俺癌〜夫が癌になって〜⑬
体外に出された夫の前立腺という臓器。
三男のスマホの中にしっかり収まった。
大学生活数々の青春画像の中に
違和感ハンパない「臓器」の写真。
そうだ、当の夫は、自分の前立腺を見たいと言うだろうか、
まぁ、見たきゃ見るがいいさ。
麻酔から覚めたらしい夫が、ストレッチャーに横たわった状態で扉から出てきた。
「ご家族の方ですよ、分かりますか?右手の方におられますよ。」
看護師さんの慣れた言葉がけに反応した夫だが、笑うこともできないくらい疲れた感じだった。
コンビニで買ったチョコレート菓子を差し出すと看護師さんが
「元気になったら食べてくださいね」
とわたしと三男の言葉を代弁してくれた。
手術直後の夫にかける言葉が分からず、何をどうやって話すべきか、結局、
「き、気分はどう?」
…なんてアホちゃうか、見たら分かるやろってくらいの言葉しか出て来ず、コロナ禍の、このご時世も相まって、
さっさとストレッチャーは去って行った。
長い一日が終わった。
あたりは真っ暗になっていた。
三男とは帰る家が違う。駅も違う。大学の寮へと帰るはずの三男はわたしが乗る鉄道の駅まで送ってくれた。
頼もしいな。
あんたを産んでよかったよ。
あの頃は前立腺も若かった。
えっ?
夜の車窓に自分の姿が映る。
思わずうつむく。
なんでやろ。
そして、突然、ある疑問が湧いてきた。
「前立腺」は直径約3cm。
ならばダヴィンチ手術が開けた小さな切開穴からどうやって前立腺を体外へ取り出したんだろう。
手術前に調べたら、ダヴィンチが開ける穴は「8㎜〜12㎜」とか、「小さな穴」という表示だった。
前立腺は約3センチ程度、クルミくらいの大きさで、重さは成人の男性で15~20gくらいです。
順天堂大学医学部附属順天堂医院
サイトから一部引用
あぁ、マジで不思議だ。
帰って娘に問うてみた。
返ってきた答えは、
「おへその穴から出る!」
いやいや、あーた、小さな子どもに「赤ちゃんはどこから出てくるの」って聞かれた大人が、困ったあげくの答えみたいやん。
わたしの表情を見た娘はもうひとつ答えを呟いた。
「お尻の穴からやな。」
…ふざけ過ぎである。
想像してまうやろ。
実は…それは…
ええっと…次回に解説。
To be continued
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