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LGBT

LGBTとは、レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダーの頭文字をとって組み合わせた言葉で、セクシュアルマイノリティ(性的少数派)を表す言葉の1つとして使われています。
ひと昔前では、身体的性別が男性なら、自分を男性だと認識し、性的な興味や魅力を感じる相手は女性、身体的性別が女性なら、自分を女性だと認識し、性的な興味や魅力を感じる相手は男性という認識が世間一般的に常識となっていました。
そのような世間一般的な常識があったので、このような常識から外れるセクシュアルマイノリティの方々には様々な偏見があり、非難されたり、いじめにあったり、人間関係から切り離されたりと社会で生きていくうえで、様々な困難が生じていたようです。
現在、メディアや新聞、様々な情報で、LGBTの事が話題になり、性の在り方には多様性がある事が、世間に流布されるようになり、セクシュアルマイノリティに対しての正しい理解と知識の啓蒙活動が行われていますが、未だに、偏見や差別はなくなっていない状態です。
電通ダイバーシティ・ラボ(LGBT調査2018)の日本におけるLGBT層に該当する人の割合は、8.9%であるという調査結果が出ています。この8.9%という数字は「AB型の人」や、「左利きの人」と同じくらいの割合です。この数字を見ると、自分たちの周りにもかなりの数の方が存在している事が想像できます。しかしセクシュアルマイノリティの方に対して、偏見や差別がなくなってない現在では、カミングアウトをする事を恐れたり不安になったりして、オープンにする人は少ないと言われています。このような偏見や差別を減らしいく為には、社会で生活する人々が正しい知識をつける事が大切になると思います。

今回、LGBTに関する理解を高めるために「知らないでは済まされないLGBT実務対応Q&A」という本を読んだので、セクシュアルマイノリティに関する内容を投稿したいと思います。

性の構成要素

従来の性のあり方に対する意識は、人の性別は女性または男性に明確に分かれており、女性は男性に、男性は女性に恋愛や性愛の感情をもつものが自然であると理解されてきました。
しかし、今日では性のありかたは多様性をもつものと理解されています。
この多様性とはどういう事を表しているのでしょうか。多様性を構成する3つの性の構成要素を説明していきたいと思います。

①    身体的性別
身体的性別とは、生物的な性別を意味し、性染色体。生殖腺、ホルモン、内性器、外性器等生物学的に見た性的特徴を表します。

 ②    性自認
性自認とは、性別について、他者から規定されるものではなく、自らがどのようなアイデンティティを有しているかという概念であり、自らが男性と女性のどの性別に属しているか、あるいは属していないかという認識の事を指します。
「自分は女性である」「自分は男性である」「自分は女性と男性の両方である」「自分は女性と男性どちらでもない」といったように、身体的性別にかかわらない、自身の性別に関する個々人の認識の事で、「心の性別」とも言われます。

 ③    性的指向
性的指向とは、性的な興味や魅力、関心の対象がどの性別に向かうか、あるいは向かないかという概念の事を指します。
一般的には、異性に対して性的な魅力や関心をもつ人が多いと言われていますが、同性や両性に対して性的な魅力や関心を持つ人々もいます。一方で、いずれに対しても性的な魅力を感じない人々や、性別といったセクシュアルマイノリティにとらわれず、全ての人々に対して性的な魅力を感じる人々もいます。

 性のありかたは、身体的性別のみで他人から判断されるものではなく、上記のように性の構成要素は多様であり、性のありかたはそれらが組み合わされたものですので、女性または男性しかないといった二分的な把握の仕方が不適切であるという事が分かると思います。
また、性の構成要素の個々の要素についても、人によって濃淡あるいは強弱があり、個々人によって異なります。性自認が男性であると認識している人を例にとれば、自分は100%男性であると認識している人もいれば、どちらかと言えば男性だが、女性的と感じている部分もあるという人がいます。
性的指向が異性である人々の中にも、自分は100%異性に性的魅力を感じるという人もいれば、70%程度は異性に性的魅力を感じるが、30%は同性に性的魅力を感じるという人もいます。
性の構成要素それぞれについて、濃淡や強弱があることからすれば、そもそもそれらに明確な境界があるわけではないと考えられ、性のあり方は無数に存在するとも言えます。
このような考え方を「性のグラデーション」と表現されます。 

セクシュアルマイノリティ LGBTとは

LGBTとは、セクシュアルマイノリティ全体を表すものとして、今や日常的に耳にしたり、目にしたりする言葉ですが、もともとは、レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダーのそれぞれの頭文字をとったものです。
レズビアンは性的自認が女性であり、性的指向が女性に向くセクシュアリティ、ゲイは性自認が男性であり、性的指向が男性に向くセクシュアリティ、バイセクシャルは女性と男性のどちらも恋愛感情・性愛の対象となるセクシュアリティの事を言います。
トランスジェンダーは、身体的性別と自認する性別が一致しないセクシュアリティの事を言います。 

LGBT以外のセクシュアルマイノリティ

LGBTはあくまで、セクシュアルマイノリティの総称であるため、実際にはレズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー以外にもさまざまなセクシュアルマイノリティは存在します。
例えば、アセクシュアルとは、他者に対して性的欲求も恋愛感情も抱かないセクシュアリティです。パンセクシュアルとは、女性や男性といった性別にとらわれることなく、性別を決めていな人やあいまいな人を含めて、性的な魅力を感じるセクシュアリティです。性愛の対象の性別にとらわれていない点で、バイセクシャルとは異なります。
また、性自認に関して、Xジェンダーあるいはエイジェンダーと呼ばれる、男女のどちらにも性自認をもたないセクシュアリティの人々もいます。
さらに、まだ自らの性自認や性的指向がはっきりしない、あるいは揺れ動いている、クエスチョニングと呼ばれるセクシュアリティの人々もいます。

セクシュアルマイノリティは特別ではない

古くは、同性愛が精神疾患とされた時期もありましたが、現在では、世界保健機関やアメリカ精神医学会、日本精神神経学会などは、同性愛を精神疾患とみなしておらず、ゆえに治療の対象ではありません。
また、トランスジェンダーの中でも、身体的性別と性自認とが一致せず、自ら身体的性別に持続的な違和感を持ち、時には自身の身体的性別を自認する性別に近づけるため性の適合を望む事さえある状態を性同一性障害と呼び、医学的な疾患に位置づけられていたが、2019年世界保健機関の総会で了承された「国際疾病分類」では性同一障害が「精神障害」の分類から除外され「病気」や「障害」でないことになりました。

 現在、LGBTという用語を使用する事が適切ではないのではないかと議論されています。LGBTなどのセクシュアルマイノリティを総称する用語を使用する事で、セクシュアルマイノリティとそうでない人々とをさらに区別することにつながります。
この点、近年では「SOGI」という用語が使用されるようになってきています。
「SOGI」とは性的指向(sexual orientation)と性自認(gender identity)の頭文字をとったもので、全ての人が生まれながらに有している性自認と性的指向に着目して個々人のセクシュアリティを論じるべきであるとの考え方をもとに生まれた言葉です。したがって、「SOGI」はセクシュアルマイノリティを総称する用語ではありません。
元来、マジョリティとされてきた異性愛者や身体的性別と性自認が一致する人々も、多様なセクシュアリティの1つに過ぎず、セクシャルマイノリティとされてきた人々は、性自認あるいは性的指向に違いがあるにすぎません。そうだとすれば、セクシュアルマイノリティについてのみ特別な用語を用いる必要性もないと考えられます。
むしろ、元来マジョリティとされてきた人々をも包括する「SOGI」という概念をもとに、個々人のセクシュアリティの多様性を理解し、セクシュアリティいかんによって、差別されたり、偏見にさらされたりするなどの不当な扱いを受けない社会を構築すべきとする考え方が広がりをみせつつあります。

日本国内の法律

ここで、セクシュアルマイノリティに対する法律関係も少し触れたいと思います。
(1)性同一性障害者の性別の取り扱いの特例に関する法律
平成15年7月16日、性同一性障害の性別の取り扱いの特例に関する法律が成立しました。
この法律によって、性同一性障害者について、性別適合手術などによる「生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること」という内容を含む一定の条件において、戸籍上の性別を変更する事が出来るようになりました。
この性別を変更する事で、法令の規定の適用について、法律に別段の定めがある場合を除き、その性別につき他の性別に変わったものとみなされます。法令上、変更後の性別で社会生活を送る事が出来るようになります。 

(2)差別解消に向けた法制化の動き
LGBTの差別解消に向けた法制化について、日本国内でも動きがあります。
現在、「性的指向又は性自認を理由とする差別の解消等の推進に関する法律案」が衆議院に提出されています。これは差別解消を推進するための方針・計画などを定め、行政機関や事業者が差別的取り扱いを行う事を禁止すると同時に、雇用の際の均等な機会を提供し、ハラスメントを防止する事、学校などでいじめなどが行われることがないように取り組むことなどを定めたものです。
そして、アウティング(LGBTなどセクシュアルマイノリティである事を、本人の承諾を得ずに、第三者が勝手に他人に言いふらす行為)に関しては、令和元年に成立した「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律等の一部を改正する法律案(女性活躍推進等改正法)の付帯決議において、パワーハラスメント防止対策に係る指針の策定にあたり、包括的に行為類型を明記する等、職場におけるあらゆるハラスメントに対応できるよう検討するとともに、職場におけるあらゆる差別をなくすため、性的指向・性自認に関するハラスメント及び、性的指向・性自認の望まぬ曝露であるいわゆるアウティングも対象になり得る事、そのためアウティングを念頭においたプライバシー保護を講ずることを明記する事とされました。

地方自治体の取り組み

(1)   同性パートナー証書等の発行制度
現在、日本では同性婚が認められていません。その一方で、性の多様性に配慮した地方自治体の活動も広がってきています。
東京都の渋谷区と世田谷区は、平成27年に同性パートナーに関する証書を発行する制度を開始しました。
渋谷区は、渋谷区男女平等及び多様性を尊重する社会を推進する条例を制定氏、公正証書の作成等を要件として、男女の婚姻関係と異ならない程度の実質を備える戸籍上の性別が同一である二社間の社会関係を「パートナーシップ」として、証明書を発行しています。
世田谷区では行政内部で策定できる非権力的な要綱により、同性パートナーの宣誓書に収受印を押したものを交付しています。

パートナーシップ契約をする事で、婚姻の場合と類似した法律関係を構築する事が可能です。例えば、同居・協力・扶助義務、貞操義務、生活費をどのように分担するかなどと言った点は、婚姻の場合と類似した法律関係を構築する事が可能です。
その一方で、同性パートナー同士が親族関係になる事や、氏を同じくすること、相互に相手方の相続人なる(遺言書を作成する事で対応は出来る)ことについては、パートナーシップ契約によって、婚姻と同様もしくは類似した法律関係を構築する事はできません。

また、パートナーシップ証明制度条例の趣旨・目的(区内の事業者にはパートナーシップ証明を最大限配慮する義務が課せられている)に著しく反する行為を行っている事業者に対して、区民や事業者には区長に対する苦情の申し立て権が認められていています。苦情の申し立てがあった場合、区長は必要に応じて、調査や相手方である事業者等に対する指導を行い、これに従わず条例の趣旨・目的に著しく反する行為を引き続き行っている場合は是正勧告を行う事ができます。事業者等がこの勧告に従わない場合、区長はその事業者等の名前やその事項を公表する事ができます。
このように各自治体でも、様々な対応がとられていることが分かり、セクシュアルマイノリティの方々に対する理解や制度が徐々に構築されてきています。 

企業行動の基準

企業におけるLGBT施策に関しては、アメリカ最大の人権団体であるNGOヒューマン・ライツ・キャンペーン財団が、企業のLGBTに対する平等化への施策状況を評価する「企業平等指数」を毎年公表しています。この指数では、アメリカ国内の大手企業1000社や法律事務所200社を対象として、企業や法律事務所のLGBTに対する取り組みの採点のうえ得点数を公表しており、2019年度版によると、回答した企業1163社のうち572社が満点を獲得しています。
アメリカの大手企業や法律事務所のLGBT対応が進んできていることが分かります。
日本でも任意団体「work with pride」が2016年に日本初の職場におけるLGBTなどのセクシュアルマイノリティへの取り組みの評価指標「PRIDE指標」を策定し、同指標に対する企業・団体等の取り組みを評価し、優れた企業やベストプラクティスを公表するといった活動がなされています。 

感想

今回セクシュアルマイノリティに関する事について投稿してみましたが、私自身、本を読んで学ぶまでは、何となく言葉としてLGBTやセクシュアルマイノリティを知っているだけで、セクシュアルマイノリティの方々がどの程度の割合で存在するのか、どのようなセクシュアルマイノリティの類型が存在するのかも知りませんでした。
性の構成要素は、身体的性別、性自認、性指向があり、性自認や性指向には強弱や濃淡もありそれらを組みわせると、性のあり方はそもそもカテゴリー化することも本来は不可能なのかもしれません。
その中でもセクシュアルマイノリティの方々のように、珍しい性の構成要素の組み合わせを持ち合わせた事によって、社会から理解が得られず、様々な偏見や差別がなされてきた現状があったようです。
現在では少しずつLGBTなどのセクシュアルマイノリティに対する情報が発信されて、国や事業者なども対策をとるようになってきました。その一方、世間一般的に十分に理解が進んでいるとは言い難く、セクシュアルマイノリティの方に対して、差別、偏見が消えず不可解な対応をとってしまったり、知らず知らずに誤った行動をとってしまっている可能性もあります。
性のあり方、その特性を理由に差別・偏見をする事は、左利きだから差別をする、AB型だから差別をするなどと同等の事で決してあってはいけない事だと思います。
そのような、誤った対応を取らないためにも、国、事業者、学校等が正しい情報を発信していくとともに、各個人も自ら性のあり方を学んでいく事が必要になってくると思います。
そのように、あらゆる性のあり方を尊重できる社会になる事で、セクシュアルマイノリティ、セクシュアルマジョリティ全体が生きやすい社会になっていく事に繋がってくると思います。
「知らないで済まされないLGBT実務対応Q&A」の本では、職場、企業活動、学校などで、セクシュアルマイノリティに対するどのような対応が違法行動になりえるかなどを法律面から解説しているものとなっています(どのような内容が書いてあったかは割愛させていただきます)。
相手を傷つけない為にも、自分を守る為にも、そして様々な性のあり方を尊重できるようになるためにも、このような本を読んで見るもの凄く大切で重要な事だと感じました。

 長々と読んで頂きありがとうございました。

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