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今日はクリスマス(みか子と半手拭世)

登場モノ

みか子:ミカンの妖精

半手拭世:ハンカチの妖精

左手手袋郎:左軍手の妖精

みか子は今が旬だというのに腐っていた。それと言うのも
すってんころりんまら雄(すってんころりんまらお)にフラれたからだった。
大事にしていたお友だちの半手拭世(はんてぬぐいよ)とも生き別れになってしまった。

それもこれも自分が悪いと思った。まら雄の気を引くために
お友だちを裏切って、恋の駆け引きの道具にしたのは自分。
その時は夢中でそうしたけれど、自分は欲しいものがあったら、友達でも誰でも
犠牲にして自分の欲望を一番に考えるモノだと知らされた。

街はイルミネーションに輝き、道行く人々は自分を除いて全て
楽しそうに見えた。ふと、ゴミ箱に目をやるとそこに煤で汚れた
左手手袋郎が捨てられていた。

みか子はそのうらぶれた姿に手拭世の姿を重ねずにはいられなかった。
彼女も今頃、冷たい雪道に捨てられて、一人泣いている気がしてならなかった。
みか子は手袋郎を自宅に連れ帰り、風呂に入れ、暖かくもてなした。

瀕死の手袋郎は目を覚まし、みか子に礼を言った。けれどもみか子は泣いて自分を
責めるばかり。やっとのことで、事情を聞きだした手袋郎は手拭世を探すことにした。

手袋郎が最初に訪れたのはおじいさんが立ち寄った食堂だった。
姿かたちは違ってもそこには話の通じるテーブルクロス代(てーぶるくろすよ)
がいた。クロス代は自分は動き回るたちではないので街の様子は分からないも、
お友だちのネッカチーフならば、何かを知っているかも知れないと教えてくれた。

ネッカチーフはチーフだけあって忙しくしていたけれど、クロス代の話を聞いて、
すぐに会ってくれた。彼女は話の間もスルスルと忙し気にしていたけれど、自分も
忘れられそうになったことが何度もあるのよと涙して心配した。

そして彼女は忘れ物市のあることを話した。手袋郎は5本の手をせわしなく動かし、途中、転びそうになりながらも忘れ物市に辿り着いた。

一方、手拭世はハーリーデカの取り計らいで、忘れ物市に職を得ていた。
自分は、捨てられ、忘れられ世界一、可哀そうな女だと思っていた。でも
ここにきて、多くのモノたちが、自分と同じような境遇であると分かった。

他のモノの話を聞いてゆくうちに手拭世は悟った。忘れられたことを
恨んでいるのはみか子に頼りきり生きていたからだと。愛される事ばかり
望んでいて、自分からは愛しはしなかったと。

手拭世はここにきて泣いているモノたちにはっきりと
「あなたは何も悪くない」そう声をかけられるようになった。

手袋郎は手拭世を一目見て彼女と分かった。手拭世はみか子の言った通り、
白い綿のレースを首に巻いて、白い小花の刺しゅうを施した白いドレスを
まとっていた。そしてドレスには茶色いアイロン後が付いていた。

こうしてみか子と手拭世は少し大人になって出会うことが出来、二人楽しく
クリスマスの夜を過ごした。手袋郎は神に導かれるままに、また一人、ゴミ箱へと
戻っていった。

大変貧乏しております。よろしかったらいくらか下さい。新しい物語の主人公を購入します。最後まで美味しく頂きます!!