聞こえない人と聞こえる人が働きやすくなるコミュニケーションtips
こんにちは!
freeeエクスペリエンスデザイナーのnikoです。
昨年の6月、チームに聞こえない方が中途入社されて、私はオンボーディングパートナー※を務めることになりました。
freeeとしても私自身としても聞こえない方と働くのが初めてで、1年間みんなでいろんなチャレンジをしました。その中でチームでは(言葉にしなかったのですが)常にこんな意識があったと思います。
「聞こえに関わらず、お互いが働きやすい状態ってどうすればいいんだろう?」
聞こえる側も聞こえない側にもそれぞれアンコンシャスバイアス※がきっとあるはず。それに気づき、考え、やってみたことでわかったことがいくつもあります!
このnoteでは、聞こえない人と聞こえる人が相互に働きやすいコミュニケーション方法のコツ、業務で行った工夫についてお伝えできればと思います。
(補足)この記事に出てくる、一緒にはたらく聞こえない方の紹介
ぶらっくさん:エクスぺリンスデザインチームでResearchOps(リサーチ実施をサポートする役割。具体的には対象者へのリサーチの打診や、日程調整、謝礼の送付、リサーチルームの管理などを行う)としての業務に従事。日本手話、日本語対応手話を使え、また日本語も理解されている。
やりとりの基本
UDトークを使う
聞こえるメンバーにとって聞こえないメンバーに言いたいことを伝えるには、やはり音声認識し文字起こししてくれるツールがあると便利です。
そこで、私たちのチームではUDトークというアプリを各自スマホとPCにダウンロードして使っています。
UDトークの便利な機能はたくさんネットに上がっていますが、最初から設定しておくと便利だった機能や設定を紹介します。
【UDトークおすすめ設定】
スマホ、PCともに「新しいトークを追加」で専用の”トークルーム”を作る
各設定や登録した単語を保存することができます
アプリ起動後2タップでトークルームに入れてさっと話せるのもいいです
よく使う単語の登録
業務で使う専門用語はもちろん人の名前を敬称付きで登録すると、誤変換が減ります。修正作業は地味に大変なので活用したい機能です
PC版のダウンロード
主に文字起こしの確認、修正に使います
オンラインミーティングをパソコンでする場合、ミーティングツール画面とUDトークを同一視野に入れるのに良いです(効果はオンラインミーティングの章でお伝えします)
オンラインミーティングでは、カメラON+UDトーク
聞こえる人と聞こえない人との情報の差をなくしたい、つまり「誰がどんな表情で何を喋っているか、できるだけオンタイムで伝わるようにしたい」とチームメンバーで考え試行錯誤した結果、理想形態がわかりました。
スタイル
各自がオンラインミーティング上でカメラをONにし、UDトークは同一のトークルームに入る
bluetoothイヤホンを耳に、有線マイク付きイヤホンをイヤホンクリップに取り付けて胸元につける
伝え方の作法
元気よくハキハキ喋る
文章を考えてから喋る(話し言葉や音程で伝えているニュアンスを減らす。「かなぁ」などをUDトークは「かな?」とつけて表示はしないため)
指示語を使わず具体的名称をいう
伝わったかどうかは手でOKサインを出し合って確認
3人以上の場合は、喋ってない人がUDトークの誤認識の修正をする
面白いもので、議論が白熱するとついつい個々人の喋り方の癖が出て、UDトーク上では「誤変換が多い人」と「誤変換がない人」とはっきり分かれるように見えます(全く誤変換がない人の発話は画面上ではとてもスマートな文章に見えるので、みんなから羨望の眼差しが向けられます)
パソコン画面の工夫
表情を見るためのオンラインミーティング画面、発話をみて誤変換を修正するUDトークPC版、議事メモ用のドキュメントを同一視野(できたら1画面)に表示させる
3画面をノートパソコンで全て映そうとすると、小さくてかなり見づらいです
じゃあUDトークはスマホで、など別にすると色んな方向を同時に見ようとして首が痛くなります
四分割しても、それぞれよく見えるサイズのモニタを用意できると、聞こえる人・聞こえない人共に、かなり楽になりました
オフラインのミーティングでも同じ形態が理想なのですが、各自が立ち上げたUDトークが別の近くの人の発話も拾ってしまい文字修正が大変になることがありました。
そこで私たちは、カジュアルなミーティングの時には、ぶらっくさんに我々の目線や仕草から誰が話しているか汲み取ってもらい、使用するUDトークを一つにすることにしています。話している内容をクリアにすること・修正の手間を軽減することを優先させています。
オフラインではブギーボードが活躍
1対1で短いやり取りの場合、UDトークを立ち上げず、ボディランゲージや口の形で伝えたり、確認したいところだけを筆談で伝えるのがスムーズです。
筆談の場合はブギーボードは便利で、ぶらっくさんはマグネットつきのものを使っています。デスク裏に貼っておくことができ、必要な時にパッと出せる優れものです。
ブギーボードは指で書いてもきれいに表示されるのでお互い手軽に素早く会話できるのでおすすめです。
他、日常のやりとりはGoogleドキュメントを使うこともあります。
オンボーディング・チームビルディング
社内オフィスツアーでは1つお願いをして一緒に回る
オフィス設備の使い方や会議室の場所を一緒に回って説明する、いわゆるオフィスツアーをすることがあると思います。その際に聞こえない方へ「わからない・困る・危ないと感じた部分があれば教えてください」と伝えてからはじめてみましょう。
(気兼ねして言いづらい気持ちを取り除くために、OP側が「見つけて欲しい」とお願いする形が良いと思います)
このお願いをしてから始めることで、聞こえる人には気にならなかったところが聞こえない人にとっては要注意箇所であると気づけることがあります。
できれば他のチームメンバーも誘ってみましょう。一緒に回って見ることで想像しやすく共感も生まれやすいです。
私たちは回ってみた結果「会議室の扉が一部でも透明であって欲しい。扉の向こう側に人がいるのかわからないと開けづらい、急に開いたらこわい」という意見をもらいました。
そんな視点で会議室をみたことがなかったことに気づかされました。
※freeeの全会議室を確認したところ、たまたま(?)部屋全体がガラス張りであったり、扉にガラス窓があったりしたので修繕をすることはなかったです。しかし非常階段のドアは透明な部分がなく向こうの気配を感じることも難しい扉で、注意が必要な箇所だということがわかりました。
ウェルカムランチをする
業務で関わるメンバーの紹介をランチを兼ねて実施するのは、親睦を深めるのに大切です。基本的には聞こえない方の希望を考慮するのが良いと思いますが下記3つがあるとストレスなく楽しめると思います。
参加者はUDトークをスマホにダウンロードして使えるようにしておく
注文をして待っている間やお店の行き帰りにぱっと出して、UDトークの音声認識機能と手書き入力機能を使ってわいわいコミュニケーションをとることができます
人の声や音楽などで周囲がかなり騒がしいと感じるお店は控える
UDトークが認識しやすい環境だと話者はストレスが少なくていいです
人数は4人、多くても6人
聞こえる人、聞こえない人とのコミュニケーションは基本は1対1がスムーズです。初めて顔を合わせるメンバーと約1時間のランチというシチュエーションでは、人数が多すぎると全員と話せなかったり、聞こえる人だけでの会話が起こってしまいがちです
聞こえない人がいるということをチーム外の人にも伝える
チームが違う席の近い人や各チームメンバーがよく関わる人には「あの人は聞こえない」と教えてあげましょう。
デスクで黙って仕事をしていると、聞こえるかどうかは一見するとわかりません。
知らない人からすると「あの人はいつも挨拶してるのに返してくれない」とか、「チームのことを聞きたくて声をかけたのに無視された」などよくない印象や誤解を生んでしまうことになります。
一緒に挨拶まわりをするのが難しい場合もあると思います。
本人がその場にいなくてもチーム紹介をしておく、または見かけた時に彼・彼女だと指さして教えるなどでもいいので、できるだけ多くの人に知ってもらうことが大切です。
業務での工夫
履歴の残るツールを選択する
正確さ、確実さを求める社内メンバー間の業務のやりとりはGoogleドキュメントやSlackで行うようにしています。
Googleドキュメントのメリット
作業日報として使える
朝会・夕会でその日の作業を書き出して、抜け漏れやミスがないかお互いに確認ができる
気になる点を質問をしやすい
コメント機能でマークした箇所についてメンションをつけて質問や確認ができる
Slackのメリット
気軽に話しかけられる
レスポンスが早い
スタンプで気持ちを表現できる
(freeeの文化的側面もありますが)チャットツールならではのポイントがあり、聞こえない方とのやりとりでも必須と言えます
この2つのツールの共通する最大のメリットは「何度でも読み返せる」ことです。
聞こえに関わらず確認事項を記録しておくことは大切ですよね。
加えて、聞こえない人にとっては日本語は第二言語なので、聞こえる人と行った日本語のやりとりや文章を何度も確認ができる状態にあることは安心できる大切な要素なのだそうです。
さまざまな定型文を揃えて、みんなが気持ちいい文章に
ぶらっくさんが担当している業務のなかで工夫したことを一つ紹介します。
ResearchOps業務の一つに「ユーザーさんへ調査に関わるメールを送付する」というのがあります。
この業務は尊敬語・謙譲語・丁寧語を多用するのはもちろん、誤りや失礼がないこと、対応スピードも求められる緊張感のある重要な作業です。
一方でぶらっくさんが使われる手話は体を小さくする等で丁寧な会話となります(例えば、胸を張ってありがとうだと偉く、上から目線となります)。しかし尊敬語、謙譲語、丁寧語などが明確に表現としてはあるわけではないので、気をつけて日本語の文章を作成したとしても、ビジネス会話を日常で使っているからこそわかる「この場面ではこういう敬語を使わない」という違和感に気づいて修正するのは難しく、何度修正してもこの文章で本当にいいのかと不安があったり、時間がかかることになってしまいます。
そこで、業務を一緒に行っている聞こえるResearchOpsメンバーが色々なパターンの定型文を作成することにしました。
ぶらっくさんは各ユーザーさんのやりとりを踏まえて適切な定型文を選び、案件に合わせて変更すべき箇所を追記して送付する、という流れです。
作業効率を考えたら定型文はシンプルで数も少なくしても良いのかもしれません。しかしそれによって、ユーザーさんに配慮や真摯さ、熱意を欠いた文章と取られることにはしたくないという思いから、文章の推敲やパターンの工夫をしています。これは業務を一緒に行っている聞こえるResearchOpsメンバーが培ってきたスキルによってできたことでした。
業務がうまくいかないときは「アンコンシャスバイアスになってないか?」と一度立ち止まって考えてみる。
そうしたことで、聞こえに関わらず伝えたい内容を適切に送付できる「ResearchOpsもユーザーさんも気持ちいい文章」ができ、ぶらっくさんのメール対応スピードも早くなり、Ops業務全体の効率が向上しました。
おわりに
今回はエクスペリエンスデザインチームでチャレンジしたことについて書きました。
デザイン本部全体でチャレンジしたこと、この一年で私自身が思ったこと・やったことは別のnoteで書きました。こちらもよかったら読んでください!
最後まで読んでいただきありがとうございました!
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