ショート漫画【雪虫⑦】 ”飼っていた犬のコロに会いたい”
50年前、直腸がんで入院していた祖父は動物が大好きでした。飼っていた野良犬のコロについてのエピソードはこちらです。
ある日、同室の患者さんをお見舞いに来た女性が犬を連れてきました。普段、泣いたことのない祖父が涙をポロポロこぼしていたと、祖母が言っていました。”さびしい””とか“会いたい”ということは全く話さなかったそうです。
今、思い返してみると 最後に一目大好きなコロに会わせるために、車に乗せて自宅に戻ることができなかったのかとも思います。それが、たった数分だったとしても。または、それで状態が悪くなったとしても、、。
でも、それはかないませんでした。それまでは全く自立して生活していた祖父母でしたから、細かいことで娘や息子たちに迷惑をかけたくないという気持ちも強かったように思います。
そもそも祖父自身、何とかしてコロに会いたいという願望をもっていなかったのかもしれません。死ぬ前にやりたいことリスト、なんて発想もありませんね。そのまま、状況を受け入れる、、という昭和の男性だったのです。
その後、私は看護婦になりましたが、日本での最後の仕事は ホスピス訪問看護でした。(もう、30年前)そこでは、何とか患者さんを最後まで自宅で、という強い思いを持った家族の方々と出会うことができました。
気管切開をしていたり、または寝たきりで胃ろうをつけた患者だったり。一般的には入院しているのが当然と思われるような患者さんたち。本人の意志も、家族も何とかしてあげたいという気持ちも強かった。それは、医療者に直に伝わってくるものでした。
ひとりひとりのドラマが、最期の場面で凝縮された形で表れます。家族としてまたは看護婦として、そうした人々と関わることができたこと、今でも私の人生の貴重な財産です。
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