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【読書記録】流浪の月

おすすめ度 ★★★☆☆

前回読んだ「汝、星の如く」がよかったので、もう一つ読んでみた。
「流浪の月」も本屋大賞を受賞しているので、楽しみにしてたけど、前回ほどには楽しめなかった。

ちょっと若い人向けなのかも。登場人物も若いし、テーマも「汝ー」より複雑さがなくわかりやすい。読みやすいし、突き刺さるような心理描写は素晴らしい。

ただ、私が前作で気に入った「まるでノンフィクションのようなリアリティ」が薄かったように思う。
時期的には「流浪の月」が先だから、次回作の「汝ー」の方が成熟しているのかもしれない。取材量もすごかったと思う。
男女の単純な恋愛ではないのは、どちらの作品にも共通しているけど、「汝ー」のほうがもっと複雑で、男女間だけではない家族や仕事などいろんな人間関係をリアルに描いていた。その切実なまでのリアリティに感動した。
(あれ「汝ー」の感想ばっかり言ってんな)


どちらの作品にも「正義の押しつけ」や「正義の暴走」の怖さが描かれていて、おそらく作者の凪良さんが一番伝えたいところなのだと思う。
SNSで、正義を振りかざした誹謗中傷が引き起こした事件はいくらでもあるし、戦争だって「自分こそ正義」がぶつかり合っている。
自分はどっち側だろう?と考えさせられる。

私だって、noteに本の感想を書いているだけだけど、どの作品は好きだ嫌いだ、などと書いている。極力価値観を押し付けることのないように「好みの問題」と書くようにしているが、それでも読む人によっては不快に感じたり、「正義の押し付け」だと思われることだってあるだろう。

難しい。
色んな意見があって、どの方向から誰を傷つけてしまうかなんて、わからない。誰も傷つけないように、と思うと、無難なことしか言えないか、何も言えなくなるかだ。
大切なのは、「自分の正義が誰かにとっては不正義かもしれない」と頭の片隅においておく姿勢なのだと思う。うん。
そして、他の人の主張を受け入れつつも、変に押しつぶされないことも。
いや、難しいな。全然できてないな。

しなやかに。したたかに。

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