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【他人のふんどし】太平洋を横断するぞ!(私じゃないセイラーさんがね)

先週は

iPhoneやStarlinkでの人工衛星経由の緊急通信やインターネット接続について書きましたが、これは話題を引っ張るための伏線。

1ヶ月前、SNSinstagramでちょっとだけ交流のありますセイラーさんが日本を発ち、シングルハンド単独でサンフランシスコに向けて現在も航行中です。

特段大きなヨットではなく、VENT DE FETEバンドフェットという30ftのミドルサイズボート普通サイズのヨット
最新型というわけではなく、30年物の艇です。

しかし素材と通信技術を中心に大きく進歩したヨット。
1960年代に、世界で初めて小型ヨットで太平洋を渡った堀江健一さんのMERMAIDは木製(しかもラワン材よ!)でしたが、今は強固なFRP製。
セイルもより強くて伸びない素材になり、切れない素材のロープ、効率化されたリグ、そして何よりもGPSやAISを始めとした航法・安全のための通信機器と、それを動かすための効率の良いソーラーパネルがヨットでの航海をより安全に、そしてより快適にしてくれました。

六十数年前と比較すれば、プレートテクトニクス大陸移動によって数ミリくらいは日本とアメリカの距離は近くなっているのかもしれませんが、技術の進歩はそれ以上に太平洋の距離を短くしました(そりゃそうか)。
当時は「冒険」だった航海も、今は「チャレンジ」くらいのイメージなのかもしれませんな。

しかしそれを言っていいのはチャレンジした方々だけ、指を咥えて見ている私なんかは「うむむむ…」という羨望、妬みを入り混ぜたうなり声をあげるしかありません。

私の場合、太平洋を渡るような航海チャレンジ「時間が無い」を理由に諦めていますが、じゃあ実際に有り余る時間が目の前にあったら実際にやるかどうかと言われると、相当に微妙。

航海計画、シミュレーションして必要な物資の積算と調達、長期航海に備えたヨットの改造と航行区域の変更、出国するための諸手続き… 

いや、絶対無理だろ。


単独オーバーナイトでせいぜい90マイルくらいしか一気に走ったことの無い私が6,000マイルも7,000マイルも独りで走ったら参っちゃうわ(マイルだけに)。
私の夢なんてのはもうちょっと小ぢんまり纏めて、鳥島を見て無人島長平ジョン万次郎気分にひたり、孀婦岩を見て大自然の驚異に慄き(あわよくば近くで潜りたい)、小笠原に渡って、無事にホームポートへ帰ってくるくらいですわ。

これでもリタイヤ後に本当にこんな事するかどうか微妙ですからね!(どなたのお誘いもこちら方面はいつでもお待ちしております)。

そんな感じで、おそらく一生チャレンジする事はないであろう太平洋横断をした気にさせてくれるのがインターネット。

先に書きました太平洋横断中のセイラーさんは、これまで年単位のオーダーで着々と準備を進めておられまして、ブログでもソレントステイを追加(これを自分でやってる人初めて見た)してインナージブを増設したり、カーボンでハードドジャーを自作してメインシートトラベラーをドジャーの上に移設したりと、結構な大工事をされているのを、ふんふんと読んでおりました。

3年前にHallberg-Rassyちょっと大きめのヨットで太平洋横断した辛坊さんの時も荒天時のタクティクスや機器の故障対応等々について色々感じるところも(そしてもどかしい部分も)あったりしましたが、今回のこのセイラーさんの航海は事前準備も含め、その数百倍くらい色々と勉強になっております。

実はそのセイラーさんはYouTubeで日々の航海をアップしておりまして、こちら↓

当初ひっそりと始められていましたので、独り見守って(楽しんで)いたのですが、日々の航海が進むにつれ「これは誰かに言わないとあかんだろう!」と思いまして、ご本人の許可を頂いたので本ブログでご紹介させて頂いた次第。

こう言った日々の動静を見たり、太平洋にいる方に連絡が取れたりするのも全て先週ちょっと書いたStarlink人工衛星のおかげなわけで、通信技術の進歩に感謝ですな… と先週の伏線を回収しておきます。

ところで、このセイラーさんが行っていることで一番驚愕し、そして膝を百万回くらい叩いた航海術Tipsがこれ。

追手の風でウインドベーンが効きにくい場合の対策として、ウインドベーンのブレードを外し、その部分とオートヘルムとロープで接続するという大技!
いや、これってこの世界では一般的な方法わざなのかもしれませんが、私はこの方法を存じませんで、これを見た時に
「すげぇ…」
以外の言葉が出てきませんでした(私が無知なだけかも?)。

見やすいよう勝手に線を追加

風ではなく方位磁石マグネティックコンパスを参照し、ティラーではなくウインドベーンそのものに力をインプットするというこの省力化作戦は見事としか言いようがありません。
調整さえしっかりしていれば、本当に短いストローク(つまり省電力)で長時間ヨットの方位をコントロールする事ができます。

これを見て、ちょっとした電子工作と小さなソーラーパネル、そしてわずかなバッテリーでウインドベーンの上にブレードの代わりに取り付ける自律航法ユニットみたいの作れるのでは?とか考えちゃったもの(ウインドベーン持ってないから作らないけど)。

まぁ、そんなこんなで誰かのチャレンジを、通信技術の進歩によって日々リアルタイムでチェックして、自分もその気になれるというのは素晴らしいなぁと思いました。

とにかくこのセイラーのUさん、ご安航を!