脚本 「かごめ」 第九場

■第九場
  前場から15分後、例の喫茶店に良玄、トキオ、洋一郎が集まる。テーブルには人数分のアイスコーヒー。全員美羽のことを考えている。重苦しい雰囲気。
良玄「セックス、優しさ、男性、父親、自己嫌悪、正当化。‥いろんなものが絡み合ってる。父親への気持ちをどう整理していいか、自分でもわからなくなってるんだ。」
トキオ「言ってることが、あっち行ったりこっち行ったりで。どれが本心かわからない。とても整理できないよ。」
洋一郎「そもそも、整理できてたら、鬱になんかならないって。」
  洋一郎は小さくせせら笑う。
トキオ「前から思ってたけど、おまえうざいんだよ!! 皮肉言うだけならいらねえから帰れ! 」
洋一郎「おい、俺に八つ当たりしてどーすんだよ!? お前こそなんだ? 良の後ろついて歩いてるだけで、何も出来ないくせに、偉そうな顔だけしやがって。 」
  トキオは立ち上がって、空いている椅子を蹴飛ばす。
※トキオ「立て! 洋一! 」
※良玄「やめろ! ‥俺もこれからどうすればいいか迷ってるんだ。‥みんな力になってくれよ。」
  トキオは椅子を直しながら、洋一郎に言う。
トキオ「今のは俺が悪かったよ。‥みんな同じだ。わかんなくなってんだ。」
洋一郎「俺も、‥ごめんな? 」
  トキオはそれに頷く。洋一郎は一瞬白けた表情。それから良玄の方を向く。
洋一郎「なあ、美羽の心を追い詰めるようなことはやめないか? 俺真面目に思ってるんだけど、‥美羽の心を癒すことを考えようや! やっぱ快楽なんだよ! まあ、セックスは好きみたいだし? たとえばこの中から誰か一人彼女をなぐさめて‥。」
  良玄は洋一郎の顔をじっと見る。トキオは再び怒りの表情。洋一郎は二人に圧されて、徐々に声が小さくなる。
良玄「これからどうするか、迷ってたけど、いいアイデアもらった。ちょっと光見えてきたよ。ありがとな、洋一。」
洋一郎「え? マジで? ‥マジで夜這いとかすんの? 」
  良玄は少し苦笑して、何も言わない。


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