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「自重しないスパロボ攻略本」のコメントはなぜああなったのか? 担当ライターが振り返る

血気盛んなライターが痛いテキストを書いてしまった懺悔録。いい機会なので振り返ってみる。

“自重しない”スパロボの攻略本

ニコニコ動画に「自重しないスパロボ攻略本」としてこんな紹介動画がアップされている。

「スーパーロボット大戦F(PS版)」というゲームの攻略本「スーパーロボット大戦F パーフェクトガイド」(ソフトバンクパブリッシング刊)に書かれたぶっ飛んでいる解説コメントを取り上げたものだ。
めちゃくちゃこき下ろしているものが多く、好きな人もいるだろうが、気分を害する人もいるかもしれない。個人的には好きな部類ではある。

「それも私だ」

かのユーゼス・ゴッツォのセリフで有名なものに「それも私だ」というものがある。「全部裏で自分が仕組んでいたことなんだよ~」という内容について多く語らず、一言で済ませたものだが、あまりにもマジックワードすぎるためかいつしかネタとして昇華されるようになったセリフだ。

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そう、「それも私だ」なのだ。この攻略本の動画で取り上げられているコメントは、私が20歳の駆け出しライター時に書いたものである
当時はいわゆるゲーム誌のライターになりたくて、なんとかして業界に入ろうともがいていた時期だ。ひょんなことからお世話になっていた人の紹介で、「スパロボ好き」というだけでこの動画の本の作成に関わることになった。今思えば、編プロの社長はよくもまあ実績も何もない20歳のライターに、スパロボ攻略本の華とも言えるデータページのコメントを任せたものだ。自分が同じ立場だったらどう考えても頼まないが、それほど切羽詰まっていたということだろう。

書けば書くほど書くことがなくなっていく

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スパロボは好きだし、今までさんざんスパロボ攻略本のコメントも見てきたから書けるだろうと高をくくっていた私は、書き始めて愕然とすることとなる。パイロットの2人、3人はなんでもない。
ただ、人数が増えてくるに連れてどんどん書けなくなっていく。スパロボというゲームはパイロットやロボットの数がとんでもなく、ゆうに三桁はこす。数があるものに対して、アウトプットの質を一定以上に保ち続けることが駆け出しライターには難しかったのである
素人とプロの違いはこんなところに出るものか……などと思ったものだが、締切はまってくれない。でも、筆が一切進まない。さて、どうしたものか。

進路に光明、退路に絶望

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これは何かを参考にするしかない、ということでこれまでに発売された攻略本を片手に、そのテイストを取り入れていくことになった。その手本こそ、勁文社(ケイブンシャ)のスパロボ攻略本郡だったのだ。
ケイブンシャの攻略本は当時「山猫有限会社」という編プロが手掛けていて、非常にマニアックかつウィットに富んだコメントが特徴的だった。「魔法の少尉ブラスターマリ」などという単語が出てくる攻略本は、彼らが手掛けたもの以外では見たことがない。

ちなみに、山猫有限会社はおそらくもう解散しているが、当時のWebサイトのドメイン(https://yamaneko.co.jp/)は「山猫総合研究所」というところが取得している。久々にアクセスしたら、いきなり三浦瑠麗の写真が出てきたので何事かと思ったのは内緒だ。

ただ、参考にした対象は素晴らしかったのだが、若さゆえに知識と語彙力が足りず、さらにこき下ろせば面白くなるんだろと勘違いしてしまったがゆえに、単なる荒削りで辛辣なコメントになりさがってしまった
それが展開されているのが、動画で取り上げられているテキスト郡である。旧ザクに対して「どうすんだ、こんなの」だの、ザク改に対して「どーすんだ、これ」とのたまうなど、怖いもの知らず。よくこれでサンライズのチェック通ったなと逆に関心してしまう。おおらかな時代だったのか。

若さゆえの過ちと、それを一切止めなかった出版社、メカチェでもスルー。奇跡のバランスとなった結果、あの動画の攻略本が生まれてしまったというわけだ。
なので、まとめると……狙って書いたわけではなく、ただがむしゃらに勘違い青年がやらかした結果なのである。いやはや恐ろしい。

結びに

今、これを書けと言われても書けないだろう。自粛するか、もしくは誰かに止められてしまうか、最後の難関であるメーカーチェックではねられるのが関の山である。また、スパロボという作品のゲーム性で考えても、尖ったところが昨今のシリーズには見られないため、こういったコメントを書く余地が現実レベルとしてもない。

ちなみに私は以下の攻略本(ソフトバンクのスパロボ攻略本が主)においてユニットデータページのコメントを担当しているが、時代を重ねるごとに実用性に重きを置いたコメントに変化していっている。これはゲームの自由度が増したためだが(特定機体やパイロットに頼らなくてもよくなった)、出版社側の方針転換もある。
・スーパーロボット大戦コンプリートボックス パーフェクトガイド
・スーパーロボット大戦64 パーフェクトガイド
・スーパーロボット大戦α パーフェクトガイド
・スーパーロボット大戦α外伝 パーフェクトガイド
・第2次スーパーロボット大戦α パーフェクトガイド
・第3次スーパーロボット大戦α パーフェクトガイド
・スーパーロボット大戦IMPACT パーフェクトガイド
・スーパーロボット大戦MX パーフェクトガイド
・スーパーロボット大戦OG ORIGINAL GENERATIONS パーフェクトガイド

今後、ウインキー時代を彷彿とさせる尖ったスパロボが世に出る可能性がゼロではないだろうが……万に一つもそんなことがあったならば、今の全力を尽くしたコメントを書いてみたいものだ。「どーすんだ、これ」と途方にくれてしまう日が来ることを待ち望んでいる。

過去の攻略本のコメントを自ら振り返った記事も書いてみたので、興味があったらご一読頂きたい。


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