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終わりも近付く『ウソツキ!ゴクオーくん』はその最終回寸前までずっと面白いぞ(魔男編&116話まで)

見出し画像は116話「6年2組、最高の絆と想い出」より。ゴクオーくんが所属する6年2組では卒業制作として紙製ステンドグラスを作っていた。順調に進む作業と共に思い出される様々な日々…時にはひどいこともしてしまった、それでも互いに分かり合い絆を深めた今のみんながいる。けれど近付くは必ず来る卒業なる別れ……どんなものにも終わりはあるものだ。

※注意!今回は魔男編を含む最終章直前の116話までのネタバレしかありません!

コロコロコミックにて連載されていたオリジナル作品において10年続き全119話で構成されている『ウソツキ!ゴクオーくん』、自分はとうとう最終章であるラスト3話の直前、116話まで来てしまった。最初の頃は「4話で別れたくないとガチ泣きするヒロイン出す!?終盤でしょこういうの!?」とか言ってたがとうとうその終盤だ。そして既読勢の「最終回までずっと面白い」と言ってたのはきっと“マジ”だ。こいつぁウソなんかじゃねぇ…
ということで今回は22〜23巻に収録された魔男編と最終章直前…というより触れねばならない115話116話について感想を述べようと思う。当然ネタバレばかりなので迷い込んでしまった未読勢の方々はみんなも卒業式があるんだな…といつか来る別れを覚悟するくらいに留めてほしい。それでは行こう。人間たちの物語を……


・最後の最後まで最高を詰め込んだ人間たちの日常ストーリー

ジブンはウソを知らないので今すぐ人間たちの話をしていこう。最後も近付いたのもあって、かつて出てきたキャラの掘り下げも多くなってる。今回もちょいとばかし挙げていこう。

まずは107話「ウソを笑うものはウソに泣く」から。5年6年と同じクラスだったヒッチーこと平近鉄平、彼が同じお笑いクラブにて他者をイジり傷つけようがその場のウケを優先する笑いの闇の側面に心酔した与渡に勝負を挑む!最初は恥ずかしがり屋のムリしたごまかしだったかもしれない、自分も一度(ネコカラスさんに)やらかし文字通り地獄を見たこともある、けれど……自分を変え、伊明をも変え、クラスのみんなも幼馴染のノンコも笑ってくれて幸せになってくれる“笑い”を信じてる!まさしく彼が歩んだ道の到着点であった……

続いてはまさかの別クラスながらも万引き行為で読者の印象に深く残った45話の立前くんが再登場した103話「大事な駄菓子屋を守り抜け!!」だ。みんなの憩いの駄菓子屋・まつした屋のおばちゃんが腰を痛めたので立前くんが恩から店を手伝うのだが、一人で店番中に素行不良な高校生に店を荒らされ……言い訳で取り繕ったりせず正面からかつての罪を告白する立前くん、そんな彼があのまま悔いたりしなかったら成り果ててたかもしれない高校生、あの優しさは本当に信じてたんだなと再確認する手遅れな悪童を睨みひとつで退散させるおばちゃんとあの衝撃の物語ありきな話である。

そして6年2組で最後に舌を抜かれたのは…かつて58話で水泳の才を芽吹かせ嫉妬から水見くんにウソをつかれた二子利順だった(磨巾くんばかりに気を取られてたけど君も同じクラスになったんだな…)
そんな彼がウソ事件を起こしたのは105話「偽り(ウソ)の幸せと本当の幸せ」から。首輪をつけた迷い猫を見つけた二子利くんは本当の飼い主が見つかるまで保護することを決めたのだが……その飼い主が見つかったと報があった際にウソをつく。ミィと仮の名をつけ過ごした日々、大変な時もあったが本当に素晴らしく、ずっと続いてほしい失いたくない愛しい日々……まるで後に“彼と彼女”に待ち受ける運命を見てるかのように…

……さて、これから流れ的には魔男について触れることになるのだが、彼の物語は縦軸の本筋に関わる部分があるので後に回させてもらう。となれば残るは彼らの物語…番崎くんと皆見先生だ。まずは番崎くんから見ていこう

(24巻にてあまりにもシリアスな話が出されるのに、相変わらず2話に出てきたバカのイメージ映像めいたのを紹介にて延々と使い回され続ける番崎くん。もっとこう……これまでの話の中に適したのあったでしょ!)

・番崎竜丸という人間〜彼がなぜ嫌われ者と呼ばれたのか〜

小学生をメインにした漫画をやるなら十中八九出てくるような大柄なザ・ガキ大将キャラそのまんまな番崎竜丸くん。彼の登場はもちろん1話からで天子ちゃんどころか主人公のゴクオーくんより早かった。

(記念すべき1話「ウソツキ転校生現る!」にて。同学年の女の子を片手だけで持ち上げるの冷静に考えて小五では規格外のパワーすぎる)

学業は苦手、カレー大好き、友達と一緒におふざけしたりといかにも学年に一人か二人はいた気がするザ・ガキ大将くんである。とはいってもそれだけでは終わらず作者としてもキャラとして目立つし動かしやすいのもあってか出番は非常に多く、それに伴い粗暴なだけでは終わらない一面も出てきた。具体的に言うと弟思いのいい兄ちゃんとかリーダーシップも高く運動会やドッジ大会などではクラスのまとめ役になったり……ゴクオーくんと共に過ごしクラス内の揉め事に巻き込まれ成長したのもあってか、当初より理解ある性格になったと言える。

(56話「犯人は天子!?緊迫の学級会‼」にてどれだけ疑いがかけられようとも昔の自分を省みて天子のことを信じ続けた番崎くん。漢や…)

交友関係も割と広く、代表的なのは5年時の恵比寿くん&梶野くん、6年時の茶刈くんが親友として挙げられる。時に傷つけたり傷つけられたりしたこともあったが雨降って地固まると言ったようにその度に仲直りをし互いに親交を深め合う……また時には地獄長グンショーをアニキと慕い真の強さを漢の背中で知ったり、お盆だからと現世に戻ってきた亡き祖父リュウジから弱くても振り絞る勇気を知ったりと成長機会に恵まれてるキャラでもあった。

(102話「“悪者”になった青年」より。人相の悪さもあって孤立してた転校生・亜久道くんにかつての自分を想起し放っておけないと感じていた番崎くん。すっかり一人前になっちゃって…)

……さて、そんなすっかりみんなから頼れるガキ大将くんになった番崎くんだが上記の1話にて(初期故仕方なしだが何者か分からん男子に)「きらわれ者」と呼ばれている。いやそりゃ確かにみんなを通じていいヤツになったとはいえそんな嫌われる要素あったか〜?と正直思っていたのだが………今回話すやつ以前に確かに感じ取ったものがあった。86話「ゴクオーピンチ!?ネクストのもたらす罰!!」での1幕。

町内クリスマス会の主催として弟の虎丸含むみんなを喜ばそうとがんばる彼に出摩小の井丿中がかつて挑んだケンカの決着をつけたいと因縁つけてきた。ぶっちゃけ今はケンカに興味ないと無視したのだが、ツリーを叩き折ってキレさせれば勝負してくれると踏んだ愚かな井丿中に見せた怒りはこれまで見せたことないような表情で……(喜びの感情を採取したい)ネクストが止めなかったらどうなっていたのやら…

自分は完結後に読み始めた人間なので既読勢の感想からちらほら「番崎くんの過去話は恐ろしい」と聞いていたのもあってかここの彼の見せた「きらわれ者」としての過去の片鱗には恐怖を覚えてしまった。いったいどんなのが待ち受けているのか……そして終盤も終盤にて辿り着いた115話「過去を背負って前を向け!!」はまさしくコロコロでこれ描いたのかとばかりに壮絶で恐ろしく、しかしこの漫画が描き続けてたものとして目を背けてはならぬ、番崎竜丸としての確かなる物語があった。それは………


(冒頭で同じことしちゃった茶刈くんを笑って許したのが対比としてえぐい。気に食わなかった、いじめる理由なんて小学生にとっちゃそれだけで十分だ)

それは4年の頃…前戸(ぜんと)くんなる生徒が運んでたバケツの水を彼にぶっかけてしまったのだ。即座に謝った彼に対し番崎くんは……有り余る力でいい気になってた粗暴な嫌われ者は気に食わない心のままに恐怖という呪いをかけた。そしてあろうことか彼はその呪いで苛まれる姿を見て愉しんでいた。

脅しという終わらぬ恐怖による心の支配……誰がどう見ても「いじめ」としか揶揄できない行為だった。脅しだけで直接暴力を振るわなかったのは幸いか?否、そんなもんしなくても前戸くんの心には恐怖という消えない傷が無限に刻まれしまった。後に彼は転校するも(これが原因とまでは言及されてないのが余計に怖い)番崎みたいなのに同じ目に遭わされるのではないかというトラウマで不登校児童になってしまっていた……番崎竜丸という人間が抱えてた過去というのは、本当に洒落にならない類の悪事であった。それでも番崎くんは5-2と6-2を通じてかなり善い方向に成長した…それこそ二度とこんな非道は行わない程に。しかし…………だからといって罪がなかったことになる訳なんかない

不登校ながらも前戸くんは毎日ちゃんと自主的に勉強し体力作りも欠かさないと学校に通わないなりに有意義に過ごしていた。それでも心の傷が無くなるということは決してない……むしろ自分を恐怖でここまで追い込んだのに、今じゃそんなの知らんとばかりにいい奴気取りしてたのが許せない。お前は最悪な人間に相応しく、かつて自分に強いたような恐怖で苦しむ存在でなくてはならないんだよ。だから彼は贖罪と称してかつての加害者に物理的な傷をつけた。そして加害者もそれを受け入れていた…過去の行いがいかに愚かで罪深かったのを今なら理解できたから。

『ウソツキ!ゴクオーくん』は1話からずっと「どんな人間でも過ちを犯し、それを隠すためにウソをついてしまうもの」というのを描き続けてた。それと同時に「それでもその罪を認め、皆に許され共に前を進める」という小学校メインの事件だからこそできる優しい側面も描き続けていた……しかし「いくら罪を認めようが絶対に許さない」というのも現実には存在する。そもそもこうなってしまった前戸くんだって番崎くんに水をぶっかけてしまったのをちゃんと謝ったにも関わらず許さねぇと執念深くいじめられてしまったではないか……そしてもう一つこの漫画には大切な要素が存在する、「過去は決して消えない」だ。前回にてネクストが時を戻そうとしたのをゴクオーくんが阻止したように、積み重ねてきた“絆”があるならば同時に“罪”も無くならないのだ……あくまでその消せない罪を許すか許さないか選ぶだけであり、前戸くんは絶対に許さないと恨んだだけである。

個人の憂さ晴らしならまだ耐えれるとして約束を破り集団リンチにせんとするのは下手すれば命にかかわる…いくら被害者だからといってかつての彼以上の罪を背負いかねなかった前戸くんの嘘偽りない恨み辛みは目を背けてはならぬものだった。そして地獄の裁判官は現実を告げる……あまりに耳の痛い現実を。

他者の心を自身の都合よく変えられる訳ない、許されなければ一生許されないし彼が許さないならばそれを否定する権利などない。番崎竜丸が前戸くんをいじめ続け、彼に消せない傷をつけた罪は死ぬまで残るのだ……

だが忘れないでほしい……恵比寿正宗、梶野伸行、茶刈しげる、そして亜久道正二……そんな最悪な過去を知ってでも命の危機に駆けつけた親友がいることを。時にケンカもしたが手遅れにならず絆を紡ぎあった、一生ものの友達(ダチ)がいることを。それもまた今作がずっと描き続けた、ウソではない真実なのである

(この一件で憑き物が取れたのか再び登校できるようになった前戸くん。確かに受けた傷は消えない、それでも前を向いて生きていくのだ……)

「番崎というキャラが嘘にならないように」と描かれた彼の物語の終着点、それは確かに嫌われ者と呼ばれた過去から決して背かなかった壮絶な話だった。しかし人生の中では誰もが取り返しがつかない類の過ちをしでかしてしまう可能性が0とは言い切れない…今作が罪というものをそう描き続けたように。万が一そうなったとしても、それでも残り続ける大切な存在を大事にしつつ生きていくしかないのだ……人生というのはそういうものなのだから。


・皆見みのりという人間〜彼女がついてしまった最後の嘘〜

お次は皆見先生についてだ。生徒ごときに間違いを指摘されプライドを傷つけられた恨みで小野天子を罠にはめた愚かな前担任(作者曰く転勤したものの別の学校でまた教師をしてるそうな。アンタも消せない罪を背負って前へ進みなよ!)に代わり担任を受け持った皆見みのり氏。当初はとりあえず存在する程度だった彼女が明確なる人物像を獲得したのは12話「ウソも真実(ホント)も金次第!?」からであろう。

「この彫刻は初代校長先生が生きていたとき、生徒のためにつくってくれたものです!お金では買えません!」
うっかり彫刻を壊してしまったのをお金払えば解決できるでしょと反省しない壱兆金太郎に対しての涙を流しながらのビンタ。これもあって彼は自分がしでかした事の重さを理解し反省したのだった……この恩もあってか壱兆くんは皆見先生を慕うようになるのであった…(何なら6年進級でクラスが別になった94話でも先生に反抗的態度を取る乙赦たちにわざわざ出てきて怒ってたりする)

この皆見みのり、先生としてはまだ若いながらも生徒の為に心から親身になって向き合い接する人として素晴らしき存在である。等身大の小学生が出てくる今作において目指すべき理想の大人として出された先生(これでも急遽担任になったのだから運命ってのは分かんねぇもんだわ)まさしく彼女の活躍は大変誇らしいものであった。

(15話「ありえない!?波乱の課外授業!!」にてウソ暴きでゴクオーくんに逆上し襲いかかる険市先生をいなしつつ説得する皆見先生。こんな強い人だったのと驚く人もいるかもしれないが単行本にて理由が語られているし、その理由も実に彼女らしいぞ)
(28話「ユーリィのひれつなワナ!!」において唐突に早引きするゴクオーくん…天子ちゃんを必ず助けるためにな理由を深堀りせず受け入れ見送る先生。心が広いぜ…)


(94話「修学旅行で大騒動!?」にて土産屋で浮かれる生徒を叱った際にマセた態度を取った乙赦マリエ&勝木美冴が冤罪をかけられるたのをロクな検証もせず犯人と決めつけるなと庇う皆見先生。見てるか洞小の夕日向先生、生徒を信じるというのはこういうことだ)


このように5年2組においても6年2組においても素晴らしき人間性を出してきた皆見先生、そしてそんな彼女に最後の日常回である116話「6年2組、最高の絆と想い出」にてついにメイン回が到来した…というより彼女がついに“ウソ”をついたという方が正しいであろう。それは……

卒業制作代表として紙製ステンドグラスの作ることになった6年2組。作業が長引くからと今回は特別に学校に泊まることになったのだ。各家庭の親御さんや他の先生たちへと大人なればそのために必要な根回しはかなりの労力がかかるというのは容易に想像がつくであろう…それでも皆見先生はみんなに八百小学校生徒としての想い出になってほしいと。

生徒のためにとどこまでも尽力する先生いや人間の鑑である。その甲斐もあってその日の内に無事に作品が完成した。進級し新しいメンバーになり色々な事件もあったが今となれば皆が一致団結し最高のクラスになった……そう確信し合え皆が寝静まる夜、あまりにも残酷な事件が発生してしまった。

その日は強風吹き荒れる夜だった。そのせいで偶然にも窓ガラスが割れてしまい、そこから吹き込む風が卒業制作を引き裂いてしまっていたのだ……誰も悪くない、それは運命のイタズラと済まさねばならないまでに、あまりにもあんまりな事件だった…

こちらも既読勢からちらほら聞こえてた「皆見先生がウソをつく」という話。自分はあの先生がウソつくなんてよほどの葛藤があったのではと身構えていたが…出された事実は想像を遥かに超えるものだった。生徒たちが頑張って作った傑作が台無しになってしまっては皆が絶望してしまう……だから彼女はウソをついた、自分だけで寝る間を惜しんで元通りに見えるように作った。それはまさしく他者を想う故についた「優しいウソ」、それもあまりにも身を削るほどに献身的な優しさ溢れるウソであった。しかしそれでも………閻魔大王はその優しいウソを裁かねばならなかった


(35話の能取くんの誤魔化しがあったように、その積み重ねてきた努力の賜物にどんな形や気持ちであれ第三者が介入し結果を歪めてしまったのは悪い事と受け止めなければならないのだ…)

確かに皆見先生がこんな事しでかしたのは皆の為を想ってだった。しかしそのウソは生徒達を一生ずっと騙すことになる……誰よりも生徒の気持ちに寄り添い考えれる彼女は、自分がしでかした行いがいかに生徒が紡いできた絆を侮辱してしまうかという事実に気付いた。彼女は潔く罪を認め舌を抜かれ全てを白状する……

(確かに先生がしでかした修復という過ちは消えない、けれどその先生の行いもなかったことになんかしたくないのだ……)

「6年2組で最後に舌を抜かれたのはニ子利くん」と言ったがアレは半分ウソだ、なぜなら皆見先生も6年2組のメンバーなのだから。生徒の為を想ってこれまでずっと行動してきた皆見みのり先生、そしてそれは生徒たちからも大切に想われていた。6年2組だけでなくそれこそ5年2組からずっと……今作最後の日常回を飾るに相応しい皆見先生の話。2年間、本当にお疲れさまでした…


・魔男という人間〜ウソを知らないという意味〜


さて皆さんお待たせしました、時系列的には番崎くん回や皆見先生回よりも前になってしまうのだが本筋…というより最終章への前哨戦の側面もある彼についての紹介である。魔男くんだ。

(ポテチ買えるくらいの備えはもらってる)

初登場は103話「大事な駄菓子屋を守り抜け!!」から。初対面の子に変なこと聞く変な少年だ……まぁこのラストで空に浮いてるので只者ではないと分かるのであるが。

この魔男なる少年、体内に魔力(キセキと対をなす地獄の住民特有の能力みたいなもの)を宿し自由自在に行使するという人の営みから一線を画する存在だ。そしてなにより彼はもう一つ特殊な部分がある…「ウソを知らない」ということだ。なにかと人ならざる者が己の野望を果たすために人々にウソついてきた中で彼はそんなもの知らんのである。

108話「意外な助っ人参戦!?」にて魔力溜めるがてら2組vs3組のフットサル対決に参加した魔男。ルールもよく知らん割に圧倒的な運動神経を見せてきたのもあって地元サッカークラブの耳内に嫉妬され…PK戦の際に助言と称して妨害作戦を受けてしまう。耳内はこの事は言わないでくれと約束するも彼はウソを知らないので誤魔化すなんて不可能で……

これだけ見れば世界についてよく分からんだけだし、みんなとの中でコミュニケーションを育くめばネク助みたいに改善されるのではと思うがそうは問屋が卸さない。彼の野望は「オモシロイ世界」を創ることだが……それはジブンだけがオモシロイ世界なのだ。なぜなら彼はこの世界に対して静かながらも激しく恨み、幸せな人間を妬んでいるのだから。赤子の頃から千年もの長い時間ずっと何も無い空間で過ごし続け、いざ解放されて現世を覗けばジブンが持たぬもので満たされてる人間ばかり……あまりに不公平であり、それなら今度はジブンだけが満たされなければ平等とは言えないだろうと。

110話「世界の危機!?カウントダウン開始!!」より。ちょうど父親の出張に母と共に出迎えて家族団欒な状況だった なんとかちゃん が「最近現世を知ったのなら楽しいことだってきっとある」と言うも……実際に小野天子は己の性格の良さもあって人間関係に非常に恵まれている。そんなのに希望だの綺麗事ぬかされてもジブンとは前提条件が圧倒的に違うじゃないか。それなのにジブンの苦しみを無視し丸く収めようなんざ偽善に過ぎないとごもっともな指摘をする……

持たざる者……先程の彼の言葉をよく聞くと「現世の人間が持っているもの」の尺度で妬んでいる。これまでの敵は天国の者に地獄の者と人外の世界に住みし者ばかりなのに……だって彼は普通の人間なのだから。規格外の魔力を備えてるけどあくまで人間。ここが判明した瞬間「そ、そう来たか〜!!」と関心してしまったよ。ちなみに今回の感想記事に目次がないのは人間としての括り内で彼について取り上げたかったので「魔男という人間」なネタバレ見出しをつけたかった&かといって迷い込んだ未読勢が冒頭に設置される目次から知ってしまったら可哀想なのでという配慮からである。なるべくこの一件は実際に見て驚いてほしいからさ……ね?

(よく見ると後の112話に出てくる井伊達さんもいるぞ)

“魔男”というのも名前ではなく肩書きのようなもの……つまり彼は名前すらない。ナナシノ編やネクスト編といった「名前が授けられることによって生まれるアイデンティティ」なテーマが続いたが、そもそも彼には名前という自分自身を注ぎ込める器すらも与えられてないのだ。なぜなら本来それを一番最初に与えてくれる親がいないから

「ウソを知らない」そして「あらゆるものを与えられてない人間」……今作において現世の人間がつくウソというのは人間関係内において生きていく上でついてしまうものとして描かれる。つまり彼がウソを知らないというのは、現世で生きるべき人間なのにウソをつく場面が発生しうる人間関係から隔絶されてしまっていたなによりの証拠なのである。だんだん笑えない設定になってきたぞ……

そして迎える111話「魔男の暴走と隠された真実」にてそんな彼にウソを教えてやると意気込んだウソ大好き地獄王、あの頃はそんな事情知らんかったが約束は約束だ、溜め込んだ魔力が暴走した魔男に鉄砲刃無(鉄砲話って単語初めて知った)なるウソ技でさらに魔力を注ぎ込み逃げるフリして彼が予め用意した魔力補給用魔法陣に踏ませ魔力をキャパオーバーによる破裂させる形で無力化した。まさにウソでの勝利だがかといってそれがオモシロイとは別だ……しかしすぐに分かる、理由はこれから明かされるウソ暴きでな。

そもそも魔男に家族がいないというのはウソであって、彼を支えてきた謎の人物モヘジとヘメこそが彼の両親…蜘蛛の糸警備獄卒デウスと上級天使モニアだった。ふとしたキッカケで出会い結ばれ子が産まれたのだが、その子はあろうことか「人間」だった…(神や地獄王の采配が介入する間もなく)心ない天使や悪魔どもの迫害による独断で人として生を持った赤子は虚無空間ハザマへ捨てられ千年の時間が過ぎてしまった……

愛する我が子と引き離され怒り苦しむ夫婦だったが、天使であるモニアのキセキで辛うじてハザマに僅かながらアクセスすることができた。そしてせめてできる食事を提供し続け……ハザマから解放された後もモヘジとヘメが買ってきてくれたごはんかパンかの選択肢、それこそが何も持たないと思い込んでた少年が唯一受けた家族による愛だった。彼にも“つながり”があった。

あまりにも同情しうる悲しい理由あれど世界を滅ぼしかけたのはキッチリ罪を償わねばならない。人間である魔男はともかく悪魔と天使ならば神による天罰という形で裁きを受けねばならない……その時である。

突如ヘンなこと言い出す魔男。それは明かされた事実とは全く違うデタラメなものだった。しかしそれこそがゴクオーくんが彼に教えたかったもの、そう………

両親という大切な人を守りたい故に無意識についた優しさ含むウソ……それこそが現世に生きる人間がついてしまう、その中において「おもしれーウソ」と分類されるウソそのものだ。何も持たない訳ではなかった、気付けなかっただけで、自分にはもう持っていたのだ……ウソをついてしまうような人間関係を、現世で生きていける確かなる証拠を

神罰により人間になってしまったデウスとモニア、そして……ようやく親から授けられた名前「ダン」として現世で生きていく。現世で生きるというのは天国や地獄では考えられない汚いウソばかり存在する、まさに罰に相応しい過酷な現実もある。けれど独りなんかじゃない、この世界を恨んだり妬んだりする必要はない……あの時なんとかちゃんにポテチがのりしお派か聞いた際に「うすしお派だけどのりしおも美味しい」と言ってくれたように、ジブン以外オモシロイかジブンだけオモシロイかではなく、互いに理解し合って一緒にオモシロイ世界にすることだってできる。彼ら家族もきっとそれができる………


・次回ついに最終章〜そして待ち受けるは人ならざる者の抱える因縁〜

いかがだったろうか?今回の116話までの感想はちょうど魔男編も絡むこともあって人間のみにフォーカスを当てることにした。才能と努力で掴み取った期待の新星だったのにチッポケな人間に自身の弱さを教えられ成長した魔族ルウキくんとか好きなんだけどはしょってすまないことをした。あの自動車免許取得しようとする○ッコロさんみたいなクソダサ変装とか好きなんだよなぁ……


……人ならざる者といえば忘れてはならぬことがある。魔男編は最終章への前哨戦という側面があるということだ。ハザマの世界に閉じ込められてた人間の少年、それを助けようとする両親に対して「声」が聞こえた。その「声」の言葉を信用し契約を結び少年はようやく解放され両親と再会し、魔男が蓄えた魔力は鍵の形を成して天と地の狭間の扉を開けてしまったのだ……甘言を囁き弱みに漬け込み利用する真の悪が存在する。そしてその「声」は、地獄王にだけ聞こえるように語りかけてきたのだ。



もうすぐだから
待っててね。



残るはあと3話……とうとうここまで来てしまった。閻魔大王が抱える因縁とは?そして近付いていく卒業式、そしていつか必ず訪れてしまう別れ……この漫画はどのような結末を迎えるのだろうか。しかし確信はある…既読勢が「最終回までずっと面白い」と言っているのだ。それだけは、間違いない。

ということで書きました。よろしくおねがいします

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