俺癌〜夫が癌になって〜⑭ 手術の謎解きとミソフォニア
さて、ダヴィンチ手術が開ける小さな切開穴からどうやって「前立腺」という臓器を体外へ取り出すのかって問題。
約1cmという切開穴に対し3cmという臓器。
皮膚をこじ開け、どわっと広げ、風船の口のように伸ばして引っ張って無理矢理取り出す……
……んなわきゃない。
実は、
済生会滋賀県病院ロボット手術センターサイトから一部引用
6箇所開けた切開穴のうち、おへその上の切開はカメラを入れるため、1番大きな切開穴になる。
そう、そこだけは、3cmの切開穴になるというのだ。最後にそこから、前立腺を取り出す!
前記事⑬で娘の言った
「おへその穴から取り出すと思う」という答えは、
あながち間違いではなかったということだ。(いやちがうだろー)
ほう。ほう。
そしてそんな娘と、しばらくの間、2人だけの生活になった。
夫が入院してる間の2週間ほどだ。
今春から晴れて大学生になる春爛漫娘である。
既に大学は「総合型選抜」で合格し、青春行きの切符を手に入れた娘は、余裕のよっちゃんで食事の支度や買い物を手伝ってくれた。これが2021年2月初旬の我が家の様子である。
2人だけの食事はなんだか落ちついている。
それには訳がある。
娘は1〜2年ほど前から父親、すなわち夫の咀嚼音(そしゃくおん=食べ物を噛む時に出る音)が気になり始め、わたしにちょこちょこ不快を打ち明けていた。
『ミソフォニア』
この言葉を知っている人はわたしの周りにはいなかった。
認知度の低い言葉だ。
これは「音嫌悪症」「音恐怖症」
といわれる症状。
食事中の咀嚼音、歯磨きのシャカシャカ、パソコンのキーボードのカチカチ…など人によって気になる音は様々だが、それらの音に対しての不快や、不安、怒りが大きく、たまらなくなる。
娘の症状はさほどきつくはないが、何が辛いかって、この症状を
「病気」として理解してもらえないこと。「わがままなやつ」とか
「気にしすぎ」とかで片付けられてしまう。
「ミソフォニア」という病気があることをここでいう。
「ミソフォニア」
よかった。これを見た人は、少なくとも、脳裏にちょこっとくらいは認知されたであろう。
うちは、食事の時はテレビをつけない。ラジオも勿論、音楽も流さない。
家族で会話を楽しむことをモットーにしてきたから、余計、咀嚼音が響くのかもしれない。
てか、その場にいない人の陰口みたいになるけれど、早食いの夫に、
「おやじのくちゃくちゃ(これが咀嚼音)気になんねん。もっとゆっくり食事してほしいよなー」
と本音爆発の娘。
陰口だっていいさ。
人間だもの。
そういや、夫が検査入院をした時、同室のご老人の方の咀嚼音のことを
「くちゃくちゃとハンパなかったわ」と、愚痴っていた夫。
それ、あーたも同じ。
そう。あーたもそれですから!
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