【書評】夢の跡 高田愛弓
彼女のこの表題の作文。
作文コンクール文部科学大臣賞を受賞した作品
出だしの一文が
「父が、逮捕された」
から始まる。彼女は当時中学二年生。
ネットでかなり話題になり、その時読んだ衝撃はすごかった。
テーマのインパクトも強烈だったけれども。
彼女の視点、客観性と主観性。
外部環境を俯瞰するところからの自然な心情表現に。
豊かな日本語。
原稿用紙80枚を一気に読ませる構成力とリズム感。
もちろん指導教員がいるので最低限の指導は入っているだろうけれども。
圧倒的な何かを感じたのを思い出した。
そんな彼女が実は小学校4年生から6年連続入選・入賞していたとは知らなくて。且つ、まとめて自費出版しているとは思ってもおらず。
紹介されて思わず購入した。
全部一気に読んだ。
とても、とても、いい。
ものすごい量の文章と思索と知識に普段触れてなければできない知見と表現に溢れている。そして視点が素直な所がとても胸を打つ。
大人としては「そうじゃない世界もあるよ」と教えてあげたくもなるけれども、彼女が得てきた経験、触れた想い、周囲の情報で精一杯考え、感じた結果がここにあると思った。
この作文を作り出した彼女の不断の努力に頭が下がる思いである。
小学4年生の作文の中に
「10才の私には老いていく感覚は分からない」という文章がある。
切り抜いてそこだけを見ると何が特筆すべきなのか分からないだろう。
是非読んでほしい。
この1文を、この文脈で、10歳の少女が書く。
というのは目が覚める程の衝撃だった。
中学3年の作文は、私から見ると挑戦に見えた。
言いたい事、伝えたい事が、知識と自分の触れている情報量が、各段に増えた時期なのでないかと思わせる文章で、何か書き方が変化した印象。
というか、テーマを絞っているようで絞り切れなかったか、伝えたい事が多すぎたのか。少し大人になった印象の作品だった。
何を中学生の作文に言っているのかと思ったけれど、そのぐらい期待してしまう作品群なのは確か。
ぜひ読んでほしい。
彼女がこれから何を見て何を感じて何を発信していくのか。
文章を書く人になってもならなくてもいいと思う。
彼女の視点、理解。このまま広く羽ばたいてくれるといいな、と思う。
どのように成長していくのか。興味はつきません。
またどこかで彼女の文章に触れる日が来たら、とても嬉しい。
個人的なBGMは真木ようこの幸先坂です。
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