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【番外セイリング02】他人のふんどしでセイリングをする播磨灘

ヨットが少しはブームだった今は昔。
タオル1本を首からかけてマリーナをウロウロ、乗れるヨットがあればクルーとして乗り込むような人がいたと聞きます。
他人のふんどしで相撲を取るが如く、セイリングを楽しんだというわけですな。

ちなみに「他人の褌で相撲をとる」と「播磨灘」でピンと来た人は相撲ファン。
そう!「ああ播磨灘」と掛けています。

マイナー過ぎか…

今回、私もそんな感じで人様ひとさまのヨットに便乗。
マリーナをうろつきこそしませんが、懇願し、無理に押しかけて乗っかる分だけ余計にたちが悪いかもしれません。

秋の風も感じられるようになってきた10月、新幹線で一路神戸まで。
神戸からヨットに乗りますよー。

ヨットはゲルマン魂の感じられるDehler 36。
エアコン・冷蔵庫完備の甘美なヨット(あくまで駄洒落で攻める)。
レーダーまで付いてますわ。
ヨット経験の長さに反比例させてヨット長さが短くなっていく私としては、目もくらむ居住性です。

先に、今回のトラックログ走ったところを出しますと

こんな感じで、

1日目:青いトラック 須磨から家島いえしま
2日目第1レグ:赤いトラック 家島から淡路島
2日目第2レグ:紫のトラック 淡路島から須磨へ帰港

の合計72.11マイルでした。

1日目の目的は、家島で食す「じゃこ鍋」。
2日目の目的は、淡路島で食す「炭焼き穴子(丼)」。

■DAY1(須磨から家島へ)

朝8時過ぎの須磨ヨットハーバー。
わざわざオーナー様に電話しゲートまでお迎えに来て頂くのは手間なので、守衛さんのいるゲートを口八丁手八丁で潜り込むか、たまたま来ている契約者の方に紛れて… と考えていましたが(←マリーナでよくあるパターン)、入り口で偶然にもヨットオーナーさんと合流。コソ泥にならずに済みました。
良い子はそんな事考えちゃダメですよ。

良い天気

(オーナーさん夫妻だけが)出航準備をし、(私は何もせず)出航前から麦で作られた泡の出る飲み物ビールを頂いちゃったりなんかして、至れり尽くせりじゃないですか!
9時出航。
ボルボ特有の乾いたエンジン音を響かせながら大阪湾を機走→メインを出して機帆走へ。

週末とあってか?本船少なめ

潮流によりチョッピ―な海面ではありますが、

いちいちYouTubeにアップするのも面倒なのでアニメGIFですみません

安定した波・風・天気。
どっしりとしたヨットのスタビリティを感じながら明石海峡大橋を

橋の先は玉ネギ王国、淡路島

くぐってジブを展張し完全な帆走へ。
潮にも押されて快走です。
しかし、こちらの海は川ですな。
千葉の外房や東京湾内と異なり、潮流を常に考えないと航海計画がプランニング出来ません。
「伊豆大島沖で黒潮がー」なんてレベルではありませんよ。
今回の出航時間も(私じゃなくてオーナー氏が)潮流に合わせてプランニングして頂き、決定されたと言うわけです。

レグの大部分を帆走しつつ、お昼は…

ちょ、調理した物に加え、泡酒まで!
これじゃあ海上KALDIオシャレ食材店じゃないですか!
ヨットが変われば文化も変わりますが、うーん、コンビニのおにぎりをクーラーボックスから探す自分とはネアンデルタール人と未来人くらいの文明の開きがありますな… ざんぎり頭を叩いている場合ではありません(それは文明開化)。
私なんか電子レンジまで完備されたヨットに乗ってた頃ですら、海の上では胡瓜の一本すら切った事ないですわ。
自分の原始人ぶりを思い知りつつヨットはどんどん進みまして、あっという間に家島までの35マイルを平均5.94ノット(Max10.75ノット)、5時間45分で到着。

Yeah!家島!

と言うわけでビジターバースに舫ったヨットですが、

頻繁に入出港する姫路からの連絡船の辞書には「減速」とか「デッドスロー」とか「曳き波」と言う言葉が無いのかもしれませんが、ビジターバースの前を通る度に

こんな感じですわ。
クリートやハルにかかる負担は結構ですよ、これ。

この後、本日の主目的である「じゃこ鍋」まで、まだ少し時間がありましたので、家島のマーライオンがっかり観光地認定しました「どんがめっさん」と呼ばれる亀の形の岩を

眺めたり(ガッカリ具合が大きかったのでモザイク処理しています)。
階段山道で標高70mの城山公園まで登って眺望を

楽しんだり(皆さんが現地で楽しめるようモザイク処理しています)。
ええ、モザイク処理写真な時点でお察し下さい… どちらも
「お、おう…」
くらいな感じ?

と、一応観光らしい事もしつつ、時間になりましたので夕食を予約して頂いております料理旅館へ。

じゃこ鍋とは… 

「鯛と巨大カレイ」 「カワハギ(と言われたけどウマヅラハギ)」
「ハモ」 「ミズイカ(多分小さいケンサキイカの事)」
「(私の大好物の)オコゼ」  「レンコダイ?」
「小カワハギ」  「〆のおじや」

こんな感じで、お刺身でも当然食べられる新鮮な地の魚を鍋の具材として投入して食べてしまおうと言う、素晴らしい鍋ですわ。
他にもアカアシエビ(多分だけどクマエビだと思う、あの形は)等々、種々の魚介が出て参りましたよ。
オコゼとかエビとか、動いてましたわ。
え?肝心の鍋の状態での写真はどうしたかって?
撮り忘れ… 全員で撮り忘れ。
ま、それ程美味しかったと言う事で…

夜が更けると共になぜか血中アルコール濃度も高まり、この後はデッキで更にアルコール消毒を行い歓談→Zzzzz…

■DAY2(家島から淡路島を経由し須磨へ帰港)

気がつくと…

北東の空が明るくなっています。
つまり朝?
あれ?夜は?いつ寝た??
鍋の〆でおじやを食し、その後で歯を磨いたようなイメージは頭の片隅にありますが、そこから時間が瞬間移動したのか、違う世界線マルチバースにいるのか?朝になっていますやん。
ああ、いや、コクピットで多少(?)お酒を飲みましたな、うん。
とにかく朝ですわ、紛うことなき朝。

↑ホントに起床時は、こんな感じで前後不覚っぽかった

家島の朝の気持ち良い空気の中、ちょっとブラブラしてみます。
日曜日だからか、姫路から来る連絡船のお客さんはほとんどが釣り客。
しかしこの連絡船…

どこからも勢いよく水が…

片舷だけで9ヵ所から排水してるぞ… なぜ? 皆役割が違うのか?なんて思いながら、海沿いをブラブラブラブラ…
幾つか船溜まりっぽくなっているところを

こう言う船溜まりが何ヵ所もある

見て回っておりますと…

これはOceanixTS?Com-Pac Eclipse?もっと小さいか?
パルピットのつぶれ具合やフェンダーを一切していない雰囲気から察するに、既に打ち捨てられている感じの、私好みのポケットクルーザー小さいヨットが浮かんでいましたよ。
楽しそうなヨットなのに、もったいない…
これに電動船外機とか付けたら最高じゃないですか。

ここは漁業と一緒に造船・修理が産業の一翼を担っているようで、海沿いにはドック、造船、鉄工と書かれた看板が多く見られます。
中には道沿いに

勝手にペラクリン塗ったら怒られるかな?

新品の暗車スクリューがこんなに沢山置かれていたり。
雪平鍋柄のような研磨跡が美しいですな(雪平は研磨じゃなくて打出跡です)。
これを見るたびに、東芝機械のココム違反事件を思い出しますわ…

なんて事を考えながら戻って行きますと

お!ヨットだ!

おや?ヨットがいるじゃありませんか。
「へーー、他にもヨットが?」と思い、写真を撮ってから近づくと… 今回乗せて頂いている艇デヘラー36そのものでしたわ。
土地勘がない上に、見ている向きが違う、慣れない艇に景色と、ウッカリ三拍子が揃った上での誤認でした。

朝食は、オーナー様がホットサンドメーカーで作ったホットサンド。
うぅむ、なんて文化的・文明的食事…
私の場合なんか
「朝、何も釣れなかったから朝ごはんは無しなー」
とか、本気でそんな感じですからね。

そして8時前に家島を離れ、いざ淡路島へ。
本日の目的、「あなご」が炭でチリチリと焼かれているであろう富島港を目指します。
目指すと言っても、私は乗ってるだけですが。

家島を出て東に進むと右手には男鹿島たんがしま

左右の長さで2,800mくらい

家島よりすこーしだけ小さい島ですが、人口は家島の3千人弱に対してこちらは30人弱と1/100。
花崗岩で出来た島で、昔からガンガン切り出されてこんな姿に。
だいぶ前、大阪に住んでた頃に一回キャンプに来たなー。

さて、昨日は背中を押すが如く味方をしてくれた潮や風ですが、今日は味方にならず(往路も復路も良いなんて事は稀ですからねぇ)。
穏やかな海上をのんびりとセイリングモード。
途中、またまたオーナーさんにブラッディ・マリーなんかを作って頂いたりして、
「あれ?俺ってセレブなの?」
なんて何回も勘違いしましたわ。
流石に風が味方しなくなれば、帆走は諦めざるを得ませんので

セイルは格納。
うーん、フルバテンをもそのまま飲み込むブームファーラー。
私は前にマストファーラーの艇に乗っていましたが、トラブル続きでげんなり気味でした。
しかしこれはうぅむ、調整と運用の慣れ、そして経験の成せる技なのでしょうが、円滑・簡便な展張と格納に関心しました。
ま、ウチみたいな小舟には関係無いですが。

そうこうしている間に、富島漁港へ到着。
23.6マイルを平均4.85ノット、4時間52分でした。

岸壁の高さが丁度良い時間帯でした

富島漁港から徒歩約10分、炭焼あなごのお店へ

15時になると業態転換(っていうか本来の商売か)、朝獲れの魚介が並ぶらしい。
当然その頃に炭焼あなごは無いと思われますが。

着きました。
行列店で14時とかには売り切れ御免らしいですが、こちらもまたオーナー様がご予約の手配を頂き、本当にありがたいありがたい。

ちゃんとおばちゃんに声かけて撮影させて貰ってますよ
勝手に撮ってる人いたけど、そう言うのダメ!

行列の続く限り延々とあなごを焼き続けるおばちゃんに感謝をしつつ、人数分を買い求め、しかしヨットには帰らず…

便乗?提携?

店脇の道路に置かれたこの看板の矢印方向へ進むと、数件隣には

丼物の上を持ち込むという、初見のシステム

こんな看板の食堂。

オーナー氏の事前情報通り、この食堂へ買い求めたあなごを持って行くと、350円で焼穴子丼になるシステム。
私も他人のふんどしでセイリング中ですが、このお店は他店の炭焼あなごで穴子丼か。知らないビジネスモデルだー。
これでビジネスイノベーション大賞とか取れるんじゃないの?(他社依存型モデルでは無理です)
当然あなごを差し出し、

(丼だけに)ドーン!

あっという間に(と言うほど早くもなかったけど)炭焼あなごから穴子丼へ(お気付きかもしれませんが、炭焼あなごのお店は「あなご」と言う表記、食堂は「穴子」と言う表記なので、各々のお店の表記に倣っています)。

うむうむ、美味しく頂きましたよ!

これはあれね、あなごをダブルとかトリプルでも良いかもしれませんな。
また来る機会があれば、
・あなごは複数匹で頼む(王道)
・鰻をもっていって、1人だけ鰻丼を食べる(変化球)

のどっちかにしよう。
いや、変化球は無しか…

おっと、このレグはReliveも。

さて、最後のレグです。
富島漁港から出港。
時刻は14時過ぎで、そろそろ明日からの仕事の事も脳裏に浮かび、心は海よりも更にブルーになりがちではあります。

淡路島北端 左の方の街並みは明石
俺の心は明日からの仕事を思い浮かべ、この海より青いぞ…

潮的にはちょっと早い時間な感じですので、ちょっと海上でもたつく感じ?
機走のラストスパートで明石海峡大橋、そして帰港地である須磨を目指します。

再び明石海峡大橋をくぐって

向こうが明石海峡大橋南詰方面
橋の向こうは播磨灘、こちらは大阪湾

大阪湾に入湾。

この後は幾つかの本船を避けつつ、無事に須磨へ帰港しました。
最後のレグは13.96マイルを平均6.48ノット、2時間9分。

Walkmeterでの記録

それぞれクリックして下さいね。

Day1 須磨→家島

Day2-1 家島→淡路島

Day2-2 淡路島→須磨


帰港後は片付けもロクに手伝わず早々に帰宅しましたが、今回はヨットオーナー氏のご厚意で、プランニングから各所の予約、アレンジメントに始まり、ヨットの準備・オペレーション・後片付けまで全ておんぶに抱っこ、そしてホスピタリティ溢れる至れり尽くせりセイリングでした。
また、やっぱりたまには他の方のヨットに乗るのはいいなーと思いました。
各種艤装や操船、ナビゲーションなどの細かなテクニック的な部分、色々と勉強になりました。
本当にありがとうございました。

謝辞

さて、こんな感じで関西出張セイリングを楽しく終えまして、これを書いているのは帰宅翌日の月曜日(と言いつつ、書くのに1時間半以上かかってしまったので、もう火曜日だ…)。
実は木曜日からは、今度は愛媛の方でのセイリングが控えております。
こちらも帰宅は日曜日になる予定ですので、次回も週末の更新はありませんです、はい。

ウチのヨットはHaber 660 Sloopと言う6.6mの艇ですが、愛媛で乗るのは、同じヨットビルダーのHaber 800 Sloopと言う8mクラスの兄貴分ヨットになります。
こちらもエアコン、冷蔵庫完備とか…

以上!