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西表島の陸活動、ピナイサーラの滝の上と下 その③

帰り道はどんな道でも早く感じる。ピナイサーラの滝の上からヒナイ川上流のカヌー降り場まで、気持ち的には15分の帰り道だ。早送りでスタート地点に戻り、そしてまたスタート。2年ぶりのピナイサーラの滝の下だ。スタート直前に友人がトイレに行きたいという。隠れてしてくるという友人の一言に、ツアーガイドのSちゃんが「トイレ、出来たんです。」と。

「トイレ、出来たんですっ?!?!」

 こんな大自然だものトイレも自然に、ではないのかっ?!と反応してしまった。世界遺産登録に向けた自然環境整備の一環で特定の場所数ヶ所にトイレが設置されたそうだ。Sちゃんは大きなリュックサックからジップロックの特大サイズのような緑色のビニール袋を取り出して、「あそこにトイレがあるので」と指をさした。その先には自然にまぎれてポツンと深緑色の一人用テントがあった。言われなければ気づかないポツッーーンだ。Sちゃんが取り出したのは簡易トイレセット。テントの中にトイレがあるので、そこに自ら簡易トイレをセットし用をたす。ホーホー、なるほどである。

っん??全く想像がつかない。あのテントの全貌。

「行ってくるよ!!」友人、本日一番の決意だった。右手に簡易トイレセットをヒシとつかみ、茂みの先の未知なる世界に飛び込もうとする、まさに冒険者だった。数分後、スッキリした顔で冒険終了。右手に持った簡易トイレセットを自慢げに「命って感じだ、ズッシリ重いよ」冒険者の言葉はいつだって重くて突き刺さる。

経験してみたい。トイレには程遠い気持ちでいたが、私も冒険者に憧れてしまった。「私も行ってみようかな」呟くとS ちゃんは用意周到に私の分の簡易トイレセット改め、冒険者セットを差し出してくれた。「トイレ行ってくるっ!!」と宣言した。

 「トイレ行ってくるっ!!」ここまで強くトイレの宣言したのは小学1年生の夏休み以来ではないだろうか。小学校1年生の夏休みが始まるまで、古い借家に住んでいた。その家のトイレはぼっとん便所で、私はいつか落ちるだろうと恐々だった。だから、落ちても比較的すぐに気づいてもらえるようにトイレに行くときには「トイレに行ってくるっ!!!」と大声で叫ぶ。1人の時にはトイレに行かない。「行っといでっ」両親や祖父母が返事をしてくれて、やっと私はトイレに歩き出すのだ。

2020年、「トイレに行ってくるっ!!!」と決意し歩き始めた私に「はい」と友人とツアーガイドのSちゃんは返事をしてくれた。づづく。

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