脚本 「かごめ」 第十四場

■第十四場
  前場から5日後の深夜。風が強い。美羽は珍しく熟睡。
  良玄登場。玄関のカギを静かに開けて、足音をたてないように入室。上半身肌着だけになると、美羽の布団にゆっくりすべりこむ。
美羽「誰? 」
  寝ぼける美羽。良玄は布団の中で美羽を抱きしめる
美羽「良? 」
  良玄は、布団から半身を起こし、美羽のパジャマをぬがせにかかる。
美羽「なんなの? 」
良玄「黙って。俺に任せて。」
  黙って、という言葉に、美羽のトラウマが爆発する。
美羽「ああああ! いやっ、うう! 」
  美羽は大きくもがき、布団から脱出する。
  無表情で美羽を見る良玄。その背後から空想上の裕次が現れる。
美羽「いやーっ!!! ‥ううう! 」
  両手で頭を抱え、震える美羽。
良玄・裕次(空想) 「美羽、どうしたんだ? さあ、いつものように裸になって。」
美羽「いやだ!! いやだ‥。 」
  空想上の玲奈が美羽の背後から現れる。
玲奈(空想)「どうしたの? 脱ぎなさいよ。大好きなお父さんなんでしょ? 気持ちよくしてあげればいいの。 」
美羽「いやだ! いやだ! 」
玲奈(空想)「この駄々っ子が‥。 」
美羽「‥いやだ、いやだ! お父さんいやだ! きらい! どうして! 優しいお父さんが、どうして夜になると! 」
裕次(空想) 「はやく、こっちにおいで。」
  裕次(空想)は、ゆっくりと美羽に近づいていく。
  美羽はその場にうずくまる
美羽「いやだ。‥来るな、出てって。 」
  いつのまにか美羽は短剣を握っている。立ち上がって、ためらいがちに短剣を裕次につきつける。うろたえる裕次。
裕次(空想)「美羽、どうしたんだ? まさかお父さんを刺すつもりか? ‥ありえないよな? 美羽はおとうさんのこと、好きだよな? 」
  玲奈が空想から現実の人に変わる。
玲奈「美羽、いいのよ。あいつを刺し殺してやれ! あいつはお父さんの悪い部分が固まったバケモノ。美羽の心を滅茶苦茶にした罪人! ‥本当の優しいお父さんは別のところにいるから。‥あいつは刺し殺せ! 刺し殺せ!! 」
裕次(空想)「うるさい!! ‥これは親子の問題だ。地人の家庭のことに口を出すな! この家から出ていけ! ‥お前こそなんだ? このビッチ! ヤリマン! どうせ援交でもしてるんだろ! 臭いから消えろ! 」
  裕次(空想)は、重々しく歩いて、玲奈に近づく。
  美羽は、裕次(空想)の目の前に立ちはだかる。
美羽「‥玲奈の事、‥悪く言うなっ!! 」
裕次(空想)「美羽? 」
美羽「あんたに、‥あんたに、わたしと玲奈の何がわかるの!! 」
  美羽は、短剣で裕次を突き刺す。
  ‥しばらく放心状態だった美羽が、正気に戻る。傍にはきちんと服を着た良玄と美羽がいる。裕次もいない。
玲奈「落ち着いた? 美羽? 」
美羽「玲奈? 良? なんでいんの? 」
玲奈・良玄「ずっといる。」
  美羽は、明るく微笑む。ちょっと甘え口調で言う。
美羽「‥そっかー。‥あ、さっき危なかったんだよ。襲われるところだった、お父さんに。」
玲奈「え? お父さん? 」
美羽「わたし、お父さん刺しちゃった。‥玲奈のことはわたしが守らないといけないからね。恩返し恩返し! 」
玲奈「何何? わかんないよ。 」
  美羽は、上機嫌になり、布団を畳む。
玲奈「何してるの? 」
美羽「起きんだよ! 今爽快な気分! 寝んのなんてもったいない! 」
  玲奈と良玄は、明るく笑う。
玲奈「わかった、わかった。でも今は夜だから、寝ないとね。」
美羽「やーよ。せっかく布団から出る決心ついたんだんだもん。‥みんなでゲームでもしようよ! 良、プレステどこだっけ? 」
良玄「俺はわかんないよ。玲奈、わかる? 」
玲奈「んー、プレステの2なら、どこかで見た記憶あるけど‥。」

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