助准]教授/ で調べると163人が該当する。これは、「 "助" あるいは "准" を含まず、"教授" と云う文字列が含まれるひとを探す」という正規表現(クエリ)である。

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 なお、「助教」で調べると31人、「准教」で調べると151人(!)が該当する。

 このくらいの人数ならということで一人一人眺めていると、呼び掛け人ではないが熱狂的・肯定的にオープンレターを評価している植村恒一郎 氏(群馬県立女子大学名誉教授)も署名していたことがわかる。イヤな予感はしつつも「名誉教授」で改めて検索してみると、なんと8人も該当者がいた。
 
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 ここで名を上げるのは憚られるが、あまりにも軽率というか、そのような身分を得てもなお闘争に明け暮れる心中を察して、余りにも暗澹たる気持ちである……

 また、「客員教授」(6人)「特任教授」(3人)も存在することがわかった。人文社会系アカデミアの職位事情については詳しくないのだが、非常勤講師とほぼ同じ扱いで給与が違うという理解でいいのだろうか?
 
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上記を総括すると、まさしく「教授」職を得ている人でオープンレターに署名した人は 147人 であることが判明した。
 
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 実に、オープンレター署名者の10人に一人以上が、大学・大学院・その他研究組織の「教授」という職位についている者であることがわかった。端的に言えば、あまりに非情な結果だと言えよう。

2.講師・教員・指導員

教授ほど確たる地位ではないにしても、学生を指導する立場にある人はどのくらいいたのだろう?「専任」やら「特任」「兼任」「非常勤」などさまざまな形態があるようだが、肩書きに「講師」を含む人は 134人 存在したようだ。興味深かったのは、大学講師だけでなく、予備校講師や中学・高校の講師まで賛同していることだ。頭オープンレターな指導を中高生にもおこなっていると考えると背筋が凍る思いである……
 「教員」ともなるともっと薄ら寒い心地がする。これが小中高校であれば、特に違和感なくヒラの教員、すなわち先生なんだろうなと素直に受け取ることもできようが、肩書きに「大学教員」とだけ置くのは一体どういう機序なんだ?
 
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 小中高校の教員は少なくとも教員免許を得て教員採用試験に通った上で「教員」になっているわけだが、大学教員とはあくまで「大学における教員」の総称であって「大学教員」などという職位は無いはずではないか?すなわち、教授・准教授、助教・助手・講師など、なんらか与えられた職位に関する名称があるはずにも関わらず、それを隠蔽する意図があって「大学教員」と掲げているのではないか?

 あるいは、ここに水増しのニオイを感じていたりもする。自分の本名で署名するのだから職位なんてバレて当然というか公開しているも同然なのに、何故か「大学教員」というようにスコープを広げているのだ。そりゃあ「錚々たるメンツと比べたら(非常勤)講師の自分なんて……」という気持ちがあって、それを隠すために大学教員という当たり障りない表現を選んだのかもしれない。が、悪意ある第三者が職位とかよくわからんけど「大学教員」であることは確実だしバレないやろ!といって水増しを企図していてもおかしくはない。
 少なくとも大学関係者であることがわかっている人々については、一人一人インタビュー調査でもやって「本当に署名したのか」を明らかにしておく必要性があるような気がしてくる……

3.編集・出版・ライター

研究組織以外で目につくのは、出版系の人々だろう。が、意外にもそこまで多くなく、該当者は100人に満たない程度であった。
 
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 特徴的なのは、「編集者」「フリーライター」など、何らかの組織を掲げるのではなく個人を強調している傾向が強いところだろうか。飾らない強さというか、確たる意志を持って署名したというのが感じられる。また、パッと見でしかないが、男女比が大きく偏っているように見える(圧倒的に女性が多い)。
 アカデミアと直接の関係はそこまで無いであろう彼らが敏感に反応したのは、おそらく「女性差別」の文脈を感じ取ったこと、加えて横のつながりでの連帯を発揮したのではないだろうか。ここで注意すべきは、これらの該当者は署名者全体からすると1割にも満たない一方で、呼び掛け人18人のうち半分は編集やら出版やらを担う人々であったことであろう。狭い業界のインフルエンサーが「正義」を掲げて署名を呼びかけ、木端な文芸人たちが〈社会的な利益はあっても不利益はなかろうという打算〉のもとに乗っかったというのが実情だと感じた。

4.学生・大学院生

 敢えて個別に取り上げるのは可哀想だと同情しつつ、一方でその軽率さを今後も反省すべきとの考えから、学生についても調べてみる。
 
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 学部・大学院すべてひっくるめて132人が署名していたようだ。単に「大学生」とだけ書く人もいれば、「東京大学大学院総合文化研究科博士後期課程」などと誇ったように書き殴る意識他界系バカもいる。
 まぁ当然と言えば当然だが、一目で理系とわかるような所属で署名している学生はほぼ居なかった。辛うじて情報系が一人、生命環境系が一人いた程度で、あとはすべて「人間」「社会」「芸術」「文化」といった文字が踊っている。

5.非アカデミックかつ非・出版

 最後に、出版系でも大学研究系でもない人々はどのくらいいたのかについて調べてみる。すなわち、「学」「研」「編」「版」「評」「翻」「書」「教」「講」「導」および「ライター」を含まない人々は、240人だそうだ。裏を返せば、アカデミア+出版系の人々で約1000人(比率は9:1くらい)を占めることになる。
 
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まとめ

 取り敢えず、人々が関心あるであろうクエリについて調べてみた。そこまで深く調べる余裕がなかったので表面をさらっただけにすぎないが、署名者検索ツールを活用すれば、各大学ごとの署名者を調べるとか大学関係者に絞って深掘りするとかも可能である。

 結果をエクスポートして保存するのは、ファイルばかり増えてイヤだろうと思う。しかし、画面下部の「COPY」を選択すればクリップボードに署名者一覧がTSV形式でコピーされる。これをこのままスプレッドシートにペーストすれば、綺麗にセルに分かれて貼り付けられる。さらに詳細な分析はぜひそちらでやってみてほしい。
 あるいは強力なインフルエンサーが共有スプレッドシートを公開してくれれば、支援者がそこに群がって凄まじい勢いでデータクレンジングしてくれると思うのだが……まぁそこには手をつけないでおく(例えば署名者とその性別、Twitterアカウント、信頼できる情報源へのリンク[reserchmap 等]、肩書きの正規化、などについては、一人でやるよりは手分けしてやったほうが早いことはわかるだろう)。

こぼれ話

 検索が云々と大仰なことを言っているが、実際には署名者1300人に対してFORループさせて文字列一致を見ているだけである(これが1000オーダーだから機能しているだけであり、もっと増えていたらぜんぜんスケールしないゴミカス実装であるともいえよう)。
 が、その分サーバへの依存は皆無で、すべてを JavaScript と JSON データで賄っている。そのため魚拓されても機能する……かに思われたが、js が動く魚拓はないらしい(残念)ので、あんまり魚拓する意義もなさそうだ。代わりに、GitHubリポジトリはいくらでもクローンできるので、こちらを活用してほしい。

 さらにおまけ: GitHub のリポジトリは、一定数のスターを得ているものに限りそれらを全て超長期保存が効く記録媒体に焼いて北極圏に埋め、今後1000年以上保管される(かもしれない)可能性がある(参考:Arctic Code Vault Project)。署名者の名前と肩書きを千代に八千代に遺したい各位におかれましては、ぜひとも上記リポジトリにスターをつけてくださると幸いです笑

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