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[ 最後の日はなにしたい ]:シロクマ文芸部(最後の日)

↑↑コチラのお題に参加してみました。
今年最後の”みゆう”たちのお話です。
のんびり、まったりお楽しみください〜😊♪


画像:Bing Image Creator


 最後の日に食べたいものは?

「えーと、」

 私はとっさに頭に浮かんだものを言う。

「ファミチキ!」

「おまえなぁ〜」

 と、佐藤先輩があきれた声で「もっとマシなもん選べよ」

「えへへへへ」

 しょうがないです、頭に浮かんだのは、あのサクッとジューシーなファミチキ先輩だったもので……。

「ハハハ、みゆうらしいね」

 と、キラキラした笑顔の先輩。
 私が最後の日に見たいのはその笑顔です先輩!

 ここはいつもの放課後の部室。
 今年最後の部活動の日。

 笑顔も普通の顔もキラキラ輝く先輩と、佐藤先輩と私の3人で、今日が人生最後の日だったらどうする〜、という話をしています。

「じゃぁ、次はオレからの質問」

 うわっ、先輩からの質問。
 ハイ、なんでも大丈夫です。オールオッケーです。着いて行きます。なんなら私が連れて行きます。

「最後の日に、聴いていたい曲は?」

 先輩の歌う曲ならなんでもいいです。一緒にカラオケに行きますか? 私の歌声で先輩の鼓膜を振動させるのは百害なので、ずっと先輩が美声を奏でていてください。大丈夫です少々の音程ズレも気にせずに、どんなハモリ我慢だって私は受け入れます。

「そうだなぁ、”唱”かなぁ、皆んなで踊りながら最後を迎えたい」

 って言いながら、徐に立ち上がってエアで踊りだす佐藤先輩。
 それを見ながら、私の頭の中にはAdoさんの”唱”が鳴り響く。
 ワンパート過ぎたところで、私と先輩が同時に立ち上がり踊り出す。
 3人で頭の上で手拍子を取りながら、付近を一周してる最中に、先輩が言う。

「コレ、いい〜!」

 うぇ〜ぃ、と、先輩と佐藤先輩がハイタッチ。
 私も両手を伸ばして、2人とハイタッチ。
 うん、コレは楽しく最後を迎えられるね。

 テンション上げたまま、それぞれ自分たちの席に着く。

「ハイ、みゆうは、なに聴きたい?」

 と、先輩の素敵すぎるお顔がこちらに向けられる。
 眩し過ぎて、直視できません!

「えーと、そうですね……」

 前と同じで、咄嗟に頭に浮かんだ曲を言う。

「ルージュの伝言」

「お、ユーミンか!」

「いいよねぇ、魔女宅だね」

「ハイ、もう小ちゃい頃からずっと聴いてました!」

「でも、アレってさ」

 と、佐藤先輩が続ける「こないだネットで書いてる人がいたけど、旦那の浮気を姑に言いつけにいく奥さまの話なんだよね」

 えっ、そうなの?

「なんだそれ、魔女宅、関係なくね」

 ホントだね。まさか、トンボとの未来がそうなのかな?
 なんて思っていたら、佐藤先輩が言う。

「そんな奥さん、俺は嫌だな〜」

 すると、すぐに先輩が答える。

「浮気したオマエが悪い」

「いや、浮気しねぇし」

「それはどうだろ、なぁ、みゆう」

 って、そんな爽やかな笑顔で、そのようなことを私に振られましても、どう答えたら良いのでしょう〜。
 ずっと見ていたい先輩のその笑顔を眺めながら、頭に浮かんだことを声に出してみる。

「浮気をしてこその佐藤先輩です」

「オイ」

 と、声を上げる佐藤先輩。
 笑い転げる先輩。

 私はまたいけないことを言ってしまったのかな?
 まぁ、いいや。

「ったく、ハイ次、質問したオマエはなにを聴きたいんだ」

 と、佐藤先輩が先輩に話を振った。
 うん、それとっても気になる。

「オレかぁ……、あんまり曲、聴かないからなぁ」

 と、言ってから、強いて言えば……、ともったいぶりながら先輩が言った曲は。

「白日とか?」

「King Gnuか、オマエらしい」

 と、佐藤先輩。

「自分で言っといて、なんか、コレ、照れくさいね」

 と、先輩。

 大丈夫です先輩。私はなんだって受け入れます。
 絶対聞きたいです、先輩の美声で私の鼓膜を震わしてください。
 私なんて、暴言ばかりで人を傷つけまくって、曖昧なサインばかり出して間違い探しばかりして、いっそ雪に埋もれて真っ白になって新たに先輩の前に転生したいくらいですが、どうぞこれからもよろしくお願いします。

「じゃぁ、次、みゆう質問をどうぞ」

 あ、私の番。
 質問、なにも考えてなかった。
 えーどうしようー、なににしようー、最後の日、最後の日、うーん。

「おまえ、なにも考えてなかったろ」

 ハイ、佐藤先輩、その通りです。
 頭の中が白日です。
 えーと、えーと、

 とりあえず、頭に浮かんだことを、声に出してみる。

「最後の日に、誰と一緒にいたいですか……………、え?」

 自分で質問して、自分で聞き返して、相変わらず何してんだ私は。
 聞き流してくれ〜。

「誰といたいか、かぁ」

 先輩はそう言って考える。

「ふむぅ、」

 佐藤先輩も腕組みをしてる。

 いや〜、我ながら、微妙な質問をしちゃったなぁ〜、だいたい私はなんて答えるのぉ、っていうか答えられるの?
 だって、絶対、そんなの、決まりきってることじゃないかぁー。

 言っちゃうの私、ついに言っちゃうのか、え、ま、今日は今年最後の部活だし。
 勢いで、言っちゃう? 言っちゃおうか、言っちゃえ言っちゃえ〜

「3人……」

 えっ、なんですか先輩?

「ここにいる3人でいれたらいいなぁ〜、なんて」

 先輩! なんとステキなお言葉!

「あー、それ、楽しいかもな」

 佐藤先輩も同意。
 私は何度も何度も頷く。

「最後の日も、こんな馬鹿話したり歌ったり踊れたら、いいよね」

 うんうん、そうですそうです、ステキです。
 私は、先輩さえいれば、それで一片の悔いなしです。

「よーし、じゃぁ、今から踊るぞ」

 と、また佐藤先輩は立ち上がり、エア唱を踊り出そうとするので、

「あ、佐藤先輩、ちょっと待って」

 せっかくなので、スマホで検索して、唱を流す。

 スマホの音に合わせて、歌いながら3人で踊り出す!

”ナーナーナナナー♪”

 なにコレ、楽しい〜!!!

 今年、最後の部活。
 先輩と踊って、楽しく過ぎていく。

 うーん、今日も私は幸せだ〜。


おしまい。

#シロクマ文芸部

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