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『帝範』の「終章」を読む

帝範の「終章」を読んでみましょう。

終章の内容を簡潔に表すとすれば、
これまでの十二章には、国家の平和と繁栄のために帝王が知っておくべき重要な教えが書かれています。正しい道を実行することの難しさを理解し、過去の天子の模範に従い、自らの欲望を抑え、徳を高めることで、治世の安定と自身の安寧を保つことが大切です
となります。

無料部分では、書き下し文をご紹介します。


書き下し文

此の十二条は、帝王の大綱なり。安危興廃、皆茲に在り。

古人、言う有り、知ることの難きに非ず、唯だ行なうこと易からず、之を行ないて勉む可く、唯だ終ること実に難し、と。是を以て、暴乱の君は独り悪路に明らかなるのみに非ず、聖哲の主は豈独り善途を見るのみならんや。良に大道は遠くして遵い難く、邪径は近くして践み易きに由る。

小人は皆、俯して其の易きに従い、力めて其の難きを行なうこと能わず。故に禍敗、之に及ぶ。君子は労して其の難きに処り、其の易きに逸居する能わず。故に福慶、之に流く。是れ知る、禍福は門無く、唯だ人の召く所、と。非を既往に悔いんと欲するよりは、唯だ過ちを将来に慎しめ。

哲王を択びて以て師と為し、吾を以て前鑑と為す無かれ。夫れ法を上に取らば、僅かに中為るを得。法を中に取らば、故り其れ下為り。上徳に非ざる自りは、効う可からず。

吾、位に在りて已来、制する所多し。奇麗服翫、錦繡珠玉、前に絶たず。此れ慾を防ぐに非ざるなり。雕楹刻桷、高台深池、毎に其の役を興す。此れ志を倹にするに非ざるなり。犬馬鷹鶻、遠しとして必ず致さざる無し。此れ心を節するに非ざるなり。数々行幸有り、以て人の労を亟りにす。此れ己れを屈するに非ざるなり。斯の数事は、吾の深過なり。茲を以て是と為して後に法ること勿れ。

但だ、我、蒼生を済育すること、其の益多し。区宇を平定すること、其の功大なり。益多く損少なければ、民以て怨みと為さず。功大にして過微なれば、徳未だ之を以て虧けず。然れども猶お美を尽すの蹤、焉に於て愧づること多く、善を尽すの道、此を顧て慙を懐く。

況んや汝は繊毫の功無く、直に基に縁りて慶を履むをや。若し善を祟びて以て徳を広むれば、則ち業泰くして身安らかに、若し情を肆にして以て非を縦にすれば、則ち業傾きて身喪ぶ。且つ成ること遅くして敗るること速きは、国の基なり。失なうこと易くして得ること難きは、天の位なり。惜まざる可けんや、慎しまざる可けんや。


有料部分では、書き下し文から意訳した意訳文と元となる漢文を掲載しています。

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