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「旅行」という趣味は偉いのか?

はじめまして、にんふぇあと申します。国内を一人旅してブログを書きつつ、「トラベルジェイピー」や「トリップノート」といったウェブメディアに寄稿している人間です。よろしくお願いします。

普段は訪れた観光地の情報ばかりまとめていて、私個人の考えについて発信することがあまりにも少ないため、たまには気分を変えて少し語ってみたいと思います。ひまな方はおつき合いいただければと思います。

今回のテーマはこちら。

・旅行って趣味としてそんな偉いの?

たまに「こんな素敵な旅行をしている素敵なアタシを見て!」という方と、それに対して冷ややかな反応をしている方がいるのを見かけることがあるので、それぞれについて思っていることをまとめました。

旅行は偉い趣味ではない

結論からいうと旅行なんて偉くも何でもありません。

私にとって旅行は、知識欲を始めとした様々な欲を満たすのに都合のいい娯楽にすぎません。欲の満たし方に偉い偉くないもないと考えます。

もちろん、旅行を通して多くの人とふれ合ったり、異なる文化にふれたりして、自分の頭の中が世界のすべてではないと知るのはいいことです。仮に学びがある趣味イコール偉いとするならば、確かに旅行は偉い趣味かもしれません。

ただ、それってテレビやネットでもできますよね?だけど、テレビやネットはあまり偉い趣味とはされないですよね?

もちろん、現地に行かないと感じられない空気感もあるでしょうし、生で素晴らしいものに出会った時の感動は、液晶画面を経由するよりもずっと大きいでしょう。

だけど、生の出会いによって得られるのは、現地の空気感やそれによる感動という快楽であり、それ自体に実利はありません。

感動とそれによる快楽に実利がない例として、インドに行って深く感動した大学生は人生観が変わりがちですが、その後の人生はインドに行っても行かなくても恐らく変わらないですよね?

結局、インドで今までに見たことのないものを見て、現地で日本とはあまりに違いすぎる空気感を味わって深く感動するという快楽を味わって欲を満たしているだけです。ただ深く感動したいなら外に出なくても映画や小説でも十分です。

私は旅行がきっかけでライターとして記事を書くようになったり取材依頼も来るようになりました。ある意味旅行で人生が変わりましたが、別に旅行じゃなくても、例えばゲーマーになってたらゲーム関連の雑誌でライターをするようになっていたかもしれないし、風俗にはまっていたら風俗ライターになっていたかもしれません。旅行だけが特別ということはありません。

人生に行きづまった人は「自分探しの旅」をしがちですが、あれは旅行を通して自分と向き合って奥底に隠れた自分自身を探しているだけであり、旅行自体には特別な力はないと考えます。もしかしたら旅に出なくても、優れた本や有識者のネット記事を見ただけで見つけられるかもしれません。

くり返しますが、今まで見たことのない世界を見て感動的な体験をするのは旅行以外でもでできます。ただ快楽を味わって欲を満たしたいのであれば、パチンコや風俗など、世間一般で「偉くない」とされがちである趣味の方が瞬間的な快楽も大きく効率がいいです。旅行でしか得られない感動や、他の趣味とは違う偉さなんてありません。

たまに世界一周中にバーに入ってそこで「自分もここのような、人種や年齢を越えてあらゆる人々が楽しめる空間を作りたい」と決意しワタミを創設した渡邉美樹さんのように旅で自分の道を発見して人生が変わってしまう方もいますが、そもそも渡邉さんは宅配のバイトで年に300万円貯金をためられるスーパーマンです。同じ経験をしても大抵の大学生は「すげー、人生観が180度変わった」という感想だけで終わってしまいますし、渡邉さんのような信念と行動力がある人であれば、正直世界を一周しなくても何らかの形で成功を収めたでしょう。

例えば、もし彼が世界一周ではなく風俗にいっていたら「自分もここのようなあらゆる人種が楽しめる空間を作りたい」と深く感動して、居酒屋ではなく風俗店を経営していたかもしれません。……ごめんなさい、この例えは何かがおかしいので忘れてください。

引きこもり後に世界を放浪していたナオト・インティライミさんだって放浪前からプロでしたし、放浪している時すでに現地人に絶賛されるほどの歌の腕前でした。すごい人は世界一周前からすごいですし、逆に、実際にインド行って人生観が変わるほど衝撃的な経験をしたのに日本にもどったら元の生活にもどってしまう大学生は将来が心配です。

作家で炎上系ブロガーのはあちゅうさんも自身のブログで「旅で人生が変わったとか言う人は中身がゼロなのです」というタイトルの記事で

世界の宝物である美しい風景を実際に自分の目で確かめてしみじみと感動を噛みしめることはあってもそれは、何かを変えてくれるようなものではなくあるとしたらそれをきっかけに自分を変えようと自分が決断するかどうかなだけ

と語っています。タイトルは挑発的ですがまったくもっておっしゃる通りだと思います。

旅をして素敵な体験をすると自分もその素敵なものに近づいた気がして、つい旅行イコール偉い趣味、そしてそんな体験をした自分は偉いと思いこんでしまうことがありますが、旅行している人自身の価値は特に上昇していないですし、旅行で本当に人生が変わる人は、たぶん旅行以外でも人生が変えられます。

以上の理由から、私は旅行を偉くも何ともない、数多くの趣味の1つと位置づけています。

ちょっと蛇足:旅行はマウンティングの道具ではない

唐突ですが、私は風俗に行ったことがありません。1時間でホテル代込み2万円というコスパの悪さと、副産物のなさ(快楽以外に得るものがない)から、自分にとっては旅行の方が優れていると判断したためです。ただ、旅行では満たせない欲を満たせそうですし、瞬間的な快楽の大きさは旅行より高いと思われるので、決して旅行の方が優れているとは思いません。もし「自分は旅行が趣味でお前は風俗通いが趣味だからお前より俺の方が優れている」ということをいう方がいたら、それは、旅行を自分を素敵に見せられる高尚な趣味と勘違いしていますし、さらにいえば、旅行で得た感動や素晴らしい場所やものごとと自分自身を重ね合わせて、自分が偉くなったと勘違いしている恐れがあります。マウンティングの道具ではないので注意が必要です。

あ、でももしかしたらいろんなHPから好みの子を見つけて、店に電話して、部屋で待つ間のワクワクしている時間も加味すると、風俗って意外とコスパはいいのかもしれませんね。あとは仲間で行って、それぞれコトを終えたあとに飲み屋などで反省会をしたりする楽しみもあるらしいので、人によっては話のネタになることもあるかもしれません。その辺りは未経験者なので分かりませんが、風俗もつきつめていくと旅行以上に奥が深そうです。

話が脱線しすぎたのでこの話はここで終わりにします。

旅行はコスパが悪いのか

逆に、無意味さやコスパの悪さを理由に旅行を見下すのも、また違うと考えます。

確かに旅行は多くのコストがかかります。移動には電車や飛行機、自家用車やレンタカーなどを使うし、カメラやスーツケースなどの持ち物、宿泊代、食事代、土産代――行く場所や移動手段、どこまで贅沢するかにもよりますが、決して安い趣味ではありません。ですが、コスパで見た時に、パフォーマンス面はかなり優秀な部類といえます。

旅行者の多くは、目的地へ移動すること自体を旅行の一部として楽しみます。暗くなるまで歩き回って、食事して、夜に宿で眠るのも旅行の一部です。24時間すべて旅行という非日常を楽しむことができます。

例えば、引き合いに出して悪いのですが趣味でゲームセンターに行く場合、移動中は「ゲームの時間」にはふくみませんよね?仮に途中でゲームセンターを出て近くのファミレスに行って何か食べてまたゲームセンターにもどっても、それは食事でありゲームセンターとは無関係です。仮に食事により食欲を満たし快感を得ていたとしても、それはゲームとは無関係です。

移動や食事までがシームレスにつながって、大きな1つの「旅行」という娯楽になるというのが、他の趣味にはない特徴といえます。

さらに、旅行の特徴として複数の趣味を内包している点があげられます。旅行といってもその中身は、買い物、グルメ、◯◯めぐり(◯◯には寺社、建物、古墳、石垣、など無限に言葉が入ります)、ハイキング、山登り、川下り、フィールドワーク、芸術鑑賞、アクティビティ、ハイキング、ご朱印集め、写真撮影、人によっては旅先で友だち作りをしたり、釣りやシュノーケリング、エステにいったりもするかもしれません――思いつくまま適当に例を出しましたが、あげればきりがないほど多岐に渡ります。1つの趣味なのに、多角的に欲を満たすことができますね。

あと、旅行がコスパがいいと言える隠れた理由として、副産物があげられます。ここでいう副産物とは、話のネタになりやすいということを指しています。旅行は趣味として(前述のように高尚ではないのに)高尚とされがちであり人気が高くウケが良いです。会話の相手が行ったことのある場所の話であれば共通の話題として盛りあがれますし、行ったことがなければ、その場所の素晴らしさというお得な情報を提供してあげられるため、それはそれで盛りあがります。あと、初対面の人の出身地を聞いてその場所の観光地の話をふったり、何気ない会話で地名が出てきた時に「あそこって◯◯があるんだよね」という話ができて会話に幅が広がります。

趣味とは、人が余暇に仕事以外にくり返し楽しみとして行う行為を指します。つまり自分さえ楽しければそれで立派な趣味なのですが、なるべくであれば副産物があるとより良いと思いませんか?

移動や食事など1つ1つが思い出の一部となり、複数の趣味を内包し、副産物も大きく、結果としてコスパが良いのが旅行の魅力といえます。

まとめ

つまり何をいいたいかというと、旅行はコスパ抜群で趣味にするには最高だけど、しょせんこの世にたくさんある娯楽の中の1つにすぎないので特別視しない方が良いし、自分を偉く見せるマウンティングの道具でもないぜ、人の目なんか気にしないで本当に自分が面白いと思うこと(それは人によっては旅行ではないかもしれません)をやった方がいいぜ!

ってことです。

#旅行 #ひとり旅 #トラベルライター

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