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世界観の癖が強い飲食店


飲食店とは、いわばひとつの世界のようなものである。

その世界の王である店長が、メニューはもちろん店の飾りもコンセプトも決めることができる。

つまり飲食店を訪れるということは、店長の作りだした世界にお邪魔するということにほかならない。

当然その世界は王の思うように作られているのだが、時々「この世界、癖が強いな」と思うことがある。

居心地のいい店やお洒落な店は正直いくらでもあるので、今回は「世界観の癖が強いな」と思った店を紹介しよう。

ラッキーピエロ

まずはジャブとしてチェーン店から。ラッキーピエロは函館のハンバーガーチェーンだ。

普通、チェーン店は個人の飲食店とは違って没個性的になると思うのだが、ラッキーピエロは一店一店がそれぞれ癖というか、個性が強い。会社のトップ層が癖強めの方なのかもしれない。

文字情報過多なメニュー。

天使が壁から吊り下がり、ソフトクリーム型の飛行機が飛んでいる。

おいしくてうれしくなった時に鐘を鳴らすと、幸せの波動が宇宙から舞い降りてくるという。

ちなみにラッキーピエロの創業者自身は、30年前から家の入口に財運の神、長寿の神、幸福の神をおき、出かける前と帰った時に拝んでいると語るが、特に変わった宗教を崇拝しているという話はないので安心してほしい。

ただ、公式HPでは独自の人生観を語っており、その思想が店の雰囲気に反映されているのかもしれない。

ちなみに、純粋な飲食店としての実力は間違いなく優秀だ。

道内の食材を使い作りおきしないと明言しており、ふわふわパティとジューシーな肉がおいしい。

もしこのままの実力で本州にきたら、世界で愛される巨大ハンバーガーチェーンを打ち負かす実力を備えていると思っている。

そのスピリチュアルな世界観にひるまずに食べてみてほしい。

イキイキ・ギョーザ

餃子で全国的に知られる町、栃木県・宇都宮。

無数の餃子店が並んでいるが、一際異彩を放っているのはイキイキ・ギョーザだろう。

「イキイキ」の巨大な文字やオーラのようなものに囲まれた「生」のロゴが目を引く。青地に黄色というコントラストを強く感じる捕色も印象的だ。

店に入ると壁に熱い想いが書かれている。

この店の最大の特徴が化け物じみたメニュー数。調理法によって別の料理とカウントした場合、メニュー数は600種類にもおよぶ。

野菜餃子・肉餃子・ニラ餃子などの王道はもちろん、カニ餃子・モチ餃子・カレー餃子など変わっているがおいしそうなもの、チョコレート餃子・ヨーグルト餃子・フルーツ餃子などの味の予測がつきづらいものや、子だくさんの餃子・猿怒る餃子・泳いでいる餃子など何が出てくるか不安なものもある。

不安なので王道の5つの組み合わせセットを注文。どれが何味かファイルを用意して説明してくれる。店長さんが目を見開きながら満面の笑みで説明してくれて気迫がすごかった。

自分の餃子と世界観を本当に大事にしているのだなとその笑みを見て思った。

宇都宮の餃子がおいしいのはあたり前なので、ネタ枠としてここも来店してみてはいかがだろうか。

喫茶レストラン「丘」

愛知県・岡崎市。徳川家康誕生の地であり、八丁味噌の故郷でもある。

そんな岡崎の駅近くにあるのが、喫茶レストラン「丘」だ。

建物のベースはよくある古い喫茶店なのだが、装飾物の癖が強めである。

中は壁も天井もアルミのようなものが貼られ、ギンギラギンになっている。

アルミに色つきテープが貼られ、ステンドグラスのようになっている。

レトロなゲーム付きのテーブル。

名物のエッグカレー。優しい味だ。こういう素朴なものを食べられる飲食店が最近減っている。

今時めずらしい、銀の器に乗せられたかためのプリン。

帰りに「丘」シールをもらった。

ここも癖が強いが、特に独自の世界観を目指していたわけではなく、店の雰囲気を明るくしようとした結果時を経てこうなっただけらしい。

明るくしようとして壁や天井を銀で覆うという発想に至るのが素敵だ。長く続いてほしいと思う。

…………

以上である。この3店舗に共通しているのは、見た目の癖が強いが食事そのものにも手を抜いておらず、多くのファンがついているということだ。

奇をてらっているように見えて、みんな根本は真面目だからこそ愛されているのである。

無難な大手チェーンに飽きた方は、ぜひこういった癖が強めの店を訪ねてみてはいかがだろうか。

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